質問(しつもん)
「そういうわけで、みなさんの中に、プロ野球選手、または、元プロ野球選手は、いらっしゃいませんか?」
工場長が急に、謎の質問をしてくる。
この場にいるのは、およそ二〇〇人だ。「プロ野球選手」か「元プロ野球選手」がいる可能性は、決して高くはない。
それに、この質問の意図って?
ここで、一人の男性が名乗り出る。今は引退したものの、数年前まで「プロ野球選手」だったらしい。
にこやかな顔になる工場長。
「失礼ですけど、プロ野球で優勝したご経験は?」
「あります」
「では、『ビールかけ』の経験も当然」
それで、元選手だけでなく他の者たちも、質問の意図に気づいた。
「・・・・・・あります」
元選手が答えると、歓声が上がった。
ゾンビへの対処法は、ビールをかけること。
となれば、『ビールかけ』の経験者は、非常に頼もしい。
「救世主だ!」
元選手に期待の視線が集中する。
そんな中、一人の女子大生がおずおずと、
「あの、私、プロ野球の球場で、ビールを売るアルバイトをしています」
その場にいる全員の視線が、女子大生に集中した。
「なので、『背負い式ビールサーバー』があれば、私も少しはお手伝いできるかも」
「ありますっ!」
工場長が目を輝かせて言った。今の今まで忘れていたが、『背負い式ビールサーバー』がたしか、倉庫のどこかにあったはず。
この展開に、人々は考える。
女子大生が言っている『背負い式ビールサーバー』って、あれだよな。プロ野球の試合中に、ビールの売り子さんたちが背負っているやつ。
ビールが入った容器に、注ぎ口(ノズル)がついているやつだ。
あれを扱う専門家となれば、
「救世主だ!」
「救世主だ!」
「救世主だ!」
またたく間に、女子大生を歓喜の声が包み込む。
救世主交代だ。瓶でビールをかけるよりも、こっちの方が強そう。




