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第504話「新生・テオ=キラの銅像の巻」

 俺たちが宿の部屋で待っていると、サキさんはすぐにテオ=キラの銅像を持って戻ってきた。

 頭陀袋ずだぶくろに入れたままなのが気になる所だが……。


「ホラーチックじゃないよな?」

「まあ多少はの……」


 サキさんは不吉な返答をしながら、銅像を取り出す。


(やっと袋から出しおったか。勿体つけおってからに)


 おお、本当に別の銅像に移れるんだな。

 それにしても、随分とだらんとした銅像……というより、人形だな。

 テオ=キラの新しい銅像は、各部にアクションフィギュアのような関節があった。


「良いポーズが決まらんでの。最初から関節ありきで作ったわい」

「動くの? また随分、締まりのない関節ね」

「最初は良かったがの、何度か動かしたら関節が緩くなったんだわい」


 手に取って見ると、糸の切れた操り人形のように、銅像はぐてんとした。

 ちなみに服は着てなくて、素っ裸にスクール水着を着せたようなラインが彫ってある。

 後で好きな服を作って着せろということらしい。


「うわ……。コレ、両目が明後日の方向に向いてないですか?」

「爪楊枝で目玉を動かして、目線を変えられるようにしてあるのだが、ちと意欲的過ぎたかの?」


 目玉を180度回転させて、白目を剥けるギミックを搭載したら、目玉の動きが緩くなったそうだ。

 意欲的過ぎて失敗した感じか。

 そんなわけでテオ=キラの銅像は自立することもできず、もはやホラー映画の死体にしか見えない。


(どうじゃ? 可愛かろう? ケケケケッ!!)


 自分の状況がわかっていないのか、テオ=キラは不気味な笑い声を上げる。

 両目が明後日の方向を向いているのも手伝って、完全にアウトの形相だ。


「ちょっとサキさん、テオ=キラはこの惨状を知らんようだぞ?」

「まだ関節が渋かった時に、鏡で見せたきりだからの」


 俺がサキさんに耳打ちすると、サキさんも耳打ちで返してきた。

 これはマズいな。

 可愛らしい自分の姿を今一度見たいとか言い始めたら、万事休すだ。


「サキさん、銅像の……ここに穴があるのは何でですか?」


 ユナが銅像の穴に気付いて、サキさんに聞いてきた。

 穴の位置は股間と言うか、股の中央と言うか、アソコと言うか……。


「専用のスタンドに取り付ける穴だわい。スタンドの棒を股の穴に挿し込むのだが……ちと穴が小さかったの」


 サキさんはテオ=キラの股の穴に、ぐりぐりとスタンドの支柱をねじ込もうとする。


(やめんかワレ! 仮にも女神の御股じゃぞ!?)


 テオ=キラの抗議はもっともだ。見ているだけで痛ましい。


「先っぽしか入らなんだが、じきに奥まで挿さるようになるわい」


 サキさんはテオ=キラの股にぐりぐりと棒をねじ込んで、無理やりスタンドに立てる。


「串刺しの刑で処刑された罪人みたいになったわ……」


 スタンドの支柱だけで立ってはいるが、四肢を含めて首もだらんとしており、ホラー感が増した。


「もう少し何とかならんのか?」

「いずれ錆びて来れば、いい塩梅になると思うがのー」

「松脂みたいな粘性のある液で渋みを与えたらどうですか?」


 あ。いいかも知れない。

 松脂なら乾いてもネバネバしたと思う。


「それで行こう。まだ店開いてるよな? 今すぐに行動だ」


 俺はブーブー言うテオ=キラの銅像を頭陀袋ずだぶくろに突っ込んで、緊急事態を宣言した。


「ティナは松脂を手に入れて来てくれ」

「わかったわ。少量でいいわね?」

「うん。ユナは道具とかの準備をしておいてくれ」

「わしは?」

「サキさんはお疲れ様。ここの宿は浴場もあるから、とりあえず風呂に入ってきて」

「任せるが良い」


 モノ作りに夢中しすぎて、風呂にも入ってなさそうなサキさんには、ここでご退場願った。





 家に道具を取りに行ったユナはすぐに戻って来たが、買出しに行ったティナは暫く戻ってこないだろう。

 オルステインではもう夕刻になるのか、テレポーターからエミリアが現れた。


「広間にある巨大な羽根は何なんですか!?」


 開口一番、エミリアは巨大な羽根の持ち主を聞いてきた。

 俺も今日の出来事はエミリアにも伝えておきたかったので丁度いい。

 ついでに西ダレンシアの列島についても伝えておく。


「……大きな鳥ならミラルダの海域にも現れますが、それでもせいぜい5メートルが限度です。翼を広げて30メートルを超えるような怪鳥は聞いたことがありません」

「流石にあんなのが陸地にいたら、他国の化け物でも情報として伝わってくるだろう。エミリアが知らないってことは……」

「やっぱり、南の方に別の大陸があるってことですかね?」

「現物がある以上、怪鳥の大きさは認めざるを得ないですが、新大陸の存在までは……」


 エミリアは何かを言いたそうだったが、俺は黙っておいた。

 怪鳥を追った先で新大陸発見となれば、これこそ世紀の大発見になるのだが。

 国に無断で出入国を繰り返しているエミリアが、ダレンシア王国を南に進んだ海の調査をしても発表の場がない。

 後ろめたい事が前提にあると、こういう時に不便だよな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 股ぐらの穴は笑うw いくら何でもあんまりダァ じきに馴染んで動けるようになるのかな? デブリアさんは旦那放置し過ぎでない? まあ、浮気とかされても気にしなさそうだけど…
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