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団長の日常

「これより、第26回アベック撲滅団の集会を行う!」



 おう! と野太い男共の声が教室に響き渡る。



「ではまず合言葉から! イケメン!」



「「「爆発!」」」



「カップル!」



「「「破滅!」」」



「抜け駆け!」



「「「死刑!」」」



「池山恭介!」



「「「もぐ!」」」



「宜しい、諸君。集会を始めよう」



 最高の笑顔でアベック撲滅団団長たるオレ、上島樹は団員達を見渡した。




 ★



 机を(勝手に)移動し、円を作り、簡単な会議の形を作る。カーテンは閉め切り、電気は付けない。



 うん、いいな。悪巧みするにはこの様な雰囲気



「まず、始めだが二組の相沢琢磨の件についてだ。白虎」



 は、と眼鏡を掛けたやせぎすの男が立ち上がった。首にバズーカのようなカメラを下げたコイツは我がAB団の四獣が一人にして新聞部部長、白虎の高橋長道。



 捕らえた獲物スクープは逃がさず、相手を社会的に抹殺する様は正に白虎と呼ぶに相応しい人物だ。



 他にも、その陰湿さから『這い寄るレンズ(ジャックコブラ)』と親しまれている。



「相沢の件、率直に言いましょう」



 彼はブレザーの内ポケットから数枚の写真を取り出す。



「彼はクロです」



 バサッと写真が机の上に散乱する。



 其処には仲睦まじい二組の男女の姿があった。



「野郎、二組の中島さんと………!」



「そういやアイツ、女のメアドゲットって騒いでたな。あの時は着拒用に交換されたと思ったのにチクショウ!」



「おい見ろこの写真、肉まん1つを二人で分け合って食ってやがる! 肉まんよりコイツらの空気がアチィぜ」



 次々と上がる怨唆の声。流石はAB団、人の幸せが誰よりも許せないという心の狭さが最高だ。



 そんな満足感を感じていると、不意に高橋ビャッコが発言する。



「団長、彼は我が団の血の掟に背きました………」



 彼の背中から黒い煙の様なものが見える。魔法使い候補故に器の小ささは此処にいる誰よりも小さい彼は、冷静を装っていても心の中は嫉妬の嵐で荒れ狂っているに違いない。



「無論だ白虎よ。だが少し待て、もうじき朱雀が持ってくる」



 教室全体を覆う負のオーラに酔っていると今度は後ろから永嶋がおずおずと尋ねてくる。



「あの、団長、持ってくるとは? 本日は機材を持ち込む予定は無かったと記憶しておりますが…」



 普段は冷徹とも言える副団長の顔に困惑の色が浮かぶ。フム、副団長にしては察しが悪いな?



 仕方ないので、答えてやろうとした瞬間、教室の扉が勢いよくスライドした。



「おう、団長! 持ってきたぞ!」



 教室全体がビリビリ響くような大声で男が入ってきた。ちょっと力んだら制服が千切れるんじゃないかと言うほど筋肉で被われたコイツはボクシング部副部長、朱雀の中山翔。



 脳味噌だけではなく、精神まで筋肉に支配されているのではないかと言われている。趣味は討論、ただし使用する言語は拳に限定する。



 悪い奴ではないのだが、根性論の塊でありで暑苦しい。



 余りに暑苦しいので、去年ボクシング部でクリスマスパーティーを開催したのだが、一人だけハブられ、彼だけ黙々とサンドバッグを叩いていた。その際ついたあだ名が『一人ぼっちの聖夜シングルベル』。このあだ名で呼ぶと小一時間説教される、無論拳で。



「ここに置けばいいか?」



 中山スザクは肩に担いだモノを机で作った円の中心に放った。



 ふげ、と床に叩き付けられたソレから呻き声が漏れる。



「あの、団長?」



 痛みでぷるぷる震えているソレを見下ろしていい気分になっていると横から躊躇いがちに副団長が声をかけてきた。



「もしかして、彼が……」



「ああ」



 嗜虐たっぷりの笑みを浮かべ、オレはソレを見下ろした。



「今日の罪人しゅやくだ」



 相沢は簀巻きの状態で涙を流していた。

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