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ご都合主義未来

 絵の内容を決めるのは七日後ということになった。

 写楽や北斎に言うわけにもいかないし、何より私は試されてる気がしたので、こればかりは私一人で考えようとした。


 絵の内容……クオリティだけ高くても、絵に内容がないのは何だか嫌ね。

 だってそれってリアリティのない絵であっても、それが私達のいた世界の未来ってことになってしまうもの、写楽視点だと。


 なら写楽も納得できてリアリティのある未来がいい。

 私達が、いなくても意味があった世界なんだなって思える世界がいい。


 でも具体的な世界や構図や、絵の未来なんて思いつかない。

 かといって諦めたくないの。


 写楽を絶望させたくないし、過度な期待を持たせ続けさせたくない。

 写楽に安心して前を、今の世界を見て貰えるような未来を作りたいの。


 皆で笑顔の世界なら安心できる?――でもそれには理由がなければ。

 ただ笑顔なだけだと、自分たちが死んだことこそが正解のようで悲しい。

 ならそれを裏返す手段はないかなぁ。



 前段階として、前回の絵は勇者が魔王になって、残虐なことをしているところで、ストップしている。

 残虐な魔王が後釜につかれたら、きっと安心できない。かといって、倒されるところなんてもっと不安になる。


 それなら、きっと、答えは――。


 ――魔物が、人間達と色々あって苦悩する表現をいれて貰おう。

 それから、人間と魔物の敵がかつての勇者になり、魔物と人間が和解して暮らす。

 一つの共通である敵を見つければ、一緒の世界に暮らしやすくなると思うから。


 写楽を騙すことが辛い、なんてことはない。

 これは写楽に平穏を与える、優しい嘘なのだから。



「――でもこれは……自分に言い聞かせるのに、近い、かな」




 私は後日、堺さんに思案した絵の未来を伝える。

 堺さんは「ご都合主義だが、嫌いではないよ」と笑っていた。


 写楽をいつ呼び出すか打ち合わせをして、堺さんの絵を駄目だししたり、何回か作成過程を何回か見せて貰う。


 北斎以外の創作の様子は初めて見たけれど、何だか鬼気迫るものがあった。

 創作中には絶対話しかける気持ちはでなかった、というより、そこまで無神経でもない。

 そんなの、絶対邪魔しちゃうって、判るから、ねぇ?


 写楽を呼び出す日程と、写楽のお休みの日、それから私が空いてる日が重なる日を模索する。

 堺さんはどの日でも最優先するから、と笑っていた。

「年寄りには余った時間が沢山あるからな」とも。


 個展に呼び出された写楽は、緊張の面持ちであった。

 何故か甫坂さんまで一緒に来ていて、どうしたのかと尋ねれば甫坂さんは微苦笑し、「付き添いです。心細いらしいです」というので、写楽は甫坂さんを軽く叩いた。



「なんで叩くんですか、だってそうでしょう。怯えていたから、私が心配でついてきてあげたんじゃあないですか」

「言わなくていいことまで言わんでもいい! 薫、絵はどこだ?」

「その前に、話したいことがあるの。堺さんがね、あのシリーズの絵は、あれで終わりですって。もう未来が見えなくなってきたらしいのよ。だから、残念だけれど、向こうの世界を気にしないように。もう、向こうの未来を見える人は、いなくなるのだから」


 写楽は驚いた表情を見せてから、躊躇いを見せ、私をじっと見つめて、私の両肩を掴む。


「薫……まずは、絵を、見たい」



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