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必然の挨拶


 嫌な予感がした、というよりかは、それが必然だったのだと思う。


 どうしてか、何となく。


 写楽の話が頭を通らない、意味は分かるのに、心で理解できない。


 決して、その想いに気づいてはいけない、決して、想いの扉に触れてはいけない。


 私の心には、一つの扉がある。


 魔女が呪いで仕掛けた鍵がかかっていて、決して誰にも見せない恋心を示す扉。


 誰が好きなのか、誰を思っているのか、気付いてはいけない。


 いいえ、気付かないの、心から。

 どうしても誰が好きなのかとか、一瞬でも考えると、意識が飛びそうになる。


 だけど、世界を渡っても一緒にいた私や皆だから、きっと、その言葉は必然だったのかな、と思う。


 これは、考えたらいけない。


 考えたら、いけないのに――。




 気付けば、自室でベッドの中。


 写楽から置き手紙で、「何も考えないままでいい」と諦めの文字が羅列していた。


 傍にいるのは、北斎で、北斎はただ手を握っていて私が起きるなり、ぱちっと瞬きをした。


「薫! ええと、そうだな……まずは、一つ安心して欲しい」


「何を? 私の呪いについて何か対策でも見つかったの?」


 泣きそうだけど、笑ってあげる。その方がきっと北斎も安心するかなって。

 北斎は、むぅっとした顔で、チョップを私に。


「痛い!」

「いいか、薫。呪いについてはお前が何とかしろ、僕達を頼るな。


 勘違いしやすそうだな――呪いをどうにかしたいほど、強い想いが目覚めるまでは、何もするな、と。


無理に自覚する必要もあるまい、と皆で話合った。


 呪いや、甫坂さんの正体を暴きたいときは、お前がしたいときにしろ。


 それでも、写楽の言葉や、百合の異変で、お前は大層この家にいづらいのではないか、とも思った」



「居づらいけど、皆といるのは楽しいんだよ。本当よ、皆は家族みたいなものだもの」


「薫、お前は言い聞かせていないか。自分を知る者がいないからと。流されてこの家にいないか?


 お前がもう一度心から願うときに、戻ってくるといい」


「それってつまり……」


「一度、現世の我が家に戻るといい。どうしても戻りたいって思う覚悟が見えたとき。


そうだな、皆の恋慕から逃げ出すことだけじゃなく、想いを受け入れるか拒否するかの覚悟もできたとき。


もう一度この家に帰っておいで。今のお前は、ただ、呪いを言い訳に逃げている」


「つまり、何が、何が言いたいの。どうしたいの、私には判らないよ」




 判りたくもないんだよ。


 出て行けって意味に気付きたくない。

 泣く前に、北斎が白檀の香りをさせ、私を眠りにつかせる。



「おやすみ、学校でまた会おう、薫」


 意識が戻れば現世の我が家にあるベッドの上だった。



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