第十八話 秋の夜の天文学
祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介
祐兵さん…伊東祐兵。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。
豊久くん…島津豊久。あの作品で有名。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。
秋の夜、祐兵は天を仰ぎ見ていた。
「祐兵殿、何をしておられるのですか?」
豊久が現れた。
「星を見ている。見てみよ、この星々の配置は...」
「おお、綺麗ですな」
「実は、古い書物に星についての記述があった。それによると、この星たちは季節ごとに動くのだという」
「動く?星が?」
「ああ。正確には、地が動いているのだと書いてあった。だが、それは...」
祐兵が首をかしげた。
「正確な理由は分からぬ」
「なるほど。祐兵殿でも分からないことがあるのですな」
豊久が笑った。
「多いぞ。この世は謎に満ちている」
二人は夜風に吹かれながら、星を眺めた。
「あの星は何という名ですか?」
豊久が指差した。
「あの明るい星は...書物によれば『北極星』という。夜間の方角を知るのに使われるらしい」
「なるほど!つまり、星は実用的な役割もあるのですな」
「その通り。古い時代から、人間は星を頼りに旅をしてきたのだろう」
豊久が寝転んだ。
「こうして見ていると、自分たちの小ささが分かりますな」
「ああ。しかし、同時に広がりも感じる」
祐兵も寝転んだ。
「この大きな世界の中で、俺たちは何をすべきか...」
「祐兵殿は哲学的ですな」
「豊久殿から見ると、何に見える?」
豊久は少し考えてから答えた。
「今、この瞬間に、友と共にいることが大切だと思います」
祐兵は頷いた。
「俺も同じだ」
シロも二人の間に寝転んだ。
「シロも同じですな」
三者(二人と一匹)は静かに星を見上げた。
秋の夜は深く、星は静かに輝いていた。




