蜂蜜スープ
「今年も健やかに、のびのびと仕事をしてくれるように」
「写楽様、折角仕事を今は忘れる会なんですから……」
「写楽様の生真面目さは相変わらずねぇ……」
皆の交わされる言葉へ、写楽が睨んだところで、皆は噴き出してそれが乾杯の合図になった。
今日の料理は頑張って料理人の職に就いた元魔物が作った料理。
向こうの世界の料理をできるだけ再現した蜂蜜スープに、皆が涙目になっていた。
「ああああ、懐かしいですわ、このくっそまずいスープ!! 毎日食べたスープ! 料理の作り方が誰も判らないから、これしか料理の種類を知らなかったスープ!!」
「まずいという味覚だけは、このスープで教わったはずなのに、今こうして再現されたものを食べると懐かしさだけで、美味しく感じるよな」
皆がおかわりしながら、蜂蜜スープを食べては、まずいまずいと笑っていた。
向こうの世界が懐かしいのかな、やっぱり。
「薫、明けましておめでとう」
「何がめでたいのか僕にはさっぱり判らんのだが、おめでとう、薫。綺麗な服だな」
「この服、とても苦しいんだよ。皆がご馳走食べてるのに、私だけ自在に食べられない。ずるいよ、皆。女の子は不便だ」
「じゃあ食べさせてあげますわ、薫、何が食べたい!? まずはこれでも。ほら、あーん」
「は、恥ずかしいからいいよ、百合」
「照れてくださって歓喜の極みですわ、ふふ」
嬉しげに朗らかに百合が笑って、私にケーキを食べさせる。
レアチーズの、木苺ソースの甘い味のはず。
だけど、私には、味が分からないほど、照れくさかった。
「北斎、そういえばね、今度北斎に紹介したい人がいるの」
「誰だ? 僕に紹介?」
「ああ、うーんとね。前の世界で、勇者のパーティーだった人で……」
『勇者?!!!!!!』
皆が一気にざわっと騒いで、静まりかえった。
ああ……そうだった、勇者って皆を、皆を倒した奴らだから、恨みとかあるだろうに。
北斎や百合や写楽の目は、代表格で怒りに煮え切っていた。




