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第56話「つるつる三姉妹」

 俺とティナとユナの三人は、洗い場の入り口に置いてある洗濯かごに服を入れて風呂に入る準備をしていた。


「着替えを置いておける専用のかごと棚が欲しいわね」

「そうだな。明日の朝買いに行こう……」

「ミナトさん、早く下着も脱いでお風呂に入りませんか?」

「いやそれが……その……」


 下着に手を掛ける瞬間まで忘れていたが、俺はコロコロで下の毛までつるつるにしてしまっていたことを思い出し、恥ずかしくてパンツを脱げないでいた。

 ティナとユナの前では散々泣いたり変態的言動を繰り返してきた俺でも、さすがにつるつるは抵抗がある……のだが、悩んだ挙句、俺は二人に若気の至りをゲロった。


「実はセクシー下着を穿いたときに毛がはみ出したので調子に乗ってコロコロしたら、何というか勝利のヴィクトリーサインを描いたあと、天晴な扇状に変化して、もうどうしようもなくなって全部消えてもらった……」


 頭の上にはてなマークを出しているティナとユナの目の前で、俺はめそめそしながらパンツをずりずりと降ろした。

 俺は自白している間に変なスイッチが入ってしまい、二人に見てもらいたくて仕方が無くなっていた。俺はいつもこんな感じでやらかしてしまうのだ。



「大丈夫ですよ! 私もほら、全部消えて貰いました! 実は下まで金髪だったのが物凄くコンプレックスだったんです。こっちは染めたりできないので!」


 ユナは俺の方を向いて裸で胸を張ったが、別にいつもと変わらないように見えた。

 銭湯の明かりは薄暗かったのと、本人が言ってるように金髪のせいで余計に目立たなかったのだろう。


「そうだったのか。しかし俺は全部つるつるにしたあと、変にテンションが上がってわざわざ美容効果で丹念にコロコロしてしまったんだ……!」

「そうですよ! やってしまいますよ! コロコロの魔力は恐ろしいです!!」

「安心してミナト、産毛まで消えるのが面白すぎて私もやったわ」


 そうだったのか。俺一人だけ股がつるつるだったら恥ずかしかったが、みんなも同じなら俺も安心だ。それぞれの動機は違うようだが、素直に話して良かった!



 俺たちは銭湯と同じようなパターンで体を洗って、暇になった俺はティナとユナの体を観察しながら二人が洗い終えるのを待っていた。

 我が家の風呂場は明るい。銭湯の薄暗いランプなんかと比べたらまるで昼間のようだ。

 コロコロの凄まじい威力も相まって段々目のやり場に困ってきた俺は、二人から目を離して自分の股間の辺りを見つめていた。


 今までは下の毛のおかげで、錯覚でもチンチンが下にあるような気持ちを持っていられたが、つるつるだとチンチン不在の事実を認めるしかない。もはや錯覚すら起きない。


 ……俺は一体どこへ向かっているのだろう?



