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赤い魔法使いと人魚姫  作者: 文鳥
31/59

第28話


背後から一突き。

音も立てずに忍び寄った兵士たちの槍で。



エリルとカイトは背中から胸元までを貫かれ、真紅の血を噴き出しながら、声もなく、その場に崩れ落ちた。



「…………⁉︎ …………ッ‼︎」


ソラはもがき、暴れたが、トッティの“拘束”が弛むことはなかった。バランもトッティも、同族の兵士たちも、ただ冷ややかな目で倒れた二人を眺めている。


−−どうして。


−−どうして、ふたりを、ころした?


−−なんのために⁉︎


声にならない疑問と悲鳴は、大気中に吐き出すことさえ叶わずに、ソラの心の中だけでぐわんぐわんと響き渡る。

ぐわんぐわんと、淀んで、渦巻いて。

こうして、ソラの内で、“呪い”が積もっていく。

その畝りを制するように、ソラを拘束するトッティが耳元で囁いた。


「……悪く思うなよ。王女が襲われて、お前が行方不明になった日から−−いや。二つの種族の友好を象徴してきた、あの神殿が破壊された時よりも、更に前から。俺達マーマンにはもう、ヒューマン族と仲良くする気はねえんだ」

「…………⁉︎」

「それに……そうでなくても、お前を地上の連中に引き渡すわけにはいかねえ。現在・・のお前は、王国にとって不可欠な存在だ」


現在の、とトッティは言った。その前にもバランが、ソラの呪いを解く必要はないと語ったのをソラは思い出した。


つまり、王国は、何らかの理由でソラの〈呪い〉を求めている……?


−−と、ソラの予想だにしない方向へ話が進む中。


「ひっ⁉︎ な、何だ、この光はっ!」


突然、エリルを槍で突いた兵士が大声を上げた。



「「「−−−−っ⁉︎」」」



キラキラと、細かい光の粒子が、倒れ伏したエリルとカイトの身体を包み込んでいる。

白く美しい輝きは、槍で貫かれた箇所へ集中して集まり−−光に触れた先から、傷口が少しずつ塞がっていている!


(治癒の魔術を宿した光……聖職者カイトさんが使う、“光”属性の聖魔法だ‼︎)


「おいっ! 早くとどめを刺せっ‼︎」


バランの指示に、兵士たちが慌てて二人に殺到する。

だが、それよりも先に、


「……ッ、う、−−がはあっ⁉︎」


エリルが勢いよく起き上がり、次の瞬間には、腰の剣を抜き放っていた。

兵士の一人が突き出した槍穂を弾き、続けて、奔放とさえ言える縦横無尽な剣閃で以て他の兵士たちをも圧倒する。

続いてカイトも立ち上がり、肩で息をしつつもエリルの横に並んだ。


「ハア……ハア……、……へへっ! 致命傷を負った際、一度だけ傷を治す蘇生魔法。予めオレやエリルちゃんの体に仕掛けておいて正解だったな!」

「ちょっと待って、それぼく初めて知ったんだけど⁉︎ いつの間にそんな魔法をかけてたの⁉︎」


「くそがっ、もう一度死にやがれ!」


と、ここで、動揺から立ち直った兵士たちが再び襲いかかってくる。

が、エリルがそれに反応して動き出すより先に。


(…………っ‼︎)


ソラが、動いた。


ばしゃり、と、ソラが作り出した大きな水玉がトッティの顔面に直撃する。思わず弛む腕の力、その一瞬の隙をソラは逃さない。白魚の如くするりと身を翻し、拘束から抜け出した。

続けざまに、空中に幾多の水の刃を生み出しては兵士たちを翻弄ながら、エリルたちの元へと走り寄った。


(−−エリル!)

「−−ソラっ!」



(「一緒に……−−‼︎」)



こうして、廃墟と化した村を駆けた。

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