さよならファンタジー、こんにちわシビアな世界
大好きだった友達がいた。
僕は必死に皆と遊ぶために花札もポーカーもサイコロ使う遊びだって、頑張って覚えた。
すると大人達は、慌てて僕がそのゲームを忘れさせるのに必死になっていて、一番年上のお姉さんに怒られていた。
一番年上のお姉さんは名前がなかった。
僕の友達には、皆名前があったのに。皆は「魔女」と呼んでいた。
誰よりも慈悲深くて、誰かと話すだけで騙されてないか心配になったハーヴィー。
一番ずる賢くて、ハーヴィーの色違いみたいな見た目のシャラク。
女性らしい女性で、一番ほっとする歌の上手いリリ-。
皆の背をいつも追いかけた、遊んで欲しかった。
けど、皆は僕と好き好んで傍にいたわけじゃなくて――。
「見つけたぞ、魔王め!」
所謂、魔王と言われる僕のお守りをしていただけにすぎなかった。
此処に、勇者がいるってことは、皆倒されて死んでしまったんだな。
そうか、なら、僕も僕の役目を果たそう。
「おのれ、生きては返さぬぞ!」
「オレ達はお前を倒して世界を取り戻すんだ!」
あー、それ、さ。僕のお父さんがハッスルしちゃって、世界を暗黒にしようとしてたんだよね。僕がそれ知ったのつい最近なんだよね、なんて言い訳は通じない。
勇者のレベルは、99。頑張ったんだなぁ。
僕のレベルは、55から固定で動かない。
あーあ、短い人生だった、なんて余韻に浸る暇もなく、倒されて。
勇者が喜んでるのが最後に見つめた光景だった。
『理不尽だと思いますか?』
ふと自分がやたらとふわふわしてる感覚がして、気付けば目の前に金髪のおねーさんがいた。
おねーさんは穏やかな顔で、にっこりと笑っている。
「どうして、魔王は倒されるものなんでしょう」
『倒されなければならない、なんて役目が一切合切無い世界もありますよ』
「へぇ、楽しそうだね」
『楽しいかどうかは、個人にお任せしますが、ずっとこれまで倒されてきた魔物をとある世界へ転生させ続けてきました。貴方で最後です』
「ふーん……向こうに行ったら魔法使えないの?」
『魔法は使えない代わりに、魔物の皆様記憶を有したまま転生されていて、魔王様のご到着をお待ちしておりますよ。なので、貴方の記憶もそのままにしておきます』
それって皆とまた逢えるってことかな。
でも、魔法が使えないのなら、僕は魔王じゃないってことでしょう?
皆は魔王じゃない僕とも遊んでくれるのかな……。
『さぁ、チキュウへいってらっしゃい』
温かな光が僕を包む頃には、僕はそのチキュウとやらへ産まれていた。