第116話「エミリアのチン毛」
俺が風呂場に行くと、素っ裸で風呂椅子に座らされたエミリアが、これまた素っ裸のティナとユナにコロコロをされていた。
……裸の寒さを凌ぐために、ドライヤーを温風ヒーターとして使っているようだ。
仕方ないので俺も服を脱いでから事の成り行きを見守っている。
なんだかすごい絵面だなあ。
「背中や首の後ろも油断できないわよ。ユナ、髪が落ちてこないように持ち上げてちょうだい」
「はい」
難しい箇所はティナがやっているようだ。しかしコロコロの効果は凄まじい。どんどんムダ毛が消滅していく様は見ていて爽快である。
ティナはエミリアの指先まで丁寧にコロコロをしている。
「昔一度だけ脱毛したことがあるんですけど、あまりの痛さに逃げ出したんです……」
「そうだったのか。エミリアにも若い頃があったんだな」
エミリアは何かを言いたそうな顔で一瞬腰を浮かせたが、コロコロが心地いいのか座り直して言うのをやめた。
「あ、そこは……脇くらいは自──ああんっ!」
「!?」
突然エミリアがいやらしい声を出すものだから一瞬びびってしまった。
「エミリアー、誰も喜ばんからいやらしい声、出すなー」
「で、でも脇の下だけはあぁんッ!」
エミリアは余程脇の下がくすぐったいのか、巨大なおっぱいをブッルンブッルン揺らしながら、全身をタコのようにくねらせて耐えた。
「……上半身は終わったわよ」
「じゃあ次は私ですね」
ユナにバトンタッチしたティナは、自分の体を洗い始める。なるほど、洗うのが遅い順に交代するのか。
ユナは足先と膝からコロコロを当てて、それが終わると一気に脚を終わらせた。太ももやふくらはぎを一気にやるのは見ていて面白い。
「……足も完璧です。後はミナトさんお願いしますね!」
「おう、待ってました!」
俺はユナからやる気満々でコロコロを受け取った。俺の担当は……股か……。
しょうがない。男みたいに大きさとか気にしなくてもいいし、ましてやコロコロしている最中に大きさが変わったりすることもないだろうから、正直女の方が気が楽だ。
「おいエミリア、股開けよ」
「え? あの……いくら女同士でもそれは恥ずかしいというかですね……」
「こうなる覚悟で来たんだろう? さあ、わがままを言ってないで早く股を開くんだ」
「は、恥ずかしいです……あんまり見ないでください……ね?」
エミリアは観念したのか、力なく項垂れて股を開き始めた。
「……髪を洗ってる最中だけど、セリフだけを聞いてると色々酷いわね」
俺はエミリアのチン毛を一生懸命消滅させた。コロコロがムダ毛を消し去って行く様子は何度見ても面白い。
たぶん俺のチン毛は二度と生えて来ないと思うから、再びこの爽快感を味わえたのは素直に嬉しいと思った。
「あの! そこは……それより下には──っ! はうっん!」
「エミリアはなんで一人でそんなに盛り上がってるんだ? 発情しているのか?」
「足と股の付け根の角も油断するとありますから、ちゃんと確認した方がいいですよ」
「ほんとだ。俺の目を逃れようとするチン毛は許せん!」
結局俺は尻まで丁寧にコロコロをしてやった。美容効果まで使ったので二往復だ。
「エミリア、きれいになったぞ。さて、俺も体を洗わないとな」
「はぁはぁ……私……もう……」
エミリアは虚ろな目でだらしなく開いた自分の股間を恐る恐る触りながら、真っ赤な顔をしてハァハァと息を漏らしている。
単にチン毛が無くなったのを確認しているだけなんだろうが、まるでいやらしいことをして遊んでいるようにも見えるな。
流石は下ネタ四天王の一人だ。やることの次元が違う。
エミリアが平静を取り戻したのは、俺が髪を洗い終わった頃だ。
「すごいです! 掛け湯をしただけでも肌触りの違いが判ります!!」
「すごいだろう?」
マラデクの宿では掛け湯だけしてドボンしようとしたエミリアが、なんと自発的に体を洗い始めたのを見て、俺は謎の感動を覚えた。
先に湯船に浸かっていた俺たち三人は、浴槽の縁に腰掛けたりしながらエミリアが満足するのを見守った。
「やっぱり下の毛が無くなると何だか恥ずかしいですね……」
「すぐに慣れますよ」
体を拭いたエミリアはパンツをはいて、本来ハミ毛していた部分を手で確認している。
「ほら、鏡で確認するといいわよ」
「今まで本気でどうでもいい感じだったのに、見違えるようにエロくなったなあ」
卑猥コント顔負けの豪快なハミ毛やワキ毛が無くなっただけで、エミリアの体は一気にイケイケのエロエロ姉ちゃんになった。
「本当にありがとうございます。ハミ毛しないことがこんなに気持ちの良いものだとは思いませんでした」
「脚も超つるすべだから明日はエロ教師の服で一日過ごしてみろよ」
「はい!」
エミリアはついでに髪を乾かすと、下着姿のままテレポートして学院に戻った。
「喜んでくれて良かった。これをきっかけにズボラな性格が治るといいんだがな」
「そうですね。エミリアさんはもうちょっと自覚した方がいいです」
今日は物凄い長風呂になってしまった。俺たちが髪を乾かしている最中にサキさんが銭湯から帰ってきたので、順番に髪を乾かしたあと全員で歯を磨いてから寝た。
翌朝目が覚めると、俺はユナに抱き付いて寝ていた。ティナだと思って遠慮なく甘えていたら実はユナだった。
「あ……おはようございますミナトさん」
「う、うん。おはよう……」
ユナは気にしていないようだが、俺は気恥ずかしい思いのまま朝の準備を済ませて、ユナと一緒に洗濯物を洗っている。
もう以前のように夜中に乾いたりはしないので、ティナが朝食を作っている時間に二人で洗うことにしたのだ。
大物があるときは脱水係のサキさんを呼ぶ手筈になっている。
洗濯が終わった俺は、一人放置プレイをしているエミリアの相手をしに広間へ戻った。
「今日は久しぶりにエロ教師の格好だな」
「はい。あと、エロ教師とか言うのはやめてください」
エミリアが着ているのは、少し前にカッチリした店で買ったエロ教師風の服だ。
ブラウス、ベスト、タイトスカートという、まあ普通の服ではあるのだが、エミリアは奇乳のせいで胸元が物凄い事になるので、完全にマニア向けのエロ教師に見えるのだ。
……あれ? エミリアってチン毛に関係なく、結局マニア向けなのか?
