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第535話「深夜の物音」

 ティナが風呂場に向かって少しすると、寝間着ねまき姿のレレが現れた。

 レレもエミリアと同様、着たきり雀で導師のローブばかりだが、流石に寝る時くらいは着替えるようだ。


「随分と失礼な言い草じゃないか」


 レレは普段見せないセクシーな寝間着ねまきを煽って抗議する。

 風呂上がりなのか、生乾きの髪も手伝って妙な色っぽさを感じてしまうな……。


「ところで夕食は済ませてしまったのかい?」

「ああ、今日は適当な感じになってるから。ここにあるのしかないけど食べる?」

「食べる食べる!」


 俺が取り皿に盛ったチャーハンを渡していると、サキさんたちが風呂から戻ってきた。


「私たちも入りますか……」

「だな」


 俺たちはサキさんと入れ替わるようにして風呂場まで移動した。





 全員が風呂を済ませる頃には、すっかりいい時間になってしまった。

 ナカミチとサーラはティナがテレポートで送ったから、広間はまたいつもの面子に戻っている。


「いい加減私たちはもう寝るから。二人ともほどほどにね」

「うーむぅーっ……ういっく」


 俺たちはサキさんとレレを広間に残して寝室に戻ることにした。


「今日はもうぐだぐだになっているから締めたけど、明日は朝から色々話すことが多いな。下の酔っ払いども、二日酔いにならなければいいが……」


 俺は寝る前の日課でコロコロをしながら、明日の予定を頭の中で組んだ。


「サキさんの方はダメかもしれませんねー」


 三人並んでベッドに横たわっていると、レレに介抱されながら自分の部屋に戻っていくサキさんの物音が聞こえてきた。

 わりと色んな場所に体をぶつけているような音が響いてくる。


「ダメそうねあれは……」

「ダメですよね」


 ダメダメ言われて可哀想だが、大物を釣り上げた祝い酒だ。今日ぐらいは大目に見てやって欲しい。


「…………」

「……………………」

「………………………………」


 ……ん?

 ウトウトと眠りに落ちる微妙な所で、何やら隣から怪しげな声が聞こえてくる。

 サキさんとレレが何か話でもしているのか?

 眠くて何を言っているのか全く頭に入って来なかったが、カタンコトンと隣の部屋から響いてくる妙な音も重なって、徐々に眠気が覚めてきた。


「あッ……おふん……」


 バサッと何かが転がる音。


「お……お……」


 いい加減うるさいなあと思った俺は、せめてもの抵抗で寝がえりをうつ。


「……あー。まじですかー」


 目を半開きにしたユナが、感情の無い声を出して頭から毛布を被る。


「……困ったわねえ」


 文句を言いに行きたいが「あのサキさんが」なので、ここはそっとしておきたい気分と板挟みになったティナは本気で困ったように呟く。


「あ゛! あ゛ッ! ……あ゛ーーッ!」


『!?』


「おうふっ! おうふっ! おふんっ!」


 突然サキさんの大きな声が響くものだから、俺とティナとユナは三人並んでびくんとなった。


「ちょっとまって。サキさんが『受け』なの?」

「え? 怖すぎて全然受けないんだけど」

「くっ! ぶふふっ! ……もう無理です私、今日は下で寝ます」


 ユナの年では刺激が強かったに違いない。ユナは自分の枕で必死に口元を押さえながら部屋を出て行ってしまった。

 明日の議題が増えたぞ。今から気分が重い。


「…………」


 ユナが部屋のドアを開け閉めする音が隣にも聞こえてしまったのか、ぴたりと訪れる静寂。

 よし、今のうちに寝るぞ。


「……………………」


 無理。眠れない!

 なんだろ。隣からそれっぽい声が聞こえてくるたびに恐怖に似た何かを感じる。

 こっちの気分まで盛り上がるどころか、逆に萎えてしまった。

 これはあれだな。本番になると使えなくなるタイプだったに違いない……。


「眠れない? こっちにきていいわよ」

「うん」


 一人でそわそわしているのがバレたのか、俺は遠慮なくティナに抱き着いたまま眠りに落ちた。


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[一言] サキさんが食べられた(意味深)
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