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第420話「ターンレイク」

「あそこ、軍の野営地じゃないですか?」


 ユナが指さした先には、街道の側面に沿って細長い建物が並んでいる。

 建物といっても、柱と屋根しかない吹き抜けの建造物が殆どで、そこがかつては街道を切り開くさいの資材置き場だったことを物語っている。

 建造物の中にはレンガ造りの小さな小屋も見えるが、荷車が一台入るかどうかも怪しい小屋では、兵士たちの寝起きも出来ないだろう。

 そんな訳で、駐留ちゅうりゅうしている兵士たちは、屋根しかない建造物の中にテントを張って滞在している様子だ。


「よしよし、酒の補充をしていくかの」

「昨日のパンがあれば、もう少し買い足しておきたいな」


 サキさんは気持ちがはやるあまり、ティナとユナを置いて馬の脚を早めた。





 この野営地はすぐ後ろが山なので、大した拡張も出来ずに細く長く展開している。

 ま、そんなことはどうでも良いと、さっそくサキさんは、手近な兵士を捕まえて酒の在りかを聞く。


「酒や食い物は何処かの?」

「もう少し先にあるレンガ小屋の前だ。食い物はあるが酒は切らしているぞ。残念だが次に届くのは明日の夕方だろう」

「むうぅっ!!」


 その後、急にサキさんの足取りが重くなった──。


 まあ、酒のことはどうでも良いが、兵士に教えてもらった通り、レンガ小屋の手前まで進むと小さな売店があった。

 店の番は商人ではなく、普通の兵士が行っているようだが……。


「この辺りだと、冒険者はどこでキャンプをしているんですか?」


 目的のパンを買ったついでに、俺は売店の兵士と話をする。


「このまま南に向かうと、街道から東に延びる細い道があるから、その先にある湖で休む冒険者が多いかな」


 やはり水場に近い所がキャンプに最適なのだろうか。

 そんな会話をしているうちに、ティナとユナが追い付いてきたので、俺たちは改めて出発することにした。





 売店の兵士から聞いた話では、街道の左側に小道があるそうだが……。


「この立て札であろう?」

「だな」


 東に延びていると聞いたはずだが、実際には南南東に伸びている細い道がある。

 ご丁寧に立て札まで作ってあるので、間違いはないはずだ。


「ターンレイクって言うんですね」


 少し文字がかすれているが、確かにそう書いてある。


「さっそく行ってみましょう」


 俺たちは街道を離れて、ターンレイクに続く道に入った。

 しかし、元々の街道も道幅が広くないので、この立て札が無かったら、間違えてこっちに進んでしまう人もいるだろうな。



 一路、ターンレイクを目指して進む俺たちだが、厄介な草木に邪魔をされることも無く、あっさりとターンレイクまで辿り着くことが出来た。

 やはり人通りのある道は、それだけで進みやすいものだな。


「む?」

「あれ?」

「ここって……」

「コロッペたちと出会った場所ね」


 日が傾いてくる時間、辺りはだいぶ暗くなってきたが、所々に見覚えのある風景が点在している。

 そうか、今来た道が正規の道で、前回俺たちが通った道は、今はもう使われていない古い道だったんだな。



 確か最初に訪れたときは、クリスマスの前日だなんて話をしていたっけ……。

 大みそかまでには家に帰って、適当に緩い感じで新年を迎える予定だったのに、正月どころか新学期にも間に合わないレベルでこんな所に居る。

 やっと見覚えのある場所まで戻って来れはしたが、何だか無性に悲しくなってくるな。


「そういえば、林の奥に作ったお風呂、崩した覚えがないわね……」


 みな思う所あるのか、俺たち以外に誰もいない湖の前でしんみりとなっていたが、ティナの一言で全員の目に輝きが戻った。


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― 新着の感想 ―
[一言] やはりみんな日本人なだけあってお風呂好きだね
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