第455話「図書館再び①」
翌朝、ユナは金貨600枚を持ってエルレトラに向かった。
俺とティナは朝の通学時間を少しずらしてから魔術学院へと向かう。
昨日は雪が融けそうな天気だったが、今日はあいにくの曇り空……。
また雪がチラつきそうな空を見て、もういい加減にしてくれと思った。
「また積もるのかな?」
「嫌になるわね」
俺とティナの二人は、学院の奥にある図書館を目指している。
俺は引き続き半透明の鹿を調べる役目だ。
ティナは昨晩エミリアから受けたアドバイスを元に、調べ物をするらしい。
「………………」
図書館の入り口には昨日と同じ女生徒がいる。
今日は何も言われなかったが、やはり気になるのか、ずっとこちらの動きを見ている。
「毎回これだと気が滅入るわ……」
「そういえば、ミナトは図書館の地下に降りたことはある?」
地下なんてあったっけ?
「この図書館は地下二階まであるのよ。生徒は地下に入れないけど、魔術師や導師と一緒なら地下一階まで行けるわ」
地下一階までの制限があるってことは、地下二階にはヤバい感じの書物が眠っているのだろうか?
「よほどの理由がないと入れないみたいね。入り口も隠されているみたいだし、エミリアも詳しくは知らないって言っていたわ」
「あるかどうかも怪しいな。学校の七不思議みたいだ」
普通に考えれば、この図書館に地下二階は存在しないだろう。
本気で封印扱いの物を保管するなら、王城の地下にでも隠した方が安全だ。
「………………」
地下に降りる場所を知らない俺は、ティナの後ろをついて歩く。
昨日は散々図書館の中を練り歩いたつもりでいたが、地下に降りる階段は見当たらなかったと思う。
……なんてことを考えていたら、ティナは二階に向かう階段を上りだした。
吹き抜けになっている二階には、大きなテーブルを取り囲むように椅子の置かれた読書スペースがいくつもある。
今も魔術師や生徒たちが、調べものか研究か、いくつもの本を積み上げているところだ。
「一度二階に上がってから、渡り廊下を歩いて別館の階段を下りるのよ」
「ややこしい作りだな……」
二階の突き当りまで歩くと、トンネル状の廊下がある。
図書館には窓がないので、渡り廊下の外がどうなっているのかは不明だが……。
廊下の長さはせいぜい3メートルくらい。
それを渡りきると、今度は下りの螺旋階段があった。
「意外と近代的な建物だと思っていたのに、魔法の校舎っぽい雰囲気になってきたな」
結構長い螺旋階段を下りた先には、図書館の二階と同じような読書スペースがある。
こちらはテーブルの数も少なくて、こじんまりとしているが。
それでも調べ物をしている魔術師は結構いた。
「一番奥にある扉の先よ」
と言っても、木片のドアストッパーを付けられた扉は解放されっ放しだが。
しかし地下二階に来るまで結構歩かされたな。
エミリアがテレポートで往来する理由もわかる気がする。
俺がテレポートできるなら、たぶんエミリアと同じようにするだろう……。
もっとも、自分で持ち出した本はちゃんと返すのが前提だが。
「ここで別れよう。気になる本が見つかったら、ここの読書スペースを借りればいい」
俺とティナは、それぞれ目的の本を探して二手に分かれた。