表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
345/572

第344話「公都の夜」

 ユナが魔法のランタンで、狭い部屋を照らしていると、ティナも部屋に戻ってきた。


 残るはサキさん一人だが、陽が落ちる頃には戻れと言ったのに、やはり聞かん坊か。

 時間のことなんか忘れて、大好きな銭湯を満喫まんきつしているのだろうな。

 仕方のないやつだ。


「サキさんを待つ間に、今日の成果を報告しておこう……」

「そうですね。まず街の東側ですけど、西側と大差なかったですよ。あと、小さな魔道具屋さんを見つけましたが、全体的に高かったですね」


 ユナの方は、特にこれといった発見はなかったようだ。


「そういえば、魔道具屋の在庫を確認する予定もあったな。レスターの訪問で予定が吹き飛んで以来、すっかり後回しになっていたが……」

「買い取った魔道具を鑑定する日数まで考えると、ちょうどいい頃合いかもしれないわね」

「じゃあ、明日にでも行きませんか?」


 夏場に俺たちが買った魔道具といえば、長期在庫品のような物ばかりだったからな。

 今なら新しく棚に並んだ直後の魔道具が手に入るかもしれないぞ。



「俺の方は、街を南下して橋の所まで行ってきた」


 俺は、冬場でもバハール地方の草原地帯を抜ける事は可能だと、ティナとユナに伝えた。


「現地人のガイドですか……確かにそれなら、敵性部族に襲われる危険が減るかもしれませんね」

「………………」

「ティナさん、どうしたんですか?」

「もしかしたら、簡単にダレンシア王国まで行く方法があるかも知れないわよ」

「空でも飛んでいくのかな?」


 ティナが何かを閃いたようだ。

 魔法を使う方法では、俺やユナの手には負えない。ここはティナに任せておこう。





 サキさんが宿の部屋に戻ってきたのは、すっかり夜になってからの事だ。


「男風呂は盛況せいきょうでの。ついつい話が盛り上がってしもうたわい」

「とにかく家に帰ろう。今頃エミリアが不貞腐ふてくされているかも知れん」

「鍵を返すついでに、外に出て空を見上げるがよい。月が出ておる」

「お前は一体何を言ってるんだ?」

「夜空の月ですか?」

「うむ」

「……?」


 サキさんが馬鹿なことを言い出すから、一体どうしたものかと思っていると、ユナの方も様子がおかしくなった。


「ミナトさん、気付いてなかったんですか? オルステインの夜空には、一度も月が出ていなかったじゃないですか」

「そうだっけ? そもそも、夜はあんまり外に出んからなあ……」


 俺はティナの方を見るが、ティナも首を横に振った。


「少々形の悪い三日月だがの」


 そう言ってサキさんが部屋の外に出ると、ユナもそれに続いた。

 よほど月に興味があるのか、ユナとサキさんは、先に宿を出て行ってしまった。



「忘れ物はないわね?」

「大丈夫なはず。俺たちも宿を出よう」


 あとに残された俺とティナは、部屋の鍵を宿の主人に返してから、冒険者の宿を出る。

 流石にこの時間になると、宿の酒場は人で溢れていた。

 冒険者の宿にしては、冒険者らしい顔ぶれの少なさに違和感を覚えるが、今はそんなことを追及しても仕方がないだろう。


 何はともあれ、俺とティナも宿を出て、その夜空を見上げてみた──。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