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転生学(授業前)

殺人ノート(もう私はあのノートのことをこう呼ぶことにした)に悩まされていても、時間は普通に過ぎていく。私は大学生だ。今日は「転生学」という授業がある。史郎龍樹教授によるこの授業は、この街での不思議な現象、「生まれ変わり」について講義をしている。この学問は割と人気があって受講生も多かった。大地もこの講義には興味があるのでいつも連れて行く。(というのは建前で、本当はメモをとるためである)

「今日は何やるの?」と、大地が聞いてきた。

「生まれ変わりの制約、って授業予定表に書いてある」

私は教科書や筆箱を鞄に手当たり次第に入れながら返事した。生まれ変わりの制約って何を習うのだろう。もしかするとこのノートに関係あるのかもしれない。私は殺人ノートを一瞥した。鉄道模型の正樹は「生まれ変わった光」と言っていた。生まれ変わった光…光くんとかいう子の後悔していたことはなんだろう。大地や正樹のようにモノに生まれ変わっているのだろうか、それとも……。



教室は賑やかだった。この教室はだいたい300人くらいを収容できるらしい。

私はいつも真ん中くらいに座っているが、今日は殺人ノートのことが引っかかっていたので、最前列を確保する。といっても、最前列はいつも空席だらけなので、座ろうと思えばいつでも座れた。

「今日はこんなに前に座るの?」

「ちょっと、話しかけてこないで。あんたと話してたら、ノートと喋る変な女って思われるじゃない」

話しかけてきた大地をたしなめると、隣に誰かやって来たのが見えた。守だった。

「おはよう守」と、元気良く声をかけたのは大地である。

「おはよう」

「ほら、今の聞いたか、みちる。守は普通に返事してくれるのに」

「うるさい。ノートのくせに挨拶するなんて生意気なのよ、馬鹿」

赤間守。殺人ノートの持ち主だ。鉄道模型の正樹が現れたことを言うべきだろうか。しかし、殺人ノートに書いてあったことと、青木家の火災と、鉄道模型こと正樹が関係しているかどうかはまだよく分かっていないのだから、憶測で話すのは良くないかもしれない。

「守、俺の仲間を最近見つけたんだよ」

でも相談されてから結構経っているし、守も何か期待しているのかもしれない。でも一度は投げ出そうとしたことだ。やっぱり言うのはやめよう。

「鉄道模型だよ!鉄道模型に生まれ変わったやつがいたんだよ!」

「わあ、大地ーーー!!ノートのくせに口軽すぎーーっ!」

思わず私は叫んでしまった。途端に私は周囲の注目を浴びてしまった。恥ずかしくなったので(完全に私のせいなのに)大地に小声で、

「ノートのくせに私に叫ばせるなんて!」

と意味不明な抗議をした。

「え?何それ?」

守が聞き返してきた。ああ、もう、これは言うしかないみたいだ。

「鉄道模型に生まれ変わった男の子とこないだ知り合ったの。正樹っていうの」

正樹、という人名が出た時一瞬守の顔色が変わった気がしたが、すぐに元の顔に戻った。何だ、今のは。まるで守じゃなくて別の誰かのような気がした。たとえば、青木光とか。そう考えて、馬鹿みたいとその考えを一蹴した。憶測で決めつけるのは良くない。

さらに詳しく説明しようとすると、授業開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。目の前で資料を配り始めた史郎先生が見えた。お喋りはもうやめよう、と私は前を向いた。守は物足りなさそうにしていた。

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