バレンタインバレンタイン
バレンタイン、というものを知った時は心が震えた。
だって可愛いもの全部詰めた日だと思ったから。
百合はきっと好きそうだな、と思っていたらやっぱりバレンタインにカレンダーは二重丸していて微笑ましかった。
このとき、私は当事者であるなんて、気付いていなかった。
ただ、女の子にとって特別で、キャラメルと生クリームをかけたふわふわなパンケーキみたいな日だと思ったの。
「薫は誰にチョコを作るんだ?」
「うん? うーんとね、魔物の皆と、おとーさんに」
「そうか、まだ〝特別〟たる人物はいないのか」
「特別?」
「薫、この世界でのチョコレートは、特別な意味を持つらしい。いや、僕らの世界にとっても、チョコなんて食べたことなかったから特別といえば特別だったが。日常で食べる時とは違って特殊な意味を持つのだと」
帰り道に北斎や美鶴と帰りながら、そんな話をしていた。
「チョコって味が色んなのあるんだね、僕驚いたなぁ! あんな高級品を気軽に食べられるこの世界ってすごいんだね。人間にとっても、高級品だったんだよ、チョコって。お城のパーティーで食べたチョコでも、この世界ほど美味しいものはなかった! それってすごいことだよ、向こうで屈指のコックさんが敵わなかったんだから!」
「本当にね。この世界って何を食べても美味しいよね、私も驚くわ。まだまだ知らない食べ物もいっぱいあるみたいなの。料理のページとか、お菓子のアプリ見るだけでも心が躍る」
「薫、美鶴、そういう話をしているんじゃない。僕だってその意見には大いに賛成だが! だが、もーっと大事な話だ」
「大事? ああ、判った、チョコを食べ過ぎると太るって話だね!」
「美鶴、そうじゃないんだ、そうじゃ……」
「判ってるンだよ北斎くん! 僕は解りながら、話をずらして遊んでいるだけさ」
「その遊びはまた今度にしてくれ、いやできるならあまりしてほしくはないがな」
北斎はじーっっと私を見ていつまでも何も思いつかない私に、痺れをきらせたのか、やれやれと諦めて先を歩いて行く。
私は不思議な顔で北斎を見つめてから、美鶴を見やれば美鶴はヒントをくれた。
「クラスの女の子たちに話題を振ってみるといいよ、この世界に疎い僕でも気づけた」
「うーん? 女の子に関することなの?」
「ただのお菓子ではない、ってのは覚悟したほうがいいよ。薫はバレンタインって、どういう日だと思ってるのかな?」
「感謝を込めてチョコを贈る日……」
「ならチョコを渡すときは、父親という奴以外にはそう言って渡したほうがいいよ!」
美鶴は悪戯めいた笑みを見せて、北斎を追いかけて背中をばしっと叩いて笑っていた。
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