表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/93

第九十二話 年の瀬の語らい

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵いとう すけたか。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久しまづ とよひさ。島津氏家臣で、島津家久しまづ いえひさの息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

大晦日を一日後に控えた夜。


外気は冴え、空には星が静かに瞬いていた。


囲炉裏の火は穏やかで


薪がときおり、やわらかな音を立てる。


伊東祐兵いとう すけたかは湯呑を手に


火の揺らぎを見つめていた。


「明日で、今年も終わりか」


島津豊久しまづ とよひさ


少し考えてから頷く。


「大晦日というだけで、

 同じ夜が、少し重く感じますな」


「人が勝手に意味を与えるのだろう」


「ええ。だが、その勝手さが嫌いではありません」


酒は少なめ。


話すための夜だった。


足元では小春こはるが丸くなり


黒猫は少し離れて座り


二人の影を見上げている。


「今年は、よく歩きましたな」


「よく食べ、よく語った」


「戦はなくとも、

 一日は一日として重かった」


祐兵(すけたか)は静かに頷いた。


「だからこそ、

 こうして振り返れる」


しばし沈黙。


だが、冷たくはない。


豊久(とよひさ)殿」


「はい」


「来年も

 同じように過ごせるだろうか」


豊久(とよひさ)は、少しだけ笑った。


「望めば、そうなります。

 少なくとも、その心は持ち続けたい」


囲炉裏の火が


ふっと大きく揺れた。


「ならば十分だ」


祐兵(すけたか)はそう言って、湯呑を置いた。


外では風が止み


夜は静まり返っている。


大晦日前夜は


声を潜め


二人の語らいを包み込んでいた。


明日を迎えるための


穏やかな夜であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