表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/66

適応能力


「皆はずるい、適応能力が高すぎる」


 北斎の手を引いて、公園まできたところで、北斎はやっと落ち着いてくれた。

 甫坂さんは何か予定が入ったのか、「後でまた迎えにきます」とまた先ほどの建物へ入っていった。


 北斎は、オレンジジュースを飲みながら、仏頂面をしていた。


「この飲み物もそうだ。僕の今の年齢で好むことはおかしいと、言われた」


「オレンジジュース好きなの?」


「ああ。向こうの世界でも、果実が大好きだった。


 だけど、この世界では僕の年齢では、珈琲とか紅茶とかを好まなければならないらしい。


 薫も写楽も、百合も皆、この世界にさっさと馴染んでしまった」


 北斎はそっと指に、炎を宿してから、一瞬で消すと寂しげに笑う。


「魔法を僕だけ覚えているのも、この世界に馴染めない証なのかもしれないな」


「そんなことないよ。北斎は、覚えてるかな、私にカメラをくれたよ。


 この世界で思い出を形にできるようにって。


 一番最初に、私に趣味になるほど大事な思いをくれたのは、北斎だよ。


 北斎だけが馴染めない、なんてないよ」


「――……薫。でも、僕は……仲間はずれで馴染めないのも嫌だが、馴染むのも怖いんだ。


 僕が、龍であったことは幻だったのかな、って思ってしまう」


 怯える北斎をそっと抱き寄せて、背中にぽんぽんと安心するように一定のリズムで叩いてみた。


 伝わればいいな、怖いことは消えるように祈っているよ、って。


「大丈夫。北斎がとても強い龍で騙されやすさのあまりに、


勇者たちに騙されて写楽の勇者を陥れる作戦を、


勇者にばらしてしまったことはずっと忘れてあげないよ」


「薫、それは駄目だ、それは忘れよう」


「駄目、忘れてあげない。ずっと、ずっと私達の大事な思い出」


「……も、もっといい思い出は、ないのか?」


「幼い頃に背中に乗せて貰って、空へ行ったのも覚えてるよ」


「……――良い思い出、あるなら、嬉しい」


 北斎は、少しだけ幼い笑みを浮かべて、頬を掻いた。


 安心してくれたようで、「帰ろう」と手をさしのべた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