「そう言えばサドランがエミリアを一目見て学院の導師だと判断したが、魔術師のローブは役職とかで種類があるのか?」
「そうですね……学生だと専用のケープがありますし、一人前になると魔術師のローブが渡されます。導師になると帽子とセットになったケープ付きのローブになります。基本的にはこの三種類ですね。学院長先生は特別ですよ」
「導師のローブは結構目立つよな。白地に金とか黒のラインが入ってるし」
「扱うのが魔法ですから、何かあった時には生徒が見付けやすいようにする意味もあるんですよ。導師クラスなら対抗魔法も知ってますからね」
「安全にも寄与しているんだな……」
俺とエミリアが色んな職業の服装について話していると、ティナが朝食を運んできた。
今日の朝食は、野菜と目玉焼きとベーコンとチーズをスライスパンで挟んだものだ。ちょっと名前はわからない。具にはケチャップが掛かっている。
「この、何て言うか、もし横にフライドポテトがあったらいいなあと思う感覚」
「ざく切りジャガイモのフライならいつでも作れるけど、ミナトが考えてるのは押し出す機械がないと難しいわね」
「ミンチ機を買うタイミングかもしれませんね」
ユナの話では以前薪ストーブを見に行ったときに、ミンチ機の目星は付けてきたらしい。
出口の穴の大きさを交換できるものがあるので、それを買えばフライドポテトも作れるかもと言う。
「そんなに高くないし家庭用のサイズもありますけど、毎回分解して掃除するのは大変かもと思って見送っていたんですよ」
「そうか、掃除もあるのか。なるべく簡素な作りのやつを買った方がいいな」
「私も一緒に見に行こうかしら?」
「じゃあ、今日は私とティナさんでミンチ機を買ってきますね」
今日の二人の予定が決まったようだ。
「わしはミシンかの。もう少しで完成しそうだわい」
「じゃあ俺は歩いて冒険者の宿にでも行って来るか。知り合いも増えたし情報収集ができるかもしれん」
エミリアが学院に戻ったので、ティナとユナもハヤウマテイオウで街に出掛けたようだ。
俺は食器を片付けてから歩いて冒険者の宿まで行くことにした。
俺が冒険者の宿の扉を開くと、飯時を少し過ぎた辺りの酒場にはまだ複数のパーティーが残っている状態だ。
少し見渡すと客の中にシオンとハルを見つけた。二人は揃って腕組みの姿勢をしたまま、俯いたり天を仰いだりして唸っている。
「二人して何を悩んでんだ?」
「ミナトじゃないか。まあ座って……随分久しぶりな気がするよ」
「……そうだっけ? で、何かあったのか?」
「それがよー、シオンの装備が溶けたんだよ。廃墟のモンスターと戦ったら体液まみれになって、鉄と銀だけボロボロに溶けてやんの。すげえだろ?」
「あれには驚いたね。ポケットの銀貨やハルに借りた短剣まで溶けてしまったし……」
「体液って……気持ち悪いなあ」
恐ろしい化け物だ。もしも全身金属鎧のサキさんが食らったら大損害になるぞ。
「それで今、新しい装備をどうするかで悩んでいたんだ」
「俺としては魔道具でいいんじゃねーのって、さっきから言ってるんだけどなー」
「確かに魔道具なら錆びたりしないな……」
「でも近くにある魔道具の店だと高価でね。片手剣や盾は特に需要が高いらしいんだ」
「んで、無理をしてでも買うかで悩んでるわけ!」
魔法の盾なら俺たちも買いに行って断念したな。買う金はあったけど、どう考えても価格に見合っていないというか。俺なら供給が追い付かない品物はパスだな。