アンドロメイド☆ミユキ
前置きはさて置き。
短い話ですが楽しんでいただけたら幸いです。
ピンポーン。
「こんにちは、アンドロメイドのミユキです☆」
はあ?
アンドロメイド?
なんだそれ?
でも可愛いアニメ声だな。
『はい。』
ガチャ。
「…。」
『…。』
バタン。
…なんで?
なんで家の前に、
青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんが立ってるの?
おかしいな。
ピンポーン。
「こんにちは、アンドロメイドのミユキです☆」
え、また?
『はい。』
ガチャ。
「…。」
『…。』
だから、なんで?
なんで青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんが立ってるの?
バタン。
おかしい。
何かがおかしい。
ピンポーン。
『はい!』
ガチャ。
「こんにちは、アンドロメイドのミユキです☆」
『…。』
マジかよ。
青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんが、
メイド服を着てアニメ声で喋りやがる。
『…あの、何かの罰ゲームですか?』
「神浦トクヒロさんですね☆?」
『あ、はい。』
いや、トクヒロさんですね☆じゃねーよ!
☆←これ、なんだよ?
意味わかんねーよ!
「今日からお世話になります☆」
『結構です、さようなら。』
バタン。
だから!
意味わかんねーよ!
いろいろ意味わかんねーよ!
なんで青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんがメイド服を着て、しかもアニメ声なんだよ!
ピンポーン。
もういい。
無視だ、無視。
ピンポードンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
ガチャ。
『うるせーよ!
て言うか、ピンポーンって鳴り終わる前にドンドン叩いてんじゃねーよ!』
「今日からお世話をします☆」
『なんでだよ!?』
「今日からお世話をする☆」
『しなくていいよ!』
「する、決定、やったー☆」
『勝手に決めんなよ!』
ズバンッ!
痛っ!?
『…え?』
「お世話☆」
『いや、帰れっつーの!』
ズバンッ!
『痛ぁっ!?
え?ローキック!?』
「うん☆」
『うんじゃねーよ!
なんで蹴るの!?』
「せい☆」
『いや、なんでムエタイのファイティングポーズとってんだよ!?』
「お世話…☆」
『帰れ!』
ズバンッ!
『痛ぁっ!?』
「お世話するー☆」
『お世話するーじゃねえよ!
て言うか、なんで蹴るんだよ!?
しかも見えねーよ!
蹴り速すぎだよ!』
「はい☆」
『はい☆じゃねーよ!』
「きっく☆」
ズドン…!
…あれ?
頭がくらくらする?
…ん、口の中に、何だ?
ぺっ…。
え、奥歯…?
って、俺なんで家の前で寝てるんだ?
え、メイド服?
を着た、青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんが立ってる。
えっと…?
(はい☆)
…?
(きっく☆)
(はいきっく…?)
ああ、アニメ声の青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんに、
ハイキックかまされたのか!
なるほど!
『って、なんで俺の顔面にハイキックかましてんだよ!?
しかも歯!
なんで歯が折れるほどおもいっきり蹴ってんだよ!?』
「神浦のお世話する☆」
『なんでだよ!?
お前なんなんだよ!?』
「アンドロメイドのミユキだよ☆」
『しらねーよ!』
「もう一発☆?」
『ふざけんな!』
「真面目だよ☆」
『なんで失神K.Oされなきゃならねーんだよ!?』
くそ、ぷっつんキタぞ…。
この青ヒゲチワワ…!
『おらぁっ!
…って、痛ぁっ!?』
「殴ったな☆?」
『固いよ!
人工皮膚の下は機械かよ!
なんなんだよ!?』
「アンドロメイドのミユキだよ☆」
『聞いたよ!
何度も聞いたよ!』
「何度も言ったよ☆?」
『アンドロメイドって、なんだよ!?』
「アンドロイドのメイドだよ☆」
『それくらい何となくわかるよ!
何しに来たんだよ!?』
「神浦のお世話…」
バタン。
痛ぁーっ!
口の中が血だらけだし!
鼻血も出てるし!
て言うか、何?
意味わかんねーんだけど!
ピンポードンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
ガチャ。
『だからうるせえっつーの!
ドアを叩くなっつーの!』
バタン。
なんなんだよ!
お前なんなんだよ!
「アンドロメイドのミユキだよ☆」
心が読めるのかよ!?
ていうか聞いたよ!
「何度も言ったよ☆」
相づちいらねえよ!
くそ、いちいちムカつくな!
とにかく無視だ。
もう無理、マジで無理。
ほら、帰れ。
消えろ。
心が読めんだろ?
消えろよ。
「ゲイバー!ゲイバー!
ゲイバー!ゲイバー!
ゲイバー!ゲイバー!
