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第520話「次の目的地」

 広間のテーブルに夕食が並ぶ頃、何も言わずにこっそり銭湯に出掛けたサキさんも家に帰って来た。

 今日はエミリアだけでなく、レレも居るので普段は1脚余る椅子も塞がっている。


「相変わらず、ここの食事はありえないほど美味だ。この調理法に辿り着ける料理人は、残念ながら王都にはいないだろうね」


 レレは少し困ったように笑う。

 仮にサキさんを自分の館に連れ帰ったとしても、毎日このレベルの食事は用意できないという意味でだ。


「そうなんですよ。食材そのものが美味しい料理ならありますけど、一工夫入ると敵わないです」


 などと言いつつ、エミリアは皿の一枚を自分の手元に寄せた。


「いやはや、毎日こんな食べ方をしていたら、エミリアでなくても肥え太りそうだ」

「全くです。学院にいる時は死なない程度に食べる生活でしたが……」


 エミリアの表情は、この世の春を謳歌していた。


「とりあえずダレンシア王国には行けるようになったけど、次は何をしようか?」

「先日カルカス卿から聞いた話なんだけど、今ならコイス村の湖で大量の小魚が獲れるらしいよ。今月いっぱいなら氷が割れる心配もないし、遊びに来てはどうかと誘われたんだけど。まあ、冗談半分のお誘いだろうけどね」


 おや?


 ペペルモンド領コイス村と言えば、王都の北に広がる山中に作られた小さな村だ。

 去年俺たちがミノタウロスを討伐した場所だな。

 現領主のカルカス・ペペルモンドは、エミリアの旦那、クレイルの父親に当たる。

 つまりはエミリアの義父ぎふだ。

 普段はコイス村の先にある大きな館で公務をしているはずだが、大方、嫁ぎ先でも問題ばかり起こすエミリアのせいで王都に顔を出しているときにレレと話をしたのだろう。


「ミナト、正解。息子が惚れた嫁だから仕方がないと、普段陽気なカルカス卿もさめざめと泣いていたよ。ねえ、エミリア?」

「ええ、反省してます。あ、そこのお肉取ってください」


 エミリア、嫁の貰い手があって本当に良かったな。


「して、その魚はどうやって獲るんかの?」


 コイス村の話にサキさんが乗ってきた。


「いや、ちょっとわからないけど、エミリアは知ってる?」

「確か湖に張った氷に小さな穴を開けて、何らかの罠を仕掛けると聞いていますが……」

「ワカサギ釣りみたいなもんかの?」


 ワカサギかどうかは知らないが、遊び半分で未知の食材が手に入るなら面白いな。


「折角だ、ナカミチも好きそうだから誘ってみよう」

「それなら明日、私が誘ってきます」

「釣り具がいるやも知れん。わしも一緒に行くわい」


 流れるように次の目的地が決まった。

 ナカミチは前回会ったときに、あまり元気が無さそうだったからな。

 たまには工房以外の空気でも吸って気分転換になれば良いが。

 白の入り江はまだ安全か保証できないけど、コイス村なら大丈夫だろう。


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