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第536話「謎の白い箱回収作業」

 一晩明けて翌朝……。

 今朝は全員が寝足りない表情のまま、特に何の話題もなく静かな朝食を終えた。


「今朝はエミリアもレレも来なかったな」


 眠いのもあるだろうが、どうにも微妙な空気がぬぐえない。


「今日やることだけど……サキさん、悪いが隣の大部屋に移ってくれんか?」

「む?」

「本当にわからないの? 声とか音とか壁越しに筒抜けなのよ」


 意味が通じていないサキさんにティナがとどめを刺した。


「ぐぬぅ……」


 ほう、ぐうのくらいは出るのか。

 サキさんは恥ずかしそうに階段を駆け上がると、もの凄い早さで部屋の移動を始めた。

 時折こちらの様子をうかがっては、いそいそと作業を続けている。


「コンテナとお皿の件はどうしますか?」

「場所が場所だけに、コンテナごと持ち帰るのは難しいだろうな」

「あのコンテナは色々使い道がありそうなんですけどね。コンテナの中身を持ち出した後でも難しいでしょうか?」


 重量だけなら見た目の大きさよりも軽いと思うが、あのサイズでは厳しいだろう。

 大型トラックの箱よりは小さく感じるけど、それでも多頭引きの荷馬車二台分に迫る大きさはあった。


「何にせよ中身の皿がよくわからん。最悪、皿はカルカスのおっさんに委ねるとしても、コンテナはあの場所に放置か、切り刻んで素材に使うくらいしかできんかもな」

「あのサイズと頑丈さなら、移動式のシェルターに使えると思ったんですけどね……」


 せめてコンテナの場所がもう少し良ければな。

 クレバスの底のような場所にあるものだから、人力で引き上げるのも現実的ではないし。


「あんな場所なら他に持ち帰る人もいないし、コンテナの方は保留ね」


 まあ今はそれしかないわな。

 サキさんの部屋移動が終わり次第、コンテナの中身を持ち出すとしようか……。





 数十分後──。

 俺たちは再びコイス村の奥深く、コンテナが眠るクレバスの底まで移動した。

 ここは陽の光も届かない場所なので、魔法の明かりが必須である。


「どんな段取りでいくんかの?」

「3つあるコンテナの中身を全部、いったん家の裏にまとめて移動させたい。テレポーターとテレポートの魔法で家に送るから、ユナとサキさんは家の裏で箱を並べてくれ」

「じゃあテレポーターで家に戻りますね」

「俺は崖底のコンテナをやるから、ティナは崖の途中で氷に埋まっているコンテナの中身をテレポートで運んでくれ」

「わかったわ」


 俺は手短に指示を出してから、早速作業に取り掛かった。

 本当なら直接カルカス卿の屋敷に送るのが正解だと思うのだが、ここは冒険者のさがか、箱の中身が気になって仕方ない。

 果たして全部謎の皿ばかりなのか、はたまた凄いお宝が潜んでいるのか……。

 誰も二度手間だと突っ込まないところを見るに、みんなも箱の中身が気になるのだろう。

 さて、手始めにコンテナの1つに手を付けるかな。


「いでよ、光の精霊ウィル・オー・ウィスプ!」


 ティナが灯していった魔法の明かりから、俺は光の精霊を二体呼び出す。

 光の精霊は結構壊れやすいので、余程の事情がない限りは二体同時使役が基本だ。

 だいぶ慣れてきたせいもあって、なかなかさまになってきたな。





 コンテナの中は照明もなく、完全な暗闇になっている。

 昨日は魔法で強化した剣で無理やり入り口を作ったせいもあって、コンテナの内部は外気と同じ気温まで下がっていた。

 幸い、凍結した箱が動かないなんてことは無かったが、取っ手らしい部分がないので持ち運びするのはそれなりにしんどい。

 箱の大きさは、そうだなあ……ピザ屋のバイクに取り付けてある荷台の箱、大体あのくらいの大きさだろう。

 重量的には10キロあるかないか。

 まあ俺が無理なく持ち上げられる重さだから、実際にはもう少し軽いかもな。


「…………」


 崖底にある2つのコンテナは、やはり上の方から落ちてきたんだろうな。

 今はコンテナ内に設置したテレポーターまで箱を移動させるだけだから最小限の労力で済んでいるが、コンテナの中は激しく荷崩れを起こしているので結構苦戦している。

 ただ、豪快に荷崩れを起こすくらいにはスカスカなので、箱の量はそれほど多くはない。

 俺が作業しているコンテナの中は、ざっと見た限り50個もなさそうだ。

 コンテナ全体の容量から考えると、十分の一も埋まってないように見える。


「上の方は終わったわよ」


 俺が半分くらいの箱を運び終えたところで、ティナが戻ってきた。

 箱を持ち上げなくても直接テレポートの魔法で運び出せる方は作業が早い。


「こっちはもう少しで終わるから、もう一つのコンテナを頼む」


 そんなこんなで二時間ほど掛かったのだが、何事もなく箱の持ち出しには成功した。





 現在家の裏には、結構な数の箱が積みあがっている。

 結局、持ち帰った箱のサイズにはいくつかの種類があり、横に長い箱や少し大きめの箱なども出てきた。


「大きな箱は崖の途中で埋まっていたコンテナから出てきたのよ」

「俺が担当したコンテナは同じサイズの箱しかなかったな。あと、コンテナに入り口を開けた時の切れ端も回収してきた」

「これやっぱり金属じゃないですよね? プラスチックとも違いますし……」


 明るい場所で改めて観察したコンテナの材質は、極めて硬い陶磁器のような質感がある。

 そして見た目よりも随分と軽い。

 試しに軽く火で炙ってみても、溶けたり燃えたりすることもない。

 むしろ熱伝導率が極端に低いのか、裏まで熱が伝わってこないレベルだ。


「防具にしたら良さそうですね」

「曲げたりできるのかなこれ?」

細切こまぎれにして盾に貼り付けるだけでも違いますよ」


 その辺のことはユナに一任したいと思う。


「ああそうだ。昨日こじ開けた箱だけは家の中に入れておこう。もう蓋が閉まらんから外に出しっ放しは良くない」

「それなら適当にいくつかの箱を持って入りましょう」

「ピザ屋の荷台サイズの箱は全部お皿のような気がするので、大きい箱だけ持って入りませんか?」


 俺たちは大きい箱と長方形の箱の二種類を選んでから、一階の広間に運んだ。


「一番の問題は、この箱の開け方がサッパリわからんてことだよな」


 360度全ての角度から継ぎ目や開閉スイッチがないかと探してみるも、四人がかりで惨敗。


「本当に魔力を感じないのよ。一体どんな技術を使っているのかしら?」


 謎だな。

 とにかく箱の中見を確かめない事には始まらない。

 ここは強引に開けるのか、それとも開け方を調べるのか、どうにも迷うところだ。


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