獰猛に見えてしまう人
「写楽!! 魔王様が此方にこられたという連絡を受けてきましたわ! 本当ですの!?」
「でっかい声出すな、百合!」
とても、喋り方に既視感が、あります。
それは傍にいてとても歌の上手い人でした。
だけど、何で、その。
……目の前には、蒼いメッシュを入れた、写楽よりも背の高い、スタイルがとてもいい男性が立っている。目が切れ長で、唇が薄い、男前。
男性は私と目が遭うと、真っ赤になって、写楽の後ろへ隠れた。
「は、恥ずかしいですわ……魔王様の前で、この姿を見せるなんて……」
「そうだな、男性に生まれ変わった、とは言いづらいよな、リリー」
「! やっぱり、リリーなんだね……!?」
「魔王様、あたし、あたし……こっちの世界では男性ですの!」
真っ赤にもじもじとなり、何か壁面に飾られてる映像にはリリーが映っている。
『まさに現代の王子様! 今日のゲストは、シンガーソングライターの雪永 百合さんです!』
『……どうも……、百合、っす』
あの映像に映ってる百合と同じ人、なんだよね?
でも、あれ、目の前の百合は私の前で一喜一憂してる。
映像では、目が死んでいる無気力系な感じがするのに。
「こいつ、テレビの前だと気弱になるんだ。そこがうけてるらしい」
「だって誰もほんとのあたしを知らないって思うと不安になるんですもの!
魔王様、ああああ、女性の姿でお会いしたかった……と思ったら魔王様、女性、でしたの?」
「うん、私の性別、女性みたいだね」
「……へーェ……魔王様、世間で流行ってるものお教えしましょうか」
何かな、と思って百合を見上げていると首が痛い。
じっと見つめていると、突然壁際に押しつけられ、百合の顔が近距離まで迫る。
この、体勢。とても、恥ずかしい。
顔中に、熱が点る――百合をまっすぐ見られない。
「あら、その反応ですと、この性別であることに感謝したくなりましたわ」
「おいこら、百合、何やってる!」
「別に何も? ただのじゃれ合いですわ? 今は、ね」
「……くそ、扱いづらい奴め。薫もそんなうっとりするな!」
「魔王様は薫といいますのね、ふふ。宜しくお願いしますわ、是非に是非に」
何でだろう。
一番安心していた、ほっとする存在であった、リリーが。
今はとても獰猛な獣にみえます。