欲しい未来
「堺さん、選ばせてあげる。絵の続きを改ざんするか、あの絵はあそこでお終いってことにするか」
「ほう? どちらも選ばなければどうするのだ?」
「北斎に今の話を伝えるわ、北斎に教えたくなかったのは、北斎にもう二度と信じて貰えなくなると、感じたからでしょう?」
「脅しか、小娘」
「脅しでなく、命令よ、くそジジイ。
貴方の中で、真実を教えることが美徳だと思うから写楽に未来を教えるのでしょう?
それなら、北斎にだけ真実を教えないのは、美徳ではないわよね?
矛盾してるから、自分勝手だって言ってるのよ」
私は堺さんの胸ぐらから手を放し、目を細める。
「貴方がしたいのは思い出話と、私達に仲間入りしたいだけ。
でも、写楽の関心を引きたいが為に傷つけるなんて許さない。私の仲間の一人、誰も貴方にあげない。
貴方のポリシーが曲がろうと何しようと、絵の続きはハッピーエンドにしてもらうか、写楽との約束を反故にするかどちらかだけ。
選ばせてあげるだけ、感謝してほしいわ」
堺さんは私を睨み付けてから、目に見える怒りを鎮めてるように見えた。
思案とも違う、ただただ何かを我慢する顔であった。
しかしすぐにすっと力んだ表情は消えて、不敵な笑みに変わった。
「流石、金槌たる人物だ――儂のポリシーごと破壊する気かね?」
「ええ、穏便にお互い済ませたいし、貴方も北斎だけには気を遣ってるように見えるから」
「よし、取引といこうじゃないか、小娘。絵の未来は次で最後にしてやる。丁寧に魂を込めて描いてやってもいい、クオリティは保証しよう。ただし、絵の内容は小娘が決めろ」
「どんな内容でも描いてくれるんでしょうね? 写楽や北斎が感動して泣きそうなほどの質に」
「ああ。そうとも。絵の未来を決めるのだけは、お前さんじゃ、魔王どの。
お前さんに、未来を選ばせてやろう」
堺さんの言葉が気に入らなかったから、私は微笑んで首をふった。
「私が掴むのよ、欲しい未来を」




