第三十九話 ダンジョンアターーック② 試練にぶち当たり大変な問題と思われます!
うぅ・・・寝る時間が・・
バカみたいに大量に湧くインプの群れを蹴散らし『氷焔の鉱山』2階へ降りてきたサチたちは、またしてもモンスターの群れに囲まれてスタートする事となる。降りて早々サチたちを出迎えてくれたのは、
ロックアントというありの群れだ。このロックアントは岩の体を持ち物理攻撃が通りにくい上状態異常耐性と言う特性を持っている。そのためサチは女帝から格闘家へ変更し、リュウは挑発でターゲット集め残りは範囲魔法と各個撃破で片付ける算段とする。
「シャイニング!!」リリーナの光魔法でロックアントは物言わぬ体となる。
「こいつら!耐久力は高くねぇみたいだな。魔法が決まれば大抵倒せるようだ。」リュウの声に、リーシャも反応し強すぎない魔法を詠唱し攻撃する。
「ファイアボルト!」炎の玉がロックアントめがけて炸裂し、火柱が上がる。その火柱の中でも悶えながら動きを鈍くしていくロックアント・・を尻目にサチは動きに鈍くなったロックアントへ打撃スキルを発動した。ロックアントを範囲魔法内に引き込むべくヒットアンドアウェイをしていた際に格闘家のLVがあがり新しいスキル【発頸】を習得していたのだ。
ピンポイントでこうしたスキルが入るのはきっとサチの(称号【姫の】による)システムに好かれるという産物からだろうか・・。
発頸:体内の気力を操作し相手の肉体内部にダメージを与える技。筋力値と知力値が威力に影響する。
サチの発頸によりロックアントは体内をグチャグチャにかき混ぜられ命を散らす。
しかしいくら倒してもロックアントはインプ以上に湧出率が早く、しかも大量に生み出されるためジリ貧になる可能性があるのだ。その上経験値獲得量はそこまで多くは内容で大抵のPTはある程度引き連れて範囲攻撃手段で一気に殲滅、敵が再湧出するまでの空いた一瞬で3階目指して疾走するのが定番である。
サチたちもロックアントばかりで時間を取られる気はなかったので、例に洩れず大量のモンスターを引きつれ3階への階段を目指していた。間もなく3階への階段と言う所で敵を見ると既に100体を超えるロックアントの姿に全員が「うへぇ・・」と心の中で思ったのは内緒である。
ロックアントをユーリアの範囲闇魔法で全滅させ階段前で3階の継続ダメージ対策の為の回復ポーションを取り出しやすい位置にセットし階段を下りていくのだった。
3階の火山の火口のような場所に降りたとたん熱気に包まれ息苦しさを感じる。おそらくこれが継続ダメージかな?と思ったサチが確認すると耐久値が3分で2%ほどだが徐々に減少しているのがわかった。
「思ったより減る割合は少ないんだけど、長時間耐久で探索と考えると資材不足で苦しむより早く抜けたくなる気持ちが分かるね。」とサチは素直に思ったことを言う。
「そうですね。まだこの耐久値だけへの影響ならいいのですが5階と9階の継続ダメージで耐久と精神を削られるとかなり苦しいと思いますよ。特に10階はボスですから9階で使いすぎて物資不足でボスで負けるっていうPTが多いですから・・。」物知り枠のユーリアが説明する。
「で・・どうする?一応当初の予定だとこの階層からマップ作成していく予定だったはずだけど・・・
予定変更なしの探索でいいのかな?」
「そうですね、回復アイテムなら山ほどありますし、探索しちゃいましょう。もしかしたら良い素材が見つかるかもしれません。」ユーリアの意見に反対するものはいなかった。
なんだかんだで素材と聞いて目が輝く辺り、このギルメン達は生産作業が好きなのかもしれないな・・とこっそりサチは思うのだった。
3階に入ってからはサチは職業を女帝に戻し補助枠で動く予定にしている。称号の方は【姫の】から【絶対的幸運の】へ変更され戦闘時のドロップアイテムや採取系のレア度が上がることを期待してのことだ。
3階の採取物は火山っぽい地形通りというべきか石に関連するアイテムが採取できた。
『溶石:長い年月をかけて溶岩が石の内部に閉じ込められいる石。石を割ってもしばらくは中の溶岩が固まることは無い。品質55』
『黒鉄鉱:色々な山で取れる鉄鉱石。鉄よりは炭の含有量が多く、純粋な鉄にするには手間隙が必要。
ただし炭と鉄に分けることができれば良質のものが手に入るだろう。品質60』
『岩炭:火山フィールドでよく見られる燃えやすい性質の岩。砕いて火薬にされることが多いが副素材と合成すると・・・?品質65』
『フレアグラス:通称火炎草。食べると火を噴くと言われる。糸素材や食材としても使えるが使いこなせる猛者はいるのだろうか・・。品質65』
と言ったアイテムがそこら中から発見できた。素材に対応できる人たち(私も含めて)の顔には笑みが浮かぶ。これはやはり人族の国でポータル記憶したらすぐに生産活動に入りそうだ。
3階のモンスターはリザードといわれる火蜥蜴というモンスターが溶岩の中から現れる以外大変だと言う印象はなかった。
そして3階の踏破率が80%を越えた頃前方になにやら部屋が見つかった。
中の様子を伺うと石像が、ひーふぅみぃ・・・6つも並んでおりその中央にはゴージャスな装飾の宝箱が・・。いかにも怪しいような・・でもあの綺麗な宝箱が気になる・・というか宝箱ってこのゲームにあったのかと思う始末。
「ここで質問です。中へ入りますか?」サチは尋ねた。返事はもちろん・・・
「「入るに決まってるだろぅ(でしょ)!!」」・・分かってましたけど・・・ね?
