第九話 料理修行
祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介
祐兵さん…伊東祐兵。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。
豊久くん…島津豊久。あの作品で有名。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。
「豊久殿、料理はできるか?」
ある日、祐兵が突然尋ねた。
「料理?まあ、野戦での簡単なものなら...なぜそれを?」
「いや、武士たるもの、何でもできた方が良いと思ってな」
「祐兵殿は料理ができるのですか?」
「...実は私もできぬ」
二人は顔を見合わせた。
「では、一緒に学びましょう!」
豊久が提案した。
「良い考えだ」
二人は台所へ向かった。
料理番の老女が驚いた顔をする。
「若君たちが台所に?何かご用ですか?」
「料理を教えていただきたい」
祐兵が頭を下げた。
「まあ!それは珍しい」
老女は嬉しそうに笑った。
「では、簡単なものから始めましょう」
最初は味噌汁を作ることになった。
「まず、出汁を取ります。この昆布と鰹節を...」
豊久が鰹節を掴もうとして、誤って床に落としてしまった。
「あ...」
「豊久殿、もっと丁寧に」
祐兵が拾いながら言った。
「すみません...」
次は祐兵の番だった。野菜を切る作業。
「この大根を、薄く切ってください」
祐兵は慎重に包丁を握った。
だが、切った大根はバラバラの厚さになってしまった。
「祐兵殿、厚さが揃っていませんぞ」
豊久が笑った。
「...難しいものだな」
老女は優しく笑った。
「最初は誰でもそうです。何度も練習すれば上手になりますよ」
二人は協力して、なんとか味噌汁を完成させた。
「できた!」
「では、味見を」
二人は椀を持って一口すすった。
「...」
「...」
「しょっぱい」
「ええ、とても」
老女が困ったように笑った。
「味噌を入れすぎましたね。次はもっと少なめに」
「はい...」
二人は反省しながら、もう一度挑戦した。
二度目は少しマシになった。
三度目で、やっと美味しい味噌汁ができた。
「これは...美味い!」
豊久が感動した。
「自分で作ると、格別だな」
祐兵も満足そうだ。
「若君たち、なかなかの腕前ですよ」
老女が褒めてくれた。
その日の夕食
二人は自分たちで作った味噌汁と簡単な煮物を食べた。
「料理も奥が深いですな」
豊久が箸を置いて言った。
「ああ。毎日これを作る者たちの苦労が分かった」
「感謝の気持ちを忘れてはいけませんな!」
「その通りだ」
二人は台所の方を向いて、小さく頭を下げた。




