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第414話「エルレトラの調査兵」

 ここは十日ほど前に壊滅させた魔物の集落。

 あの時は随分と盛大に燃やし尽くしたせいもあって、いまだ集落には灰のニオイが立ちこめている。

 奥に見える人間の数は11名くらい。

 立派な鎧を着た兵士が2名、普段よく見かける軽鎧の兵士が6名、魔術師のローブを纏った初老の男が1名と、魔術師の助手と思われる若い男女が2名……。


 とりあえず、相手が魔物でないなら一安心だ。





「おまえたちは冒険者か!? ここは先日まで、悪魔がきょを構えていた集落である! 今は我々が調査をしているから、不要であれば立ち去られよ!!」


 俺たちが兵隊の方に近付いていくと、立派な鎧を着た兵士の一人が立ち塞がる。

 あわよくば物資を譲って貰えないかと、都合の良いことを考えていたのだが、開口一番ここから立ち去るように言われたのでは取り付く島もない。


「わしらは奥地から戻って来た所での、そろそろ食い物が無くなるんだわい。ここから一番近い軍の野営地は、どう行けば良いかの?」


 立ち塞がる兵士に臆することもなく、馬を降りて普通に話し出すサキさん。

 サキさんの体格と装備なら、まずナメられることは無い。


「この集落を北に回ると細い獣道がある。それを西へ向かうのが近かろう!」


 立派な鎧の兵士はそれだけ言うと、くるりときびすを返した。

 とにかく早々に立ち去ってくれれば、それで良いのだと言わんばかり。

 愛想は最悪だが、近道の情報が得られたのは有り難く思う。



「やっぱり、あの首を持ち帰ったせいですよね……」

「コロッペに悪魔の首を押し付けたから、エルレトラの受け付けで換金するときに、色々と聞かれたんだろうな」

「この国の役人は根掘り葉掘り聞きおるからの。まともに付きうたら日が暮れるわい」


 魔物の集落としては、ここはまだ中規模だと思うが、悪魔が居るなら話は別。

 やはり魔法を使う相手が牙をむくと、普通の人間では太刀打ちできない脅威となる。

 きっと日が暮れるまで解放して貰えなかったコロッペの顔が目に浮かぶようだ。


 でも、悪魔の首とキマイラの首で、相当な額の報奨金が入ったと思うからそれで許せ。

 マラデクの町で待ちぼうけを食らったシャリィに怒られる分も含めてな。


 しかし、ここを調査する目的は、コロッペが魔法で入り口を塞いだ洞窟の存在かな?

 下手にほじくり返して蛇が出なければいいが……。





 俺たちは兵士に教えてもらった通り、魔物の集落を迂回して北に向かった。


「獣道ってこれですよね? 随分細い道ですけど」


 確かに細いとは聞いたけど、馬がギリギリ通れるくらいの道幅しかない。

 道の左右は枯草に覆われているし、所々に倒木の枝が飛び出している。

 注意して進まないと、馬が脚を引っ掛けそうだ。


「暗くなる前に抜けたいものだわい……」


 まったくだな。


「…………」


 結論から言うと、日が落ちるまでに獣道を抜けることは出来なかった。

 本気を出して頑張ったんだが、そもそも魔物の集落を出た時点で昼を過ぎていたので、これはもう仕方がない。


「さて、どうしようか……」

「困ったわね。地面が枯草で覆われているから、ここで火を扱うのは危険よ」

「草刈りでもするかの?」

「今から草刈りをするのは現実的ではないな」

「偽りの指輪が使えないと穴も掘れませんし、焚き木も出来ないでは夜を越せません。もう少し粘ってみませんか?」


 そうだな……流石にこんな所では休めない。

 本当なら魔物の集落の隅っこで一晩を過ごしてから、翌日一気にここを抜けるのが理想的な流れだった。

 だが、ここで腐っていても始まらない。


「よし、夜をてっする覚悟で進むぞ。最悪でも焚き木が出来そうな場所までは頑張ろう!」


 魔道具で暗闇を見渡せるユナを先頭にして、俺たちは暗い獣道を西へと進んだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 困難が続くなぁ 如何に魔法だよりだったかよくわかる
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