真冬の聖夜に何を思う
「どうしてか、聞いてイイですか。どうして、私では、駄目なの」
「……――私は貴方を愛し続けてはいます。でも、それは神への憧憬と同じなんです。
貴方が何をしても許し、貴方が何をしても怒らないでしょう。
貴方がたとえ、理不尽に殴っても私は光栄だとすら、思うでしょうね」
「……――……同じ、立ち位置ではないから、なの?」
「そう、同じ目線に立てないんです。私は、いつまでも貴方様の味方で、貴方様を守護致します。
けれど、……恋愛、にはなれないんです」
「……解り、ました」
判ったなんて、言いたくないけれど。
でも、これ以上は困らせる。
これ以上好きだと押しつけるのは、悪意のような、呪いのような。
好きだからといって、好き好き口にしていいものではないの、片思いっていうのは、きっとね。
だから、私はきっと。
「記憶は消さないでね。ちゃんと、もう北斎のビジネスパートナーって覚えておくわ」
「はい、貴方様が、もう私をお選びにならないのでしたら――」
私はこうやって笑って、思いにさよならをするのが正しいのでしょう?
――甫坂さんが立ち去る。
しゃがみ込んで、涙がぽろぽろ零れる。
目を閉じていた。ふわりと誰かが私を抱き締めていた。
――北斎。
「ここは寒いな、薫」
「北斎……? 忙しい、でしょう、アトリエに戻って平気だよ」
「薫は判っていないな、――失恋につけ込むのが恋愛の常套手段らしい。
というのは、置いといてな、覚悟して潔く振られて、泣いているお前をどうして一人にできるものか」
「――……北斎、私ね、どうしても、駄目だった。恋がどういうものか、判った瞬間、魔女を思い出していたの。
皆じゃなかった。北斎でも、写楽でも、百合でもなかったの。でも、ふられて後悔してないよ。
きっと、きっとこれでよかったの。今は、つらいけど、でも……」
「もういい、喋るな。おいで、アトリエに今のお前なら入ってイイ。甫坂さんは帰るらしいから」
「……――北斎……」
涙が、止まらない。胸が、痛い。
頭が、それでも、ずっと、すっきりとこの恋を、前世からの思いの終わりを告げていた。
***
「おや、こんな時に――電話ですか。はい、もしもし?」
『北斎から連絡があった、薫をふったらしいな。貴様はそれでいいのか?
オレは知っているぞ、貴様は――薫を愛していたじゃないか、恋愛として』
「魔王様ご一行は、噂好きと見える。私は、ね。充分なんですよ。
あの方が、此方の世界でも私を探してくれた、私を忘れないでいてくれた。
それだけで、もう、胸が一杯なんです――これ以上の幸せを知ったら、私はきっと、あの方を閉じ込めて何が何でも、自由を奪ってでも我が物にしてしまうでしょうね」
『――恋愛に怯える獣だな、貴様はまるで。……あまり、こういう言葉を言いたくはないが、貴様が一番恋愛から逃げているんじゃないのか?
貴様はチャンスがあったのに、自ら捨てた。それを後悔させてやる』
「――……写楽さん、それでも恋敵のメンタルを心配するって貴方、菩薩ですか」
『こっちが本気で心配してるときに、貴様は――!!』
「ああ、いえいえ。お優しいな、と。おや……? ふふ、……街で流れてる、百合さんの唄ですが……」
『ああ、それな、薫にクリスマスに唄う為に作ったらしいが、仕事だったからな。どうしてもというから、今日売り出したら、反響が凄いんだ』
「――綺麗な、とても綺麗な恋の歌ですね。……メリークリスマスと、お伝えを」
さぁ、薫は三人の中から誰を好きになるんでしょうね、って個人的には、にやにやしてます。
魔女魔女って拘りが消えたので、すっきり。
北斎、写楽、百合、三人でどこまで逆ハーできるのか、予測できません。
ホームコメディになりたい小説だった……(希望系)




