不思議な絵
「薫、車酔いはしてないか、大丈夫か?」
「大丈夫よ。それより、皆に内緒で来てほしいってどうしたの、写楽」
「――不思議なものを見つけてな。貴様にも見て貰いたいと思う絵がある」
写楽は私を車で、個展へ行きたいのだと案内してくれた。
「堺由樹という奴の絵だ、貴様も興味深いと思うぞ――できれば、例の勇者の仲間だという方が信頼できる奴だと判れば、そいつにもいずれは」
「どういう、ことなの。あんなに勇者の仲間を嫌っていたのに」
「見れば判る――」
個展へついたら、写楽は私をエスコートし、私をとある絵の前へ連れて行く。
――この絵は……!
「私達のいた、城……?」
「この画家の画風は、全て空想だ。もしくは、夢を見て、それをモチーフにと聞いた。他にも、魔王軍に馴染み深い根城を描いた絵だったり……」
「一体……元魔物というわけじゃないんでしょ?」
「正真正銘此方の世界の奴だ。一番見てもらいたいのが、……ついてこい。これはオレが買い取るものの予定なのだが……」
個展で展示されている中で目的の絵に向かって連れて行ってくれた写楽。
飾られていた絵は、とても大きく、何より、その絵は――。
「……勇者が、……魔王になっている?」
「不思議な、絵だろ。現実味のある、絵」
飾られてる絵に描かれているのは、誰かの墓と、周囲の人々が倒れてる惨劇。
傍には魔物らしき生き物がいて、生前見た勇者だけが立っていて、天を仰いでる姿だった。
「これが予知なのか、現在なのか――知りたいと思うのは、おかしいか。もう捨てた世界であるというのに」
「これが現在か予知だとしたら、写楽はどうしたいの?」
「――……薫、オレは、な。たとえ、もう戻れない世界だとしても、貴様を、魔王を継ぐ者が現れるのが許せない。必要悪だからこそ、貴様は死んだのに、貴様を倒した奴が魔王に? ……許せない、オレ達の、魔王はただ一人だ」
「写楽、貴方に忠誠心が根付いているとは思わなかった……」
「ただの忠誠心と、捉えるか。これはオレのプライドの問題だけではない、貴様を汚されてる気がする。魔王という、オレ達の思い出を穢されるのはうんざりだ」
「どうして?」
「――……それを教えろというのは、魔王からの命令か。それとも薫としての、お願いか?」
「どう違うの、それって」
「――上司からの命令か、個人としての興味かによる。個人からの興味であれば……オレ自身へ興味は、少しは持っていると感じられて、ほんの少しオレが喜ぶだけだ」
片眉をつり上げて、写楽は含み笑いを浮かべた。
――ああ、もう、ほら。私が赤くなると判って、そんな笑み浮かべたんだね。
「じゃあ魔王として」
意地悪しちゃう。今この場で少し意識してるのって悔しいから。
写楽は意地悪したというのに、くすくすと笑って、頭を撫でた。
「あの世界の思い出には、ココでは味わえない想いもあったのだよ――独りでいたときに気に掛けてくれた、我が敬愛なる魔王様の温情とかな。それらを……踏みにじられたみたいで、許せんのだよ」
「画家さんにはもう会ったの?」
「ああ……なんというか、少し参った。あまり薫に触れさせたくないタイプだ」
「どういう人なの?」
「……一言で言うと……お節介な奇人だな」
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