百合の覚悟
一枚一枚が、形になる瞬間がとても好き。
北斎から貰った、インスタントカメラは、撮り直せない一瞬一瞬を刻み込んでくれて。
貰ったものを使い切ってからも、私はカメラを手放さなかった。
もうすぐ、クリスマスがくる。
クリスマスプレゼントは、皆にアルバムをあげようって思ったの。
――デコレーションはどういうものにしよう、綺麗にシールを色んなの貼ったりしたらもっと特別な感じが出て気に入ってくれるかな。
北斎も私もテストが終わったので一息つけたけれど、写楽や百合は大忙しだった。
百合は特に、ライブをテレビで生中継されるらしく、歌の練習をする日々だった。
アルバムを作っていて、北斎にも見せないようにと部屋へ籠もっていた。
北斎は私が秘密で何かを作っていると気付くと、拗ねてご機嫌取りの詐欺師さんたちに何故か相談をしている。
顧客の悩みを掴めば、より騙せると思ったのか、詐欺師達はこぞって真剣に聞いていたけれど甫坂さんがくれば逃げ出した。
甫坂さんから写楽へ詐欺師の情報がいけば、こってり怒られることが間違いなしだから。
部屋で集中していると、北斎が扉をノックする。
「薫。百合が忘れ物をしたから、届けて欲しいと。僕には判らない、女の君なら判ると思う。化粧ぽぉちがどうのって……」
「ああ、うん、判ったよ。部屋にあるって言ってた?」
「うん。薫が見つけたら、一緒に届けに来てって。甫坂さんが車で送ってくれるとさ」
私はアルバムを隠してから、北斎と一緒に百合の部屋へ。
百合の部屋から化粧ポーチを探していると、百合の開きっぱなしのパソコンが目に入る。
開きっぱなしのパソコンで、開いてるページは、綺麗で可愛らしいクリスマス限定コスメ。
これが、欲しいのかな……と思ったのだけれど、辺りに散らばってるプリントされた練り香水を見れば、笑みが零れそう。
――百合も、皆にこっそりプレゼントしたいみたいだから、内緒にしておかなきゃ。
化粧ポーチを見つけたら、北斎の背を押して部屋を出て行く。
「北斎、クリスマスって知ってる?」
「ケーキとチキンの美味しい日と、聞いたぞ!」
「……食欲で感じるところは、北斎らしいね」
芸術家らしからぬ言葉に、私は笑って、一緒に百合のいるスタジオへ向かう。
――パソコンのチャットログには、気付かなかった。
『ゆり:もう貴方の正体を隠すのは、無理でしてよ。機械は疎いのに、パソコンは使えるのね、魔女』
『ハル:――……限界が、きましたか。それなら、クリスマスを越したら、私は……』
『ゆり:駄目よ、姿を消すのは。魔王様は心から願っている、貴方の幸せを』
『ゆり:だからこそ、もう逃げるのはやめなさい。あたしも貴方に協力するのは、やめる』
『ハル:どうして?』
『ゆり:貴方に会わせないことが魔王様の幸せだと思っていたわ。
だから、あたしだけは皆を裏切ってでも協力していた。それは今も』
『ゆり:だけど、――協力するのは貴方の呪いから、永遠に逃げ続ける意味と同じだと思うから』
『ハル:呪いを解きたいのですか?』
『ゆり:呪いを解く前に、同じ立ち位置で胸を張ってライバルだって言い切りたいのよ。
――だから、俺もいつまでも前世の名残を引きずるのはやめる。
ちゃんと、男として見て貰えるように、頑張る。
――クリスマスに、俺はあの子に告白するよ』
『ゆり:言いたいことは、判るな?』
『ゆり:次は貴方が、俺に協力する番だ、魔女――。意地でも呪いを解いてみせる。
魔王様を幸せにするのは俺だよ』
『ハル:……――男らしさが、似合うようになりましたね。それでは、御機嫌よう』