部屋の前で耐久値を回復した一行は、足を揃えて部屋に侵入。すると
『汝。我ガ宝ヲ望ムカ?望マヌナラバ我ガ外へ送ロウ。望ムナラバ、汝ラニ試練ヲ与エン!』
※神の像の試練を受けますか?
ハイ
イイエ
「い・・イベント起きたよ!?」あわてるリリーナ。
とはいえ予想していたことであるので他のみんなは落ち着いて現れた選択肢を選びとる。もちろん戦う方向で。・・・むしろただの石像じゃない事にびっくりですよね。
全員が戦闘を選び、フィールドが火口のような姿から周りに溶岩の溢れる闘技場のようなものに変更された。そして前方に3体の石像が現れる。
「うぉ!?すげぇフィールド変わったぞ。」テンションが上がり気味のリュウ。
「おねぇちゃん・・・火のフィールドで石像がボスだと多分私の火の魔法のダメージが通りにくいだろうから私が補助に回るからおねぇちゃんは攻撃に参加して。」状況判断を素早くしたリーシャが言い、サチはそれを快諾、職業変更のクールタイムが終了したばかりだが格闘家へ再度変更。称号は変わらず幸運だ。
「サチちゃん!私の攻撃も通りにくいかもしれない。どうしたらいい?」マトイが聞いてくるが、私は投擲のことに詳しくないのでユーリアさんに助けを求めてみる。
「マトイさん!与えるダメージは気にせず攻撃に参加してください。もしかしたら弱点があるかもしれませんから!」流石ユーリアさん頼りになってますね・・。私が名目上リーダーですが、やっぱダメな子なのかしら・・。
試練というだけあり石像は此方の準備が終わるのを待っていてくれたのだ。此方の戦闘準備が整った瞬間に動き出したのが証拠になるだろう。
石造の攻撃は3体とも同じ攻撃内容だが方法が違ってきており結構な苦戦を強いられることになった。
仮に石像をABCとしたら、Aが大振りな拳で殴りかかってきた後に一時的に俊敏な動きでバックステップすると言う異質さだ。異質とはいえ大降り攻撃後にバックステップを必ずすると分かると、バックステップ後の隙を狙って打ち倒すことができたのだが・・。この間所要時間7分。
Bの石像ははじめから虚実を混ぜる技巧派の攻撃方法だった。Aほど単発の攻撃力が無い代わりに、素早さに長ける石像ということだね。しかしこの石像にも弱点はあり、素早い代わりに一度足に攻撃を与えると俊敏な動きが言って時間なくなるのだ。そうなればもうただの石ころと言うことで、Bも10分もかからず撃破。
問題はCの石像である。この石像AとBの長所を備え更にAやBと同じモーションの攻撃で範囲と単体を使い分けてくる難敵だった。できるだけ詳しく解説するとこうなる。
「この石像、速いし攻撃力がつよすぎる気がするぅ~」
そういいながら逃げ惑うのはリリーナとマトイである。なんとこの石像後衛殺しがシステムに組み込まれているらしく、執拗に後衛職を攻めてくる。
リュウの挑発も効きが悪く、一瞬憎悪を稼いだとしても、すぐにターゲットを後衛職であるリーシャ、ユーリア、リリーナあとついでにマトイも狙われているのだ。
「仕方ないから逃げ続けておいて!リュウがヘイトが稼げない以上死ぬか逃げるしかないからね!
