表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/572

第352話「いざ集発~公都再び」

 装備の再確認を終えた俺たちは、続けてキャンプ道具の点検も行った。

 今回は今までの冒険とは少し状況が違う。

 荷馬車は使えないし、山林の中を何日も探索するのだから、相応の備えが必要だ。


「通常のキャンプ道具に加えて、寒さ対策の道具もあるから、荷物が大きいな」

「メシはどうなっとるかの?」

「食材は10日分用意してあるわ」

「一週間くらい探索したら、テレポートして家に帰る計算ですね」


 予備の3日分は、不測の事態が起こったときの保険だ。

 特に何事も無ければ、今年中は山林の中で過ごすことになるかもな。



「それじゃあ、出発しようか……」

「うむ」

「待って。荷物は馬に載せて行くわよ」

「あ……」


 ティナの一言で、すっかり忘れていた馬の存在を思い出した。

 いや、忘れていたのとは少し違うか……。


 今回は、毎日テレポートして家に戻ることができない。

 そうなると、馬をどこかへ預けておく必要があったのに、思いっきり忘れていた。


 しかしティナは、馬に荷物を載せて行くと言う。


「荷馬車は無理だけど、一応安全のために、二回に分けてテレポートさせるわね」

「馬もテレポートできるのか? それは有り難いが……」


 テレポート魔人のエミリアですら、自分一人が精一杯なのに……。

 魔道具の力でブーストされてはいるが、どう考えてもエミリアを超えているよなあ。

 もしもこのまま魔力が伸び続けたら、古代の魔術師に匹敵するんじゃないか?



「よし、俺とユナがハヤウマテイオウの手綱を持って先発する。サキさんは白髪天狗の方を頼む」

「よかろう」

「準備は出来た? それなら行くわよ」


 ティナが古代竜の角の杖を振ると同時に、俺の視界が切り替わった。





 俺たちはテレポートの魔法で、公都エルレトラに到着した。

 いきなり街の中心に現れる訳にもいかないので、街から少し離れた場所に出現して、そのまま北上するルートを選んだ。


「どちらにせよ、王都に続く街道まで歩かないと始まらんだろうな」

「サキさん、もう一度地図を見せて貰えませんか?」

「書き写しておいたゆえ、ミナトとユナで持つが良い」


 サキさんは二枚ある地図を、俺とユナに渡す。

 俺が受け取った方の地図には、印の部分に説明文が追加されていた。

 これは分かりやすい。サキさんグッジョブだ。



 山林地帯の地図を見ると、王都と公都を繋ぐ街道沿いには、軍の野営地が点在している。

 エルレトラ公国の最優先事項は、王都と公都を繋ぐ街道の整備と、その安全を確保することなので、街道に沿って展開するのは当然だろう。


 軍の野営地では、討伐したモンスターの換金や、消耗品などの買い物ができるようだ。

 いちいち街まで戻っていたら、それだけで数日間のロスだからな。

 賞金稼ぎの冒険者に、投げっ放しではない所は好感が持てる。


 それ以外の印は、過去に強力なモンスターが出現した場所のようだ。

 山林の東西数カ所にある池や湖のほとりでは、バツ印がいくつも重なっている。

 やはり水場に集まる生物が多いのだろうな……。


「初めはどこに向かいますか?」

「俺たちの目的は、エミリアおすすめのアーマード・ドラゴンを狩ることだからな。まあでも、生息地の見当が付かんし、暫くは街道を進みながら、兵士や冒険者から情報を集めることになるだろうな」



 白髪天狗とハヤウマテイオウ、二頭の馬には荷物を分散させてある。

 分散させているとは言え、四人分の荷物となれば相当な重量だ。

 俺たちは、交代で馬に乗ったり歩いたりしながら、街道を目指している。


 俺たちが歩いている場所からだと、公都の北側が良く見える。

 公都の外壁からはみ出した街並みも、北側に面した部分だけは、バリケードのような柵で守られている。


 公都と山林までの距離は、随分あると思う。

 視界の奥に見える山が目的の山林だとしたら、距離にして1キロは離れている感じだ。

 所々に茂みの部分があるものの、基本的には平地が続いている。

 そして、広大な平地の殆どは、山から流れてくる水を引いて水田すいでんとなっていた。


「ここで米でも作っているのかな?」

「米だけなら、今の時期は乾燥しておるわい。真冬でも水を引いておるのは、化け物の足を鈍らせる狙いがあるのかも知れぬ」



 ……今日はきれいな晴れ空だ。

 冬の王都は微妙に曇りがかった空が多いので、風の冷たさは堪えるものの気分はいい。


「街道が見えてきたわよ」


 街道に出てから公都の方角を見ると、まるで鉄格子を思わせる北門が見えた。

 王都のような格調高さは微塵も感じないデザインだ。

 こういう物々しさを見るたびに、ここは安全な世界ではないのだと、改めて思い知らされてしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