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祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


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第十七話 峠での出来事

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵いとう すけたか。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久しまづ とよひさ。あの作品で有名。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

祐兵(すけたか)殿、少し遠出をしてみませんか?」


豊久(とよひさ)が提案した。


「遠出?」


「ええ。あの山越えの峠を越えたら、別の村があるそうです。見物してみたいのです」


「良い考えだ。では、明日出発しよう」


翌朝、二人とシロは峠へ向かった。


道中、山の景色は美しかった。


紅葉が目に映り、野鳥が歌う。


「良い季節ですな」


豊久が楽しそうだ。


「ああ。こういう時間を大切にしたい」


峠の途中で、一人の老人が倒れているのを見つけた。


「大変だ!」


豊久が駆け寄った。


老人は足を痛めているようだった。


「怪我をされていますね」


祐兵が確認した。


「すまぬ...足を滑らせて...」


「無理に動かさない方が良い。豊久殿、水を」


豊久は竹の水筒から水を飲ませた。


「どこへ向かっておられたのですか?」


「向こう側の村へ。孫に会いに...」


「では、向こう側へお連れしましょう」


祐兵は老人に肩を貸し


豊久が反対側を支えた。


峠を越えるのに時間がかかったが


二人は何も言わずに進んだ。


向こう側に着くと、老人が村を指さした。


「あそこです」


二人は老人を村の入口まで連れていった。


村人たちが驚いて出てきた。


「爺さん!」


若い男が駆け寄った。


「孫の次郎か!」


老人が嬉しそうだ。


「爺さんの荷物を持って来た者たちですね。本当にありがとうございました」


「気にするな。往来の者は助けるべきものだ」


祐兵が言った。


「どちらからおいでですか?」


「日向の国からだ」


「それは遠い!こんな奥まで来てくださるなんて...ぜひ、休んでいってください」


二人は老人の孫の家で、食事をご馳走になった。


「祐兵殿、豊久殿と申し上げましたか?」


孫が聞いた。


「ああ」


「爺さんが言うには、最近の世は人情が薄れているとぼやいていたのですが、お二人のような方たちがいるなら、まだ希望がありますな」


祐兵と豊久は顔を見合わせた。


「そんなことはない。当然のことをしただけだ」


豊久が言った。


「いえ、当然と思ってくださる心がありがたいのです」


その夜、二人はその村に泊まることにした。


翌朝、老人が餅を持たせてくれた。


「これを食べてくだされ」


「ありがとうございます。お大事に」


帰り道、豊久が言った。


「良い旅でしたな」


「ああ。人と人のつながりの大切さを改めて感じた」


「また、来たいですか?」


「機会があれば、また来たいな」


帰宅して数日後、老人の孫、次郎から手紙が届いた。


「爺さんの足も治りました。本当にありがとうございました。もしまた来られることがあれば、いつでもお待ちしています」


祐兵は手紙を大切に保管した。


その一通の手紙は、人の温かさを証明する宝物となった。

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