 それはそうと、流しっ放しの湯のおかげで、三人で体を洗ったあとでも湯船に浸かれば浴槽の湯が溢れてしまう状態だ。なんとも贅沢な風呂である。


「これから毎日おうちのお風呂だと思うと嬉しいです」

「ユナはあんまり銭湯好きじゃない感じだったよな。俺も嫌だったけど」


 俺たちは三人並んでもまだまだ余裕のある浴槽で目いっぱい足を延ばして寛いだ。






 湯沸かし器の精霊石を取り外して風呂から上がった俺たちは、ここで初めて脱衣所がない不便さに気付く。


「困ったわね。とりあえず洗濯かごに入れておいた着替えも、なんだか湿っているわ」

「お風呂の湿気にやられちゃいましたね」

「この洗い場は無駄に広いから、出入り口のところを仕切って脱衣所を作ろう」


 湿った着替は肌に張り付いて気持ちが悪いので、俺たち三人は頭にタオルを巻いたまま素っ裸で部屋まで戻ることになった。

 広間にはサキさんが居るのだが、あいつはどうせ女の体には興味がないのでみんな気にしていない。むしろ見たくもない裸でうろついてすみませんという気分になる。



「風呂が完成して浮かれていたが、いくつか問題点が出てきたな」

「そうですね。できればバスタオルも欲しいです」


 俺たちは自分の部屋に戻って、頭にタオルを巻いただけの状態で話し合っている。三面鏡に映る真っ裸を指さしながらユナに言われて、バスタオルもいるなと思った。

 銭湯では脱衣所も薄暗くてあまり気にならなかったが、昼間のように明るい我が家ではちょっと恥ずかしいものがある。


「浴槽が大きすぎて湿気も凄かったわね。この後で洗濯すると思ったら憂鬱だわ」

「明日からは風を使って換気しよう。洗濯しているときに天井から水滴が落ちてきたら気になって仕方がない」


 俺たちは話し合った結果、脱衣所を分ける仕切りは施工せずに防水加工したカーテンか衝立ついたてで仕切ることにした。

 換気は解放の駒でと思ったが、駒では精霊石から直接風と空気が生成されるので換気扇のように部屋の空気を吸い出したりはできない。

 何か良いアイデアが浮かぶまで、俺が魔法で直接空気を入れ替えるしかなさそうだ。






 俺たちは髪を乾かした後で日課の洗濯をしに風呂場へ向かったが、風の魔法で換気をしても頭の上に水滴が落ちてきて最悪だった。

 普段細かいことを気にしないサキさんでもイライラしてしまうほどだ。


 洗濯が終わったあとは浴槽をブラシで洗って、風呂の残り湯はすぐに捨てた。今日の歯磨きは調理場で済ませて、俺たちは寝ることにする。



「んー……」

「ミナトさん、どうしたんですか?」


 ベッドに入った俺は、不自然なほどつるつるになった脚が妙に気持ち良かったので、自分の脚をすり合わせながら唸っていた。基本的に脚フェチなのでこれはヤバい。


「脚がつるつるで気持ちいいから困ってる。ガサ付いた感じが全然しない」

「そう……良かったわねミナト……」


 ティナは半分寝ぼけているようで、俺に何か色々言いながらそのまま寝てしまった。俺もあまり気にせずに、さり気なくティナと手を繋いで寝ることにした。






 翌朝、俺とユナはいつものように寝癖を直して風呂場へ向かった。昨日までは洗い場と呼んでいた場所だ。今日改めて見てもでかい浴槽だと思う。


 俺が朝の準備を終えて広間に向かうとき、調理場の出入り口に張られた紙にはさっそく誰かが食いたい物を書いていた。


「超特大ステーキとか書いたバカ誰だよ」

「サキさんですね。じゃあ私も書いておきます」


 ユナは丸文字でチーズケーキと書いた。それは飯なのか?

 俺も負けじとギョーザ定食と書いた。


 俺は広間でセルフ放置プレイになっているエミリアの相手をするが、ユナは部屋に戻って布団を干しに行ったようだ。今日の夕方辺りから天気が安定しなくなるので、朝のうちに干すのだろう。



「……で、今日もその服なのか?」


 いつまで経っても着替えないエミリアに、さすがの俺も問い詰めざるを得なくなった。


「せめて寝るときは着替えるとかできんのか? まさか下着までそのままじゃないだろうな?」

「下着は二日に一度は替えるようにしましたよ?」

「二日じゃだめなの。毎日替えるの。あと寝るときはパ、ジャ、マ」

「はい……」


 俺はイライラして、テーブルを指でトントントンと叩きながら言った。


「なんで着替えないんだ?」

「学院の生徒からエミリア先生かわいーと言われたのが嬉しくてついですね……」


 エミリア先生は嬉しそうに頬を赤らめて自慢した。


「エミリアよ、それは女の子が言うかわいいだから真に受けるな。普段はエロい女教師の服で講義をやれよ。男子生徒からチヤホヤされること請け合いだぞ?」

「そうなんですか? 帰ったら着替えてみます」

「ちゃんと洗濯もしろよ」






 全員がテーブルの席に付いたところで俺たちは朝食を取った。今日はベーコンピザトーストに手製のドレッシングをかけたサラダが並んでいる。


「今日は夕方から雨なんだろう?」

「ですね。夜からかも知れませんが確実に降ります」



 俺は飯を食い終わると、一息つく間もなく今日の予定を全員に告げた。


「聞いての通り雨だ。いつ止むかわからんそうなので、今日は買い出しをするぞ」

「買い出しの前にベッドのシーツを洗って干したいわ。サキさんのシーツも洗うわよ」

「乾かす時間は長い方がいいな。洗いながら予定を話そう。エミリアは風呂場に行ってその服を脱いで帰れ。どうせ自室にテレポートするんだから関係ないだろう?」

「そうします」


 エミリアが風呂場へ向かったので、俺たちはシーツの回収とサキさんの布団を干してから風呂場へ行く。エミリアはバカなので下着まで脱いで素っ裸で帰ったようだ。

 俺は魔が差してエミリアの服を嗅いでみたが、臭かったのでたらいに投げ捨てた。ティナの服を嗅いだ時は良い匂いがしたのだが、エミリアの服は使えんな。



「予定の続きだが、まず初めに全員で浴衣の生地を買いに行こう。そのあとは浴槽の蓋と薪の補充、脱衣所を仕切るカーテンもしくは衝立、脱いだ服と着替えを入れておくバスケットのかごも必要だな。これから雨が多くなるから広間に物干し台も欲しい」

「バスタオルも忘れずに買いましょう。食材と日用品も買い足したいわ」

「私はナカミチさんにお茶を多めに持って行きたいですね」

「今日はやることが多いな。とりあえず生地を買った後に考えよう」


 俺たちはシーツ二枚とエミリアの服と下着を洗って干すと、俺とサキさんは白髪天狗で、ティナとユナはハヤウマテイオウに乗って街へ出掛けた。






「この店の生地が良い。安物から高級品まで大体揃う」


 サキさんに案内された生地屋は工業区の近くにあった。工房から近い方が便利だろうからある意味当然か。

 そこそこ大きな店舗の中は、棚の列によって様々な生地に分けられている。


「浴衣に使うのはこの列だのう。この幅で巻き取ってある物なら良い」


 サキさんは適当な生地を手に取って見せた。俺たちはそれを参考に各自で生地を選ぶことにする。


「無地しかないと思っていたんだが、少しめくると模様が入ってる生地とか、グラデーションになってるのとか色々あるな。値段は数倍になるが……」


 俺は水色と青色のグラデーションに白い水玉模様が入った生地を選んだ。迷ったときは空とか水とかのイメージで選ぶと無難だろう。

 ユナは薄い桃色と濃い桃色の生地を、ティナは白と薄紫の生地を選んでいる。結局全員グラデーションなり模様なりが入っている生地ばかりを選ぶので随分高く付いた。


 せっかくサキさんが作ってくれるんだから、ここは贅沢してみよう。俺も初めて着る浴衣はかわいい方が良いしなあ。


 サキさんも自分のを選んでいる。前回作ったやつは色々妥協したみたいだから、今回は最初から浴衣で作り直すのだろう。


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