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第476話「精霊使い対精霊使い①」

 ウィル・オー・ウィスプが道を照らすよりも早く、不気味な影は何かを振り下ろした。

 脊髄せきずい反射的に後退りした俺の鼻先を、こん棒のような武器が通り過ぎる。

 奇襲に失敗したと思ったのか、向こうは慌てて攻撃を仕掛けた様子だった。

 あと一歩踏み込んで攻撃していれば、確実に俺の頭を叩き割れていただろうに──。

 だが、こちらの形勢不利に変わりはない。

 返す勢いで振り上げた武器も何とか避けたものの、後ろは行き止まり。

 これ以上は後がない。

 振り上げた武器が再び振り下ろされるよりも早く、俺は敵の懐に飛び込んだ。


「土の精霊!」


 俺は思い切って、影の主に体当たりをかます。


「俺の足元を突き上げろっ!」

「ゴオォッ?!」


 体当たりの瞬間、俺のかかとに衝撃が走る。

 俺の筋力では大した事のない体当たりでも、地面から押し上げる力が加わればどうだ?

 不気味な影は情けない声を上げて、後ろにひっくり返った。

 すかさず俺は、鞘から剣を抜き払う。


「まだ動くか!?」


 しこたま頭を打ち付けながらも、ゴロンと転げて距離を取り、膝立ちで構えるゴブリン。

 いや、ホブゴブリンだ。

 通常のゴブリンよりもサイズが大きく、力の強い個体はホブゴブリンと呼ばれる。

 コレットのウィル・オー・ウィスプが回り込んできたので、ようやく正体がわかった。


「ミナト! 奥にも何かいるわ!」


 コレットの声がすると同時に、ウィル・オー・ウィスプが闇に飲まれて消滅する。


「向こうにも精霊使いがいるの!?」


 精霊の対消滅か!?

 魔法を確認した瞬間、俺の標的は奥の敵に切り替わる。

 が、こっちはこっちで手を抜いてもいられない。


「出てこい! 火の精霊サラマンダー!」


 俺が命じると、足元に転がっている種火から、トカゲの姿をした小さな炎がホブゴブリンに襲い掛かる。


「ゴォブヌゥン!!」


 しかし小さなサラマンダーは、ホブゴブリンが振り下ろすこん棒の一撃によって叩き潰された!


「えぇぇ……」


 確かにちょっと小さすぎるサラマンダーだと思ったが……。

 ここに来るまで精霊魔法を使いすぎたか?

 笑い始めるホブゴブリン。

 まるで勝ちを確信したかのように、ホブゴブリンは舌なめずりの表情で挑発してくる。


「──せいっ!!」


 まるで油断した顔面に目掛け、俺はミスリル銀の大剣を思いっ切り振り下ろした。

 硬い感触。

 例えようのない音と共に、ミスリル銀の刃はホブゴブリンの眉間まで切り裂いていた。

 ホブゴブリンはにやけた表情のまま、顔面を引きらせて動かない。

 骨が硬くて厚みもあるから真っ二つとはいかないが、ここまでやれば十分。

 もはや自分の意思で体を動かすことさえ出来ないだろう。

 俺はホブゴブリンを蹴り倒して、その奥にいるもう一体の姿を視界に入れた。


「…………」


 かなり暗いが、全身に動物の毛や鳥の羽で作った飾りを身に付けたゴブリンを確認する。

 ゴブリンに着飾る習性なんてあるのか?

 俺の疑問はさて置いて、この異常なシルエットは、こいつがただのゴブリンではない事を証明している。

 というか、対消滅したウィル・オー・ウィスプの代わりを早く出して欲しい。

 催促さいそくの意味も込めて、俺は後ろを振り返った。





 一瞬、何が起こっているのか理解できなかった。

 頭が混乱して、思考が止まりそうになる。


「おい! コレット!?」


 地面に倒れているコレットの姿を見て、俺は顔から血の気が引いて行くのを感じた。


「ゴォンブビョンブーイェボ! ゴェオブーエブ、ブーイダハグゥ!!」


 コレットに手を伸ばそうとした俺を制するように、奥にいるゴブリンが何かを叫ぶ。

 言葉の意味なんてわからないが、とにかく嫌な予感しかしない。


「うわあぁっ!!」


 俺の足元に落ちている種火から、火の精霊サラマンダーが飛び出した!


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