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可愛い人

 ハンバーグを皆で食べると百合がご機嫌になっていたけれど、次の日には落ち込んでいた。


 今日は休みで、北斎は甫坂さんと詐欺師から逃げ回っていて、写楽は急な仕事で出て行った。


 百合と二人でリビングでテレビを見ていたのだけれど、百合はCMで自分の新曲が流れる度に落ち込んでいた。


「何かあったの?」


「……どうして? 薫」


「ずっと、浮かない顔してる。曲が流れる度に」


「……――あたし、ね。この曲に自分の思う可愛い物全部詰め込んだつもりでしたの」


 百合はぼんやりとしてから、思い出すように遠くを見つめ、ぽつりぽつりと語っていく。


 テーブルにあるコーヒーが冷めていっても、気にしないで百合はコーヒーを飲んだ。


「女の子が勇気を出して恋をできるように、頑張ってね、ってつもりで。


 そしたら、――評判が悪いの。評判が悪いのまでならいいのよ、それは個人差ですからね。


……でも、皆、『百合に可愛さは要らない』って」


「……可愛さが要らないって言われる理由は?」


「……不思議がってくれてるあたり、薫もあたしと同じね。


 あたしが格好いい王子様みたいな雰囲気で、売り出しているからよ。


 今回の歌で判ったの、皆、あたしの歌じゃなくて見目が好きなんだって」


「そんなことないよ、百合は歌がうまいもの」


「……それを言ってくれるのは、薫だけ。だから、薫が大事……とても、とても」


 百合はとても自信なさげに、私を抱き寄せた。


「勇気を、自信を頂戴――?」


 甘えるように、私にキスをしようとしていたので、私は咄嗟に私と百合の間に手を差し入れキスを防ぐ。



「やけくそになってないかな、百合」


「――少し、ね。薫さえいればいいって」


「でもこのままキスすれば、百合は自信をくれる私を好んでいるっていうことになるよ」


 百合が悲しんでいる、見目だけが好きな子たちと変わらなくなるよ、と意味を込めると百合は益々落ち込んだ。


 何だか子犬みたい。


 ぎゅ、と儚い力加減ですり寄ってきたので、私は写楽から貰ったお財布を取り出す。


「百合、買い物に行こうよ」


「え?」


「百合の好きな可愛い物買おう。女の子の服で可愛いと思ったら私が着て、


男の子の服で可愛いと思ったら百合が着たりして。どうかな」


「……薫」


「それで可愛い物着て、ライブハウス行こう。魔物の子がやってるところがあってね、そこで歌おうよ、飛び入り参加で」


「薫はまだまだ人間界に詳しくないですわね、そこで歌ったら契約違反ですわ。


……でも、有難う。買い物には、行きたいわ! 薫に何着て貰おうかしら!


 一緒にクレープも食べたいですわ!」


 浮かれてる百合は、見ていてとても可愛い。


 二人で変装し、街へ出て、買い物をし始める。


 百合は私をコーディネイトして、私は百合をコーディネイトしてみた。


 信号を待っている間に、とびきり大きなビルの壁隠すくらいの広告を見つめる。


 そこには、確かにとびきりかっこいい百合の写真だったけれど。


 私は隣で、クリームが口に少しつくくらいクレープを夢中で食べて、喜んで破顔してる百合のほうが、らしくていいなって思うよ。


 隣で女の子達が話してる。


「あ、百合様だ、あの広告のポスター欲しい!」


「今回百合様の歌、何だか女の子より可愛くてずるくない?」


「えー、でも、百合様の歌って元気でるから、私大好き。無理のない応援みたいなの。


 綺麗すぎない歌詞で、前向きすぎない歌詞。綺麗な歌詞なのに、綺麗事だけって感じしないのよ。


 それよりさ、明日、Y君が……」


 信号待ちをしていた女の子達が歩いて去って行く。


 ちら、と百合を見やると、百合は涙ぽろぽろ零している。



「見目だけなんて、決めつけちゃいけないね」


「肝に銘じておきますわ……! 有難う、教えてくれて、有難う……」

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