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第569話「ミラルダの町へ」

 ロソン村に降り立った俺たちは適度に周辺を見て回ったが、特に気になるようなものは何も発見できなかった。

 上空からでも村の惨状は見えていたが、修復できるような建造物は一つも見当たらない。

 ここで生活していた人たちには、気の毒すぎて見せられない光景だなと思う。


「わしに討伐の任が下ったとき、斯様かような真似をせいと言われたら自信がないの」

「嫌なら全部投げて帰って来たらいい。王都の家だけはずっと残しておく」

「ミナトよ……」


 サキさんは少し困ったように笑いを向けた。


「残念だけど、それは駄目だよ。サキには出世して貰うし、実力を認めている騎士も多い。私も毎年サキの子を生む計画だからね」


 わりと目がマジなレレ……じゃない、今は冒険者のロロか。

 彼女の家、モルバッハ家の男子は、すでに全員亡くなっている。

 先代までは武勇でその名をとどろかせた騎士の家系であったが、今ではレレ一人が無駄に広い貴族の屋敷で当主をしている状態だ。

 そのうえレレの婚約者たちも相次ぐ不幸に見舞われて、今では誰も寄り付かない。

 エミリアの実家と肩を並べるくらいの家柄だから、本来は婿養子に困る事態にはならないはずなのだが──。

 そんな時に豪傑ごうけつでデタラメな男が現れたものだから、何だかよくわかんないうちに今のような話になってしまった。

 まあ、気も合うようだし、二人が幸せなら、このまま上手くいって欲しいのだが。


「もういいかしら? いい加減、帰りたいわ」


 夜通し魔法を使い続けていたティナの機嫌がいよいよ悪くなってきた。


「帰ろう。ずっとここにいても仕方がない。最低でも一泊は休んでからマシン村に戻らないと時間の辻褄つじつまが合わなくなるし、どうするかな?」

「このまま家に帰るのかい?」

「冷え切った部屋でもいいなら家だな。ミラルダの宿で温泉に入って寝るとか、マラデクの宿でうまい物を食べて寝るとか。グレンたちが居る白の入り江で適当に雑魚寝するのも悪くない」


『ミラルダ!』


 いくつか具体的に候補を上げたところ、満場一致でミラルダの宿に決まった。

 冷えた体に温泉は強し。といったところか。


「ミラルダに行くのは良いけど、一度は家に帰って馬の世話をしたいわね」

「それもそうだ」


 そんなわけで、結局一度は王都の家に帰ることになった。





 王都の家に限ったことではないが、一晩暖房を消していたら、部屋の隅々までが極寒の世界になる。


「はぁ……」


 誰となくため息をついたが、基本的に王都の人間はすべからくこんな感じである。

 暖房を消して外出したあと、テーブルの上に置き忘れた飲み物が氷になっていたら誰だって嫌になるだろう? そんな心境だ。

 俺たちは馬小屋の清掃や餌やりを済ませた後、邪魔になる武器や鎧のたぐいは家に置いて、いわゆるトラベルセットを袋に詰め込んだ。


「ミナトはその鎧のままかい?」

「見た目さえ無視すれば、魔法の効果で全然寒くないしな」


 外套でも被っておけば、手足の防具しか露出しない。

 誰も半裸の鎧で出歩いているなんて夢にも思わないだろう。

 もしもすっ転んで誰かに見られたら、それはそれでちょっと興奮するし……。

 そういえば、マシン村にいた女戦士は凄かったな。

 ボディビルダー顔負けの肉体美を晒して、誰にも舐められないだけの実力もあった。

 まあ、俺には何一つ備わっていない魅力だ。

 でもああいう逞しい人がいるって思うと、不思議と勇気が湧いて来るよな。

 主に露出度に関して。


「もういいかい? 早くミラルダに行こうよ。私の魔力を合わせたら全員移動できるかな?」

「ああ、うん。行こう」


 俺たちはミラルダの町にテレポートした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ミナトちゃんって、装備の性能がよければ、恥ずかしさすら棄てる事ができる効率厨だよね。 ビキニアーマー(擬き)をメイン装備に、魔法が付与された大剣に精霊魔法。弓もそれなりの腕前で、遠近網羅し…
[一言] > もしもすっ転んで誰かに見られたら、それはそれでちょっと興奮するし……。 ミナトさん?!
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