第十一話 碁盤の上の戦い
祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介
祐兵さん…伊東祐兵。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。
豊久くん…島津豊久。あの作品で有名。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。
「祐兵殿、将棋ばかりでは飽きませんか?」
雨の日、豊久が提案した。
「では、何をする?」
「碁はいかがでしょう」
「碁か...実はあまり得意ではないのだ」
「おや、それは意外!では、私が教えます」
二人は碁盤を囲んだ。
「碁は陣取りの遊びです。この黒と白の石で...」
豊久が丁寧に説明を始めた。
祐兵は真剣に聞いている。
「なるほど、将棋とは戦略が違うな」
「はい。将棋は王を取る戦い、碁は領地を広げる戦いです」
一局目が始まった。
祐兵は慎重に石を置いていく。
だが、碁に慣れていないため、豊久のペースで進んでいった。
「参りました」
祐兵が頭を下げた。
「ははは!珍しく祐兵殿に勝ちました!」
豊久が嬉しそうだ。
「豊久殿、碁はいつから?」
「子供の頃、祖父に教わりました。夜な夜な一局打つのが日課だったのです」
「そうか。道理で強いわけだ」
「もう一局いかがですか?」
「ああ、今度は負けぬ」
二局目が始まった。
祐兵は豊久の打ち方を観察しながら
自分なりの戦略を立てていく。
「ほう、祐兵殿、上達が早い」
「豊久殿の手を見て学んでいる」
終局。今度は接戦だった。
「むう...わずかに私の勝ちですが、危なかった」
「次は勝つ」
祐兵の目が光った。
三局目。
祐兵の石の置き方が変わってきた。
守りながら、隙を突いて攻める。
「これは...」
豊久が真剣な顔