第517話「レレの盾④」
レレとティナがテレポートで消えたあと、俺はサキさんから話の続きを聞き出すことにした。
「サキさんは何時からレレの屋敷に移るんだ?」
「いや、移らんわい」
相変わらずおかしな事を言う。俺の顔色を察してか、サキさんは少し言葉を濁らせてから──。
「レレオの家はの、先祖代々武勲で勇名を馳せた名家であるのは知っておろう?」
「それらしいことは前に聞いたな。いつだったかは忘れたけど」
「手柄の分だけ屋敷もデカいんであるが、モルバッハ家の生き残りはレレオ一人での。あの屋敷に二人では落ち着かんのだわい」
「生き残りってなんだ?」
「執事や家政婦はいないんですか?」
俺の質問にユナが被せてきた。
「それだけの屋敷なら、維持する人の手も必要じゃないですか」
「おらん。おらんわい。もう誰もおらん。外見の景観維持のために雇った庭師が来るくらいよ」
サキさんはモルバッハ家の事情も知ってそうだな。
いずれ色々調べることになるかも知れんから、このさい聞いておくか。
「それだけデカい屋敷でレレ一人になるっていうのは余程だぞ。家の者は全部死んだのか?」
「いや、実際に死んだのは騎士団や将軍職の男だけらしいがの。この十年ほどで全員やられたらしいわい」
それは運がないな……。
「二人おる姉は既に余所へ嫁いでおるから、いつまでも学院で遊んでおったレレオに最後のお鉢が回ってきたと言うところだわい」
「大体わかった。でも母親くらいは残ってないのか?」
「残っとらん。自分は元々この家の人間じゃないと言い放って、金だけ持って出て行ったらしい……」
「うわー……」
「気の毒だな。レレの普段の様子からは想像もできん環境じゃないか」
しかし話を聞く限り、呪い的な何かが作用しているのか?
例えば魔物討伐のさい、悪魔や不死の魔物に呪われたとか?
でも、エミリアと学院長先生がお手上げなんだよな……。
「死の直前におかしな行動はなかったのかな?」
「あまり詳しく聞いとらんが、遠征討伐中にテントの中で死んでおったとか、小隊そのものが全滅したとか、だんだん様子がおかしくなってきて、最後はチェストの中で死んでおったとか」
「戦闘中に亡くなったのは二番目の方だけですか……」
これ、たぶん死因のごく一部だよな?
それこそ全員分を調べれば、何か法則性のようなものが見えて来るのかも……。
俺はチラっとテオ=キラの方を見たが、奴からの反応は無かった。
この件に関しては協力しない。そういう解釈でいいのだろうか?
そんなことを考えていると、問題を起こしてどうにかしているはずのエミリアが現れた。