攻撃は私とリュウがメインで行うから、石像に追われてない人が私達の援護お願いね。」
サチが全員に指示を出し、直後に石像の背後からスキル『発頸』は発動。だがこの石像・・内部は空っぽのようで大きなダメージを通すことができなかったのだ。
「え!?このスキル効かないの・・・?じゃあ殴るしかない・・よね。」
すぐに発頸が効かないことを悟ったサチがTCO当時から使っている我流の基本格闘技で攻め立てる。
敵モンスターは石像なのに殴っても拳に痛みを感じないことが不満?だったが今それを気にする必要はないので、これ幸いと石像の外郭を破壊するべく鋭い打撃、蹴撃を叩き込んでいく。
徐々に剥がされる石像Cの外郭部分。削ぎ落としていく事蓄積されたダメージのせいで石像Cの敏捷さが下がり始めたようだ。こうなってくると追われていたメンバーにも反撃のチャンスが訪れるわけである。
「ぃよーーっし、おっきいのいっくよぉぉぉ!」
ただただ追いかけられていたリリーナが光魔法の攻撃魔法を発動させた。
『ソーラーレーザー!!』
何処からともなく光が収束され見た目的にはど派手な光の柱が石像Cを襲う。
直撃した石像は目に見えてぼろぼろに成っているがまだ倒せないようだ。
しかしもうその場で壊れていない腕を振り回す程度しかできない石像は的でしかなく、リーシャたち魔法組の3方位からの魔法で崩れ去っていった・・・。
すると何処からともなく
『見事ナリ。汝ラ我ガ試練ヲ超エタリ!褒賞ヲ選ブガヨイ。』と聞こえる。
報酬選択:既定報酬・・・称号『試練を超えし者』
選択報酬・・・高位素材、高位装備ランダム、高位装飾品ランダム
と現れたではないか・・。称号は確定なようで選択報酬を選ばなくては成らないらしい。
選択肢は全員に現れているらしく皆が迷っているようだ。
「私は素材も捨てがたいけどアクセサリにしようと思う。私じゃリングしか作れないしね・・。」
「じゃ~私もアクセサリにしようかな。おねぇちゃんと同じの出ると良いなぁ・・・。」
「俺は・・・装備にするぜ!」
「サチちゃんと違うもの選ぶのは嫌だけどここは素材にしておきますね。」
「私も装備ですね」
「それじゃあ私は・・・素材にします。」
上から順に、サチ、リーシャ、リュウ、マトイ、ユーリア、リリーナである。
選択を決定して、全員が宝箱を開けると選択したアイテムが自動的にアイテムボックスにとりこまれるのを確認した。もちろん確認しましたよ。
『試練のネックレス:試練を乗り越えた証。希少モンスター・希少NPCの遭遇率+20%。品質100』
「・・・・・。」
「あれれ?おねぇちゃん。どうして止まってるの?」リーシャがサチのほうへ歩いてきて後ろから覗き込むと・・・
「・・・・・おねぇちゃん・・・・・」
「・・言わなくても良いわよ?・・これで生産がはかどりそうね・・主にレアアイテム方面で・・。」
ちなみ他のメンバーが出したアイテムは、リーシャが試練のピアス、リュウがエアナイトブレイド、
マトイとリリーナがダークライト鉱石など一人当たりランダムで50個の見たことも無い素材のセット、
ユーリアは闇帝のヴェール
といったものが手に入った。その説明がコチラ。
『試練のピアス:試練を乗り越えた証。詠唱速度が5%アップ。魔法の威力が5%アップ。品質80』
『エアナイトブレイド:風の属性が組み込まれた魔剣。装備時初歩の風魔法が使える。品質80』
『ダークライト鉱石:大陸に存在しない鉱石。見つかることは稀で流通量は少ない。魔石との相性が非常に良い。品質80』
『闇帝のヴェール:過去に魔女王と呼ばれた魔族が、身に着けていたとされる闇の精霊に祝福されたヴェール。闇魔法威力+5%。闇属性耐性+10%。品質80』
最後に称号の説明を・・。
称号『試練を超えし者』:神の用意した初歩試練を乗り越えた証。所持しているだけで次の試練を受けることができるようになる。称号枠にセットしなくても効果を得ることができる。ステータス全てに+小補正
・・・みんな良い装備手に入れましたね。・・・今度の称号はパッシブ効果のようです。はじめてみましたねパッシブ称号・・。この情報はさっさと掲示板にあげておくべきかな・・・。ダンジョンクリアしてから書き込むことを決めた瞬間である。
その後3階の踏破率を100%にして4階を目指して移動したのだった。
名前 サチ(♀)
種族 獣人種猫又族
職業 格闘家LV25・鍛冶師LV28・錬金術師LV27・女帝LV21・〈空き〉
称号 〈駆け出しの〉・〈絶対的幸運の〉・〈無望な〉・〈姫の〉・〈覇者の〉 〈試練を超えし者 (パッシブ)〉
スキル 格闘家 ;〈ラッシュ〉・〈ダッシュ〉・〈コンボ〉・〈ロック〉・〈エアリアル〉・〈発頸〉
鍛冶師 ;〈鑑定〉・〈鍛冶〉・〈採掘〉・〈固定レシピ化〉
〈看破〉・〈渾身の一打〉
錬金術師;〈鑑定〉・〈錬金〉・〈採取〉・〈分離〉・〈素材属性委譲〉
女帝 :〈ひれ伏しなさい〉・〈オーホッホッホ〉・〈貴女何様なのかしら?〉・〈あんたの物はあたしの物〉
装備 武器:真鋼鉄爪
頭:なし
体:真鋼の胸当て
腕:真鋼の手甲
足:真鋼の脛当て
アクセサリ:試練のネックレス
アクセサリ:無骨な三錆リング(赤)
所持金125450R




