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第2話「パーティー結成」

「魔法陣に関しては大体わかったと思う。ただ、異世界に来たまでは良いが、これからの事が心配だ。この世界で生活していけるのだろうか?」


 個人的にはこの世界に来れて良かったと思う。まだ、この部屋の外がどうなっているのかも知らないけど。

 元の世界での生活には本当にウンザリしていたので、個人的には期待の方が大きい。


「ねえエミリア、ほかの六人はこの世界で何をしているの?」


 隣の少女がエミリアに尋ねた。


「同時に来た二人組で冒険者になった人と、ソロで冒険者になった人が二人、王都の街で生活している人が一人……鍛冶職人ですね。残りの一人は行方不明になっています」



 行方不明はともかく、半数以上が冒険者なのか。かくいう俺は特に技術がある訳でもないので、街に留まっても一生下働きだろう。


「わしは冒険者になろうと思う。勝手気ままな方が性に合うわい」


 残念なイケメンは進路を決めたようだ。俺もこのくらいシンプルな方が良いのか?


「それなら私も冒険者になるわ。知らない世界で一人にされても困るもの」


 あれ? こっちもか。

 ……確かに、何もかもわからない世界で一人きりになるのもどうかと思う。



「じゃあ俺も冒険者になる。でも冒険者って何するんだ?」

「基本的にはモンスターや魔物退治が多いです。ほかには行商の護衛とか、紛失物の捜索とか……仕事の依頼は冒険者の宿で掲示されているのが一般的ですね。特に力のある冒険者だと、一攫千金を狙って遺跡や迷宮に入るパーティーも沢山いますよ」


「荒事までやってくれる何でも屋みたいな感じか?」

「そんな感じです。もし王都で生活されるなら仕事の斡旋も可能ですが、冒険者の場合は自己責任ですので……支度金は魔術学院の方で用意しますけど、後は自分の力で頑張って頂くことになりますね」


 俺たちは自分の意志で飛んで来たので放置されても文句は言えないのだが、無一文で放り出されることだけはないらしい。

 とりあえずこの三人でパーティーを組み、当面は冒険者としてやっていく方向で話が決まった。


「みなさんは冒険者志望とのことですので、私は支度金の用意をしてきますね」


 そう言って、エミリアはそそくさと部屋を後にした。






「とりあえず、これから一緒に行動するんだし自己紹介だけでもしておこうか」

「ならば一番乗りで目覚めたわしから始めよう」


 隣に座っていた残念なイケメンがズイと前に出た。

 俺も隣の少女もどちらかといえば引っ込んでしまうタイプだと思うので、こういう人材は話を進める良いきっかけになってくれる。


「わしはこの世界ではサキと名乗ることに決めたから、名前はサキである。今の姿での年は良くわからん。現実世界ではデブでオタでニートで、腐女子を拗らせ婚期も逃し、睡眠薬を貪って薬物依存症にもなった腐れオバンであった」


 いきなり強烈な自己紹介をかましてきやがった。


「18歳でいいんじゃないかしら? あと、どのくらい拗らせたのかも聞いてみたいわ」


 やめて差し上げろ。



「うむ。ならば18という事にしておこう……わしは男になってホモになるのが女子高時代からの夢だったのであるが、現実逃避のためにホモ同人誌を描いたり、好きなアニメキャラのコスプレ衣装を作ったりしておったら、そのままズルズルと年だけを取ってしまったのだ」


 仁王立ちのまま話し続ける残念なイケメンもとい、サキさんはある意味漢らしかった。


「実家を継いだ弟夫妻が家に入ってからは、肩身の狭さに拍車が掛かっての。睡眠薬に頼るうちにたがも緩んで薬物依存症になったわい」

「そのあたりの心情には心から同情する」

「ここにきて積年の悲願が叶ったから、わしは男色家のもののふとして生きていく。職業はホモ侍である。頭は悪いが勇猛に戦うので、皆よろしく頼む」


『おーーー(パチパチパチ)』


 色々突っ込み所はありそうなんだが、その威風堂々たる自己紹介にある種の感動を覚えた俺と少女は、感嘆の声を上げて自然と拍手をしていた。






「次は私ね。ここでの新しい人生はティナと名乗ることにするわ。私も自分の年齢がわからないわね……」


 スカートの裾を摘まんで少し体を捻る仕草がたまらなくかわいい。俺は決してロリコンではないはずだが、これは実に良いものだ。


「初めて見たときは12歳くらいだと思ったけど……なんか落ち着いてるし16歳くらいでいいのかも」

「あらそう? なら16歳にするわね。現実世界では引き籠りでニートのおっさんをやっていたわ。サキさんと似ている部分もあったから、他人事とは思えないわね」


 俺は思わず腰掛けたベッドからずり落ちそうになった。俺の中では天使確定だったのだが、まさか中身がおっさんだとはどうしても思えない。

 恐らく俺の聞き間違いだろう。できればそうであってほしい……。


「ほう……それは興味深い話である。是非聞かせて貰おうかの」


 やめて差し上げろ。



「いいわ……私は子供の頃からずっと女の子の方が良かったんだけど、やっぱり変だと思うから誰にも悩みを打ち明けられなくて……そのせいで散々いじめられて引き籠りになったけど、大人になっても社会に馴染めなくてニートしか出来なかったわ」

