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覚悟なんていらない

「おかしな話。皆と会えなくなって、出会うのが君だなんて」


「はあああ!? 魔王って女だったわけ? ……僕が知ってる魔王って、もっとこう……こんな……女の子っぽくは、ない」


「女の子っぽいんじゃなくて、女よ、私は。勇者の右腕様がどうしてここに?」


「いや……最初は、死んだと思ったんだよ!


 国王様の命が狙われていて、それを護る為に僕がかっこよーく魔法を打とうとしたら!


 後ろから、ざっくり斬られちゃってさァ?


 目を開けたらこの世界にいたんだよ。超怖くない!?」


「ああ、そう。どっか行って。私、君のこと嫌いなんだよ。君は勇者のパーティだったから。私を倒したでしょ」


「僕だって他に、頼れる人がいたら頼ってるよ!


 だけど、こっちで誰もあの世界のこと知らないんだよ!


 すごい不安だったから、話通じるのが魔王だとしてもすごい助かるんだよ!


 ちょっとくらい傍にいてもいいでしょ? ね? ね?」


 ……童顔で涙目でうるうると見つめられると、小動物っぽくて弱い。


 写楽とかがこういう顔つきをしたら、とても怖いけれど、この人はそういう仕草がとても似合う人なのね、と思った。


 しょうがない、少し寂しさは紛れるし、話に付き合ってあげましょうか。



「鞄見せて」


「ぬ、盗まないよね? いいよ、見せてあげるよ、僕の全て! 優しくしてね!」


「変な物言いしないで。あった、学生証……君は、この世界では、桐田きりた 美鶴みつるっていう名前のようね。あ、住所はうちの近所だから案内できる」


「住所って僕、この世界に既に住んでいるの!?」


「最近向こうの世界での記憶が目覚めたんじゃないかな。詳しい原理は、私も知らないの」


「あ、魔王さん、何手に持ってるの。みーせて」


 バッグを持ってる一瞬の隙に、アルバムを取られて、手を伸ばしても私と背が同じくらいなのに、避けるのがひょいひょいうまくて取り返せない。


「返して!」


「へぇ、魔王さんこっちの世界で男祭りしてたんだね!」


「嫌な言い方しないでよ! そういうのじゃないの!」


「そう? でもこの絵?見て見て、これでも、他のでも、皆魔王さん見てるよ。必ず魔王さん意識してるよ」


「……そ、そうなの?」


「魔王さん、この絵って現実で起きたことなの? それならかなり君鈍感だねー。


みーんな、魔王さん意識して、牽制し合ってる。でも、不思議。それでも、仲よさそう。険悪な空気が、ライバル間で流れてない」


「……頭が、待って、痛い……」


「うん? あー、……君、何か呪い掛けられているね? よし、御礼に解いてあげるよ」


「……待って、今は解く勇気がないの、私はだって」


「だって何さ、悪い物は取っちゃったほうがいいでしょ。任せて、僕は呪術にも詳しくてね、呪い解くのも得意なんだよ。ほーら、ドドン!」


 白檀の匂いがしたと同時に、何かが私の体から抜け出して、ふっと体が軽くなった。


 ――いっきに、顔中に、熱が昇り、真っ赤になる。


 今までの! 出来事が! 意識し出すと、恥ずかしい!


 色んなコトに照れてしまう!



「こ……のっ馬鹿! 皆との約束で覚悟ができるまで、何もしちゃいけなかったのに!」


「はーあ? おかしなこと言うんだね! この呪い、恋の呪いだけど、恋って覚悟が必要な仰々しいものだっけ」


「え?」




「恋っていうのは、つまらないことで惚れたり、つまらないことで冷めたりするもんでしょ?


 そんなものに、覚悟するのって惚れる前じゃなくて、惚れた後じゃない?」




 美鶴は、きょとんとした顔で、それから私を哀れむ目で見つめた後、馬鹿にして笑ったので、軽く叩いた。

 

神様どうか、美鶴と薫でコメディ展開になりますように。_(:3 」∠)_

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