ご都合主義未来
絵の内容を決めるのは七日後ということになった。
写楽や北斎に言うわけにもいかないし、何より私は試されてる気がしたので、こればかりは私一人で考えようとした。
絵の内容……クオリティだけ高くても、絵に内容がないのは何だか嫌ね。
だってそれってリアリティのない絵であっても、それが私達のいた世界の未来ってことになってしまうもの、写楽視点だと。
なら写楽も納得できてリアリティのある未来がいい。
私達が、いなくても意味があった世界なんだなって思える世界がいい。
でも具体的な世界や構図や、絵の未来なんて思いつかない。
かといって諦めたくないの。
写楽を絶望させたくないし、過度な期待を持たせ続けさせたくない。
写楽に安心して前を、今の世界を見て貰えるような未来を作りたいの。
皆で笑顔の世界なら安心できる?――でもそれには理由がなければ。
ただ笑顔なだけだと、自分たちが死んだことこそが正解のようで悲しい。
ならそれを裏返す手段はないかなぁ。
前段階として、前回の絵は勇者が魔王になって、残虐なことをしているところで、ストップしている。
残虐な魔王が後釜につかれたら、きっと安心できない。かといって、倒されるところなんてもっと不安になる。
それなら、きっと、答えは――。
――魔物が、人間達と色々あって苦悩する表現をいれて貰おう。
それから、人間と魔物の敵がかつての勇者になり、魔物と人間が和解して暮らす。
一つの共通である敵を見つければ、一緒の世界に暮らしやすくなると思うから。
写楽を騙すことが辛い、なんてことはない。
これは写楽に平穏を与える、優しい嘘なのだから。
「――でもこれは……自分に言い聞かせるのに、近い、かな」
*
私は後日、堺さんに思案した絵の未来を伝える。
堺さんは「ご都合主義だが、嫌いではないよ」と笑っていた。
写楽をいつ呼び出すか打ち合わせをして、堺さんの絵を駄目だししたり、何回か作成過程を何回か見せて貰う。
北斎以外の創作の様子は初めて見たけれど、何だか鬼気迫るものがあった。
創作中には絶対話しかける気持ちはでなかった、というより、そこまで無神経でもない。
そんなの、絶対邪魔しちゃうって、判るから、ねぇ?
写楽を呼び出す日程と、写楽のお休みの日、それから私が空いてる日が重なる日を模索する。
堺さんはどの日でも最優先するから、と笑っていた。
「年寄りには余った時間が沢山あるからな」とも。
個展に呼び出された写楽は、緊張の面持ちであった。
何故か甫坂さんまで一緒に来ていて、どうしたのかと尋ねれば甫坂さんは微苦笑し、「付き添いです。心細いらしいです」というので、写楽は甫坂さんを軽く叩いた。
「なんで叩くんですか、だってそうでしょう。怯えていたから、私が心配でついてきてあげたんじゃあないですか」
「言わなくていいことまで言わんでもいい! 薫、絵はどこだ?」
「その前に、話したいことがあるの。堺さんがね、あのシリーズの絵は、あれで終わりですって。もう未来が見えなくなってきたらしいのよ。だから、残念だけれど、向こうの世界を気にしないように。もう、向こうの未来を見える人は、いなくなるのだから」
写楽は驚いた表情を見せてから、躊躇いを見せ、私をじっと見つめて、私の両肩を掴む。
「薫……まずは、絵を、見たい」




