逃走(とうそう)
最初のゾンビが発見されたのは、およそ一日前だ。
町の中心にある繁華街、そこに駐車していたワゴンカーの中に、そのゾンビは潜んでいたらしい。
最初の犠牲者は警察官だった。
そのワゴンカーを不審に思い、中を調べたところ、ゾンビを発見。そして噛まれた。
あとはお決まりの展開だった。
ゾンビに噛まれた者は、ゾンビになる。
繁華街なので、噛む相手には事欠かない。またたく間に、ゾンビが増えていく。
その場にたまたま居合わせた動画配信者が、現場からのリポート映像をインターネット上に流した。
しかし、その映像は五分ほどで途切れてしまう。
動画配信者も噛まれたようだ。現場リポートの最後は、迫りくるゾンビたちの映像だった。
こうして町はパニックに陥る。逃げ惑う人々。自然と集団ができていく。一人で逃げるよりは、大勢で逃げた方がいい。
そんな人々をあざ笑うかのように、たくさんのゾンビが町のあちこちを徘徊する。
なぜ、ここまでの短時間で、ゾンビが爆発的に増えたのか?
それには、理由がある。
最初のゾンビが発見されたあとも、しばらくの間、電車やバスが動いていた。それら電車やバスの中に、ゾンビがまぎれ込んでいたらしい。
で、次の駅に着くまでの間、客たちが次々とゾンビ化していく。閉鎖された空間なので逃げられない。ゾンビに噛まれた者は、ゾンビになる。僕も私も、あなたもゾンビだ。
こうして、町の中心から離れた場所にも、まとまった数のゾンビが出現するようになった。もはや駅の近くは危険地帯だ。
こんな状況なので、町の外に逃げようと思っても、電車やバスは使えない。
あとは車だが、町の外につながる道路は、どこも渋滞していた。
で、車が動けないところに、ゾンビの集団が襲いかかる。主要道路のほとんどが、ゾンビたちの遊び場になった。
なので、生き残っている人々は、大きな建物に閉じこもることにする。




