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第341話「公都エルレトラ②」

 公都エルレトラの中心部まで移動すると、その奥には城らしき建造物がある。

 城の周りは防壁に守られているが、王都の中央にそびえ立つオルステイン城と比べたら、その規模はあまりにも小さく、華やかさの欠片も感じない。

 まるで、実用一点張りの砦を、ただただ大きくしたようなイメージだ。


「……公国というから、現実世界のモナコ公国のイメージでいたんですけど、ちょっと違ったみたいですね」

「ここの歴史はしらんけど、これでは城塞都市じょうさいとしだなあ」


 公都エルレトラの外壁の中には、公国の重要施設や、軍の関係施設ばかりが目に付く。

 隊列を組んで、小走りに何処かへと向かう兵隊の数も多く見られる。

 辺りをよく観察してみると、王都でも見かける大商会の看板をはじめとして、いくつかの商会が、巨大な倉庫を並べていた。



「この辺りで適当な宿を探そう。冒険者の宿があるなら一部屋借りてもいい」

「一泊するんですか?」

「酒場を待ち合わせ場所に使うと、何かを注文し続ける必要があるから──」

「やあやあ、そこの君! そう、君だよ。見ない顔だ、冒険者かい? 魔物の討伐に興味は?」

「わしに用であろうか?」


 俺たちが話しながら歩いていると、突然、見知らぬ二人組に道を塞がれた。

 見たところ、公国の兵士みたいだ。

 一人は隊長っぽいおじさんで、もう片方は、二十歳くらいの青年だ。

 この二人は、左右からサキさんの脇を固めると、魔物討伐の勧誘を始めた。


「こんな時期に、バハールの草原を超える訳ではないだろう?」

「うむ。わしらはただ、冒険者の宿に向かう最中さなかよ」

「そうだろう、そうだろう。しかしだな、公都で受けられる依頼といえば、九割方は護衛の依頼しかないぞ? ……その顔では知らなかったようだな?」


 兵士のおっさんは、わざとらしく両手を振り回しながら、下手くそなセールスマンのように、一方的なトークを続けた。


「そこでだ。北の山でうごめいている魔物を討伐するだけで、それらに見合った報酬が手に入る儲け話があるぞ。それだけじゃあない。大物を仕留めてくれば、特別な報酬も期待できるって寸法さ。どうだい? もしも参加したくなったら、最寄もよりの詰所つめしょまで来てくれ。受け付け期間は年内中だ。頼むよ!」

「う、うむ……」


 兵士のおっさんに圧倒されて、流石のサキさんも引き気味だ。

 しかも、言いたい事を言ったあとは、別の冒険者パーティーに駆け寄り、また同じセリフでセールスを始めている。



「…………」

「何だか凄いおじさんだったわね」

「うん。化け物を討伐すると報酬が出ること以外、全く詳細がわからん」

「とにかく冒険者の宿に入りませんか? 通りの向かいにあるみたいですよ」


 ユナはおっさんが喋っている間に、冒険者の宿を見つけていたようだ。

 俺たちはユナの後ろを歩いて、冒険者の宿に入った。





 とりあえず、宿で一番安い部屋を借りた俺たちは、ここで自由行動を取ることにした。


「各自、好きにしていいけど、陽が落ちるまでには戻ってきてくれ」

「わしはちと、詰所つめしょで詳しい話を聞いてくるわい。その後、銭湯へゆく」

「わかった。俺は公都の冒険者事情を調べておくかな」

「私はユナを街の東に送ってから、家に戻って夕食の支度をしてくるわね」


 ああ、そうか。夜には家に帰るんだったな。

 今日は外食にしてもいいが、何も知らないエミリアがへそを曲げても困る。

 こういう時に電話が無いのは、本当に不便だ。


「私は街の東側から歩いて、またここに戻ってきます」

「わかった。それじゃあ各自、別行動にて……」


 サキさんはお風呂セットを片手に部屋を出て行き、ティナとユナはその場でどこかへテレポートした。

 宿の部屋で一人になった俺も、酒場のある一階へと下りることにした。


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