ゲイバー!ゲイバー!」
ガチャ。
『うるせーよ!』
「ゲイバー☆」
『勝手に行けよ!
ゲイバーでもどこでも行けよ!』
「行く☆?」
『叫んでただろ!』
「ゲイのバー☆」
『だからゲイバーだろ!?』
「ゲイの棒☆」
『バーって棒の方かよ!
わかりにくいよ!』
「ゲイバー☆」
『ゲイの棒って意味わかんねーよ!
なんか気色悪いよ!
ゲイの棒がどうしたんだよ!』
「…。」
『黙るなよ!』
「ゲイバー☆」
『もういいよ!』
バタン。
ダメだ、無理。
強いし固いし意味わからないし。
頼むからもう帰ってくれ。
「死ぬまで一緒だよ☆」
ガチャ。
『なんでだよ!?
心を読むな!
て言うか気色悪いんだよ!
何しに来たんだよ?』
「だから神浦のお世話☆」
『なんでだよ!?
しなくていいよ!
だいたいお前…』
「お前じゃないよ、ミユキだよプンスカ☆!」
『うるせえよ!
どっから来たんだよ?』
「井戸の底☆」
『怖いよ!』
「に、ある研究所☆」
『もっとマシな所に研究所作れよ!』
「井戸の底だから臭いよ☆」
『聞いてねえよ!
あー、もういい。
世話とかいらねえ。
て言うか、キモい。
井戸の底に帰れ。
あと!
ピンポンは押すなよ!
ドアも叩くな!
ゲイバーも叫ぶな!』
無だ。
無心になれ。
無…。
「オカマバー!オカマバー!
オカマバー!オカマバー!
オカマバー!オカマバー!
オカマバー!オカマバー!」
ガチャ。
『だから、うるせーよ!
オカマの棒ってなんだよ!?
考えたくもねーよ!』
「オカマの棒☆?」
『自分で言っただろ!』
「オカマのBARだよ☆?」
『今度はそっちのBARかよ!
お似合いだよ!
勝手に行けよ!』
「行かないよ☆」
『ああそうかよ!
もうなんなんだよ!?
何で俺のとこに来たんだよ!?』
「神浦のお世話する☆」
『お前に世話なんかされたくねーよ!』
「もう一回ハイキック☆?」
『ふざけんな!
マジで、次騒いだら警察を呼ぶからな!』
バタン。
…はあ、ドアの前に居やがるんだろうな。
「うん、居るよ☆」
うぜえ。
なんで青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんがアニメ声なんだよ?
「そういう風に作られたからだよ☆」
帰れってば。
「神浦のお世話する☆」
うぜえ。
あ、そうだ!
出掛けよう!
ガチャ。
『一応言うが、付いてくるな。』
「もう離れないよ☆」
『わかった、じゃあ付いてこいよ。』
付いてこれるもんならな!
ブルルンッ!
ドッドッドッドッ…。
『俺、バイク好きなんだよねー。』
「かっこいいよ☆」
『ありがとさん。
じゃあ、あばよっ!』
ブーンッ!
今日は道が空いてるな。
よし、このまま申州街道を突っ走って、気晴らしに買い物でもしてくるかな。
「なに買う☆?」
『って、えーっ!?』
なんでこのスヒードに付いてこれんの!?
しかも走って!
顔色も変えずに!
くそっ!
なら高速だ!
…なんなんだよ。
「アンドロメイドのミユキだよ☆」
…メイドのくせに、どんだけポテンシャル高いんだよ。
「超人アンドロイドのメイドだよ☆」
ああそう、超人ですか。
ドッドッドッドッ…。
ブルルン…。
あーあ、結局振り払えないで帰ってきちゃったよ。
「おかえり☆」
『うるせえ。
俺が警察呼んだら…』
「その前に神浦をハイキック☆」
『鍵閉めてもドアぐらい簡単にぶち破れるんだろうなあ。』
「小指一本で破壊できるよ☆」
『泣きたくなってきた。』
「元気出して☆」
『うるせーよ!』
くそっ、青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんのくせに、
なんでアニメ声なんだよ!
いちいちムカつく!
「火事だー!」
『ああん?
…うわっ、燃えてる!
たしかあそこの家には、足の不自由なお婆さんが…!』
「何処へ行く☆?」
『助けに行くんだよ!』
くそっ、もう玄関にまで火が回っている!
くそっ…ええい、ままよ!
「神浦、死ぬよ☆?」
『うるせえ!
見殺しにできるかよ!
助けるんだよ!』
「じゃあミユキが行く☆」
『はあ!?』
「ミユキはお世話に来たよ☆」
『…!』
でもたしかに、こいつのポテンシャルなら火事くらい…!
「行ってくるよ☆」
『くそっ!
