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第359話「夜明けとすれ違い」

 夜明け前、朝食の支度を始めたティナを少しだけ手伝った俺は、出来る範囲でキャンプの片付けを始める。

 寝るのが遅かったユナとサキさんには、ギリギリまで寝ておいて貰わないと……。

 おそらく今晩の見張りも、昨晩と同じ順番になるはずだ。

 最初から無理が続いてしまうと、後半にしわ寄せが来てしまう。

 最近はすっかりリーダーの威厳を失ったとは言え、パーティーの体調管理に気を配るのも俺の役目だ。



 朝食の匂いが立ち昇る頃になると、ユナとサキさんも起きてきた。


「何だか息苦しくて、眠れませんでした」

「うむ……」


 二人とも熟睡できなかったようで、体が重そうだ。

 俺の方は何ともなかったが、山林の空気に緊張でもしているのだろうか?


「テントは俺が畳んでおくから、二人は足湯で目を覚ましてくれ」


 出来れば夜明けとともに出発したい。

 地面に打ち込んでいるペグだけはサキさんに抜いてもらったが、テントの片付けは俺が一人でおこなった。



 今日の朝食は、昨晩の残りを使った雑炊仕立ての鍋汁だ。

 野宿同然のキャンプでは、毎食ごとに洗い物をするのが大変なので、今回はなるべく使い回せるメニューにしている。

 今の季節は夏場のように痛む心配がないので、その点だけは安心だ。

 匂いに釣られて化け物が現れたら、それこそ返り討ちにしてやればいいしな。


 ……む。食べ物でモンスターをおびき寄せるという方法は使えるかも。


「今日の行動予定だが、夜明けと同時に出発してから、最優先でアーマード・ドラゴンが目撃された二つ目のポイント近くまで移動したいと思う」

「次の野営地までは行かないんですか?」

「今の俺たちは補給の必要がないからな。次の野営地には、先にアーマード・ドラゴンを討伐してから向かいたいと思う」

「それで良い。とにかく『あれ』だけは、はよう終わらせて欲しいわい」


 足湯の中で、足の指の間をゴシゴシと洗いながら、サキさんが答える。


 巨大フナムシのような姿をしたアーマード・ドラゴンは、サキさんの天敵だ。

 サキさんとしては、一刻も早く懸案事項けんあんじこうを排除したいのだろう。





 何とか夜明けまでに出発した俺たちは、まだ薄暗い街道を北上する。

 安全のために魔法の光で道を照らしているが、街道の左右に生い茂る木々の向こう側には暗闇が続いている。

 夜中のうちは鳴り潜んでいた風が、夜明けとともに息を吹き返した。

 今日も風の強い一日になりそうだな……。


「相変わらず狭い街道ね」

「この道も、安全に行き来できるようになれば整備されるんだろうな」

「拡張工事である」

「…………」


 大体いつも荷馬車で移動するので、こんなに歩き詰めになるのは初めてだ。

 馬の背には大量の荷物。

 荷物だけでも相当な体積があるから、全員で馬に跨るスペースはない。


 せめて、もう少し街道の幅が広ければ、小さな荷馬車を用意できたのにな。



 辺りが明るくなった頃、前方から来た公国軍の輸送隊とすれ違った。

 俺たちは馬と一緒に街道の端へ避けたが、すれ違いには殆ど余裕がない状態だ。

 やはりどんなに小さな荷馬車でも、すれ違いは出来なさそうだな。


「軍の輸送隊同士がすれ違う時は、どうしてるんだろうな?」

「それぞれの野営地が担当する区間を決めて、その区間を往復しているらしいですよ」

「ピストン輸送である」


 同じ輸送隊が決められた区間を往復しているのなら、すれ違い事故は起こらないか。

 これだけ道幅が無いと、鉢合わせた際の方向転換もままならんだろう。

 ちゃんと考えてあるんだな。


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