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「友達」を厭う北斎

「今日はとても有意義だったよ! 実に美しいものが見られて、僕は嬉しい!」

「そうだろう、薫が自慢したがっていた美しい物が、この僕の作品だからな」

「ほんっとうに綺麗なものばかりだ……あ、そうだ、連絡先交換しようよ! それでさ、何か綺麗なもの見つけたら、教えあおう?!」

「それは所謂、友達というやつか?」

「うん、そうだね! どうかな!」


 にっこりと、嬉しげにはしゃいでる美鶴に対して、北斎は一気に顔が青ざめている。

 首を左右に、言葉なく北斎はぶんぶんと振った。

 私達は不思議に思い、どうしたのかと問おうとしかけたら、北斎がベランダへ行き、ベランダから柵をよじ登りスリッパで逃げ出した!


「北斎くん?!! ど、どうしよう、やっぱり僕が昔敵だったからかな……!?」

「それ以外にも理由がありそう……二人は先に帰っていて、私は北斎連れ戻してくる!」

「薫さん!」



 私は玄関から行くと、北斎を見失いそうだったので、北斎と同じくスリッパで柵をよじ登り、追いかけようとする。


「薫!」

「何よ!」

「水玉柄最高だよ! 素晴らしいセンスだね!」

「美鶴の馬鹿!! 叫んで言わないで!」

 私は美鶴へ咄嗟にスリッパの片方を投げると、当たって美鶴は痛がっていた。

 甫坂さんが鬼のような顔をしていたから、美鶴への怒りは何とか収まることになりそう。

 私の崇拝者の前でそんなことを言う君が悪い。


 北斎は、どんくさいのかすぐに追いつけた――追いつけたので、北斎の手を掴んで立ち止まらせる。


「か、薫――」

「どうしたの、北斎。友達になりたくなかったの?」

「――友達は、怖い。友達は、いちゃいけないんだ」

「なんで?」

「――何でだろうな、この魂に刻まれている。それだけは判る。信じて良い人と、信じちゃいけない人が、世の中にはいる」

「美鶴は信じられなかった?」

「いや、判らない。判らないのが一番怖いんだ。判りやすく嫌ってきたり、判りやすく好意が目に見えやすいのならいい。……――ああいう、いつも笑顔、の人は何を考えているか判らないんだ、僕にとっては。火星人みたいだ」

「……北斎、もしかして、この世界で私が来る前に何かあったの? 何か怖い出来事が起きたの?」



 いつも言葉に感情を映し、朗らかな北斎がこんなに瞳を凍てつかせるなんて。

 それだけでも特大の理由がある気がした。

 北斎は、片手を握ったり開いたりして、じっと開いた手を見つめていた。


「――この世界で大事な物を、壊された。それだけだ」

 気にするな、と笑う北斎を揺さぶった。


「北斎! 北斎は肝心な時に臆病になるのね! 貴方は私を慰めてくれた、一番に! 私の龍だって言ったじゃない、私のお願いが聴けないの!? 私は、貴方に話して貰いたいの、何が起きたかを!」

「……――薫、この世界で五十嵐北斎という存在は、重たい。調べれば、簡単に判るよ」


 北斎は儚い笑みを浮かべて、夕闇の街へ走って行った。



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