「わしは家族親類友人にまでホモになりたいと言っておったから、ずっと一人で悩む辛さはわかってやれんの」

「お前そんなこと言い触らしながら生きていたのか……」


 突っ込んだら負けだと思っていたが、辛抱堪らず突っ込んでしまった。


「子供の頃に潰しておけば良かったと毎日後悔しながら生きて来たけど、私もサキさんを見習って、これからは自分らしく生きることにするわ」

「うむ。よう言うた。男の役目は全部わしがやってやるから強く生きよ」

「ありがとうサキさん。魔物退治は難しいけど、家事ならできるのでよろしくね」


 肩をすぼめて笑うティナ……は、やっぱりかわいいと思った。俺の好みはエミリアみたいな大人の姉ちゃんだったはずだが、小さいのも悪くない。


 むしろ小さい方が良い……。小さい方が良いんだ……。


 でも中身は……いや、もう元の世界の事なんかどうでも良いだろう。というか最初からサキさんが強烈なのをかましたせいで、たぶん感覚が麻痺している。

 それにしても潰しておけば……か。俺は自分の金玉を想像して股の辺りがむず痒くなったが、とても触る気にはなれなかった。






「最後は俺か……そういえば、こっちでは何て名乗るかなんて考えてもみなかった。俺はいくつくらいに見えるかな?」

「良くわからんが15歳くらいであろう」


 そうなのか。鏡もないし客観的に見れないので、そういう事にしておこう。


「じゃあ15歳で。二人の後だと大したこと無いような気もしてきたんだが、現実世界での就職活動に失敗して二年くらいニートしてた……全員ニートかよ。ヤベー」

「今日から冒険者である。もうニートではないだろう」


 そう言われるとそうだ。



「それで名前なんだが、自分の名前がちょっとアレなんで、そのせいでずっと弄られたり就活でも散々責められて、もう名乗るのも辛いしトラウマになっているんだ……疫病神と書いて、普通にやくびょうがみと読むんだが……」


 俺は名乗ったあと吐き気がした。この名前は俺を苦しめ続ける呪いの言葉だ。


『それは酷いわ』


 一瞬間をおいて、二人の声がハモった。



「そもそも人間の名前になっておらん。自分でまともなのを考えた方が良い」

「全く、何を思ってそんな名前を付けたのかしら」

「うん……そういう事情があって自分だと良い名前が思い付かないので、良かったら名乗るときに抵抗がない普通のやつを考えて欲しい」


 自分の名前を丸投げにするのもどうかと思ったが、本当に何が良いのかわからないので初めから仲間を頼ることにした。


「ならば候補をあげていこう……ミーシャ……ナナミ……トリス」

「……ミナトでどうかしら?」

「ほう。なかなか良いのではないか?」


 こんなやり取りをして俺の名前が決まった。実際にイメージしてみると名乗りやすい名前だと思う。茶化したりせずに真剣に考えてくれたのは素直に嬉しかった。






「じゃあ改めて……この世界での俺の名前はミナトだ。良い名前をくれてありがとう」

「うむ。良く似合っておる」

「いいわね。かわいいと思うわ」


 名前の呪縛から解放されて嬉しかったのでついつい喜んでしまったが、どっちかと言うと女寄りの名前じゃないのかこれは?


「ちょっと待ってくれ。俺は男の方が良かったので、できれば男に戻りたいと思っているんだ。冒険の中で元の姿に戻れる方法を見つけたいと考えているから、そういう方向で協力してくれると嬉しいな」

「なに? 男の方が好きと申すか?」

「うるせえハゲ!」


 サキさん、お前はもう手遅れだ。



「実はな……ここで目が覚めてから我が身の異変を知ったときに取り乱してしまったんだが、エミリアの……そのー……デカい胸に触れたとき、自分にも同じものが付いていた事がショックで全然嬉しくなかったんだよ。全く興奮しなかった」

「ほう。それで?」


 サキさん食いつき過ぎです。ティナも興味津々に聞いている。


「このまま男に戻れないと俺の中にある大切な何かが壊れそうな気がする。何も全部元通りにしろとは言わない。もう一生女のままでもいいから、せめてチンチンだけは生やしたい……」


『レベルたけーな……』


「なんでよ!?」


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