恋ではないはずなのに
「だがこのまま近づけば、記憶が消される。
そこで、オレは――機械を弄れない魔女様の為に、今この会話を録音しておいた。これでな」
写楽はスマホを見せて、操作してる姿を見せる。
「いいか、一日の終わりに必ずこの部屋へ皆で集まろう。
それで必ず今録音した会話を聞く。
これで記憶操作にも対応できるはずだ――記憶操作への対応は、これでいい」
写楽はスマホを、そっと机の上に置いてから、じっと私へ視線をよこした。
「さて、ここから先は貴様が将だ、薫。貴様が何を望み、どうしたいかによる。
提案があるなら言え、魔女に対して何か想うものがあるならそれをどうするかも考えるのを手伝おう。
だが、基本的には貴様が考えろ」
写楽は一瞬だけ、心臓を切り刻まれたような切ない顔を見せて、私の手を握る。
「これは、オレの、恋ではない。貴様の恋による問題だ」
「恋じゃないよ、多分」
私は小首傾げて、きっぱりと言い切る。
だって、恋って甘いものなんでしょう? もっと胸が高鳴るものなんでしょう?
少なくとも、今は願うのは――。
「あのね、恋とかは今はおいといてほしい、魔女に対して。
私は、今は、魔女がこの世界で平穏に、安心して素のままでいてほしいって思う。
魔法使って記憶消してまで、存在を消さなくてもいいのにって。
魔女に、美味しいものを食べて、幸せだなぁって思う瞬間が毎回きてほしいの。
魔女の先行きが不安だよ。
魔女に、存在を消してほしくないっていう伝え方を、一緒に考えてくれないかな。
魔女はどうやら、暴走する癖があるみたいだから」
「そういうことなら任せろ」
ふん、と強気に笑う写楽。
「仲間だしな、一緒に戦った仲間」
照れくさそうに笑う北斎。
「薫の記憶はもう消させませんわ!」
気合いを入れて頷く百合。
――嬉しいな、幸せだな、協力してくれる皆がいるって。とても、頼もしい。
私は三人ともを抱き寄せて、「有難う」と伝えると、各々の反応がきて面白かった。