頼む、ミユキ!
連れ出してくれ!』
「チョリーッス☆彡」
ガシャーン!!
うわっ!
ものすげえスピードで突っ込んでいきやがった!
「お婆さん大丈夫☆?」
「おや、オカマちゃん。
助けに来てくれたのかえ?
大丈夫よ。」
「そっか☆」
ガシャーン!
ミユキが燃え盛る家から飛び出してきた!
いちいち派手な野郎だ。
『って、おい、お婆さんは!?』
「大丈夫だってさ☆」
『はあっ!?
この、うんこくず!』
「うんこくずじゃないよ、ミユキだよ☆」
『連れてこなくてどうするんだよ!』
「足が不自由だから火の海を連れては歩けないよ☆」
『はあっ!?
だったら運んでこい!』
「チョリーッス☆彡」
ガシャーン!
「運びにきたよ☆」
「…。」
「あれ☆?」
どんどん火が強くなっていく!
何してんだよミユキ!
ズバーンッッッ!
『え?』
「なんだあれ?」
燃え盛る家の屋根を突き破って何かが天高く飛び上がった!
「メ、メイドだ!
メイドが箱を抱えて、飛び上がった!」
ズシャアッ…!
「運んできたよ☆」
『運んできたって、この長いデカい箱…何だよ?』
「仕方なかったよ☆」
仕方なかった…?
まさか!
『おい、この箱…、どうやって開けるんだ?』
「はい、オープン☆」
『お婆さん!』
「…。」
…やっぱり、はじめから俺が行けば良かったんだ。
こんなイカレ野郎をあてにした俺が馬鹿だった。
「気を失ってたから箱に入れて来たよ☆」
『棺桶かよ!?
…って、え?』
「神浦の言う通り、運んできたよ☆」
『ミユキ…!』
「消防車と救急車がきたぞー!」
『救急車…!
おーい!お婆さんはここだ!
病院に運んでくれー!』
「君が助けたのか!?」
『いや、俺じゃないんだけど!
そんな事より、早く!』
「ああ、感謝する!」
助かった。
良かった。
「良かったね☆」
『ああ、ありがとうミユキ。』
ちくしょう。
このアニメ声の、
青ヒゲでチワワみたいな顔した、
バーコードハゲのおっさんアンドロメイドに、
まさか借りを作っちまうなんてな。
「神浦、動いちゃダメ☆」
『えっ、なんだよ?』
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
なんだっ!?
じ、地震か!?
すごい揺れだ!
立っていられない!
バキバキバキバキ…ッ!
『う…、うわあああ!
地面が割れてるっ!』
「あれ見て☆」
『え、俺んち!?』
ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ…!
『えーっ!?』
グシャグシャガシャン…!
ガシャーン…!
声が出なかった。
まさか自分の家が、地割れに飲み込まれて崩れながら落ちていくなんて。
「神浦、これから様々な天変地異や大変な事件が次々と起こる☆」
『へ?』
「ミユキは未来から来たから知ってる☆」
『み、未来から…?』
「ミユキは文明が混沌した未来から神浦を助けにきた☆」
『俺を…?』
「今から50年後、神浦は超人アンドロイドを発明する☆」
『はあ?』
「そしてミユキを作った☆」
『そんな…!
でも、何のために!?』
「神浦は崩壊した世界の文明を守るために、
ミユキを未来から現代に転送させた☆」
『はは…、バカな。』
「ミユキは神浦の命令で神浦のお世話に来た☆」
『…。』
「これから始まる世界の終わりを、ミユキを使って食い止めろ☆」
そんな事を急に言われても。
何が何だかよくわかんないけど、
でもなぜミユキが、超人アンドロイドなのかは理解できた。
ただ一つ理解できないのは、未来の俺がミユキを作ったのなら。
どうして、アニメ声の青ヒゲでチワワみたいな顔したバーコードハゲのおっさんのメイドなのかが理解できない。
いや、俺が作ったのなら、きっと何か理由があるのだろう。
「でも世界の終わりの始まりまで、まだ時間はあるから安心して☆」
『あ、はい。
そうですか…。』
「今日からお世話をします神浦☆」
『ああ、よろしくミユキ…。』
頭の整理には時間がかかりそうだけど。
でもこれから最悪な未来に向かっていくならば、
最悪な未来が待っているならば。
未来を変えるために、ミユキと一緒に戦うしかないのだろう。
それだけは理解できた。
-fin-
なんとなく思い付きとノリで書き出してみたものの、
楽しく小一時間ほどで書き終えました。
短編小説は、コメディ小説は初めて書きましたが、まあまあ気に入っています。
思い付きとノリで書いたふざけた短編小説のため拙いものではありますが、
笑っていただけたなら幸いです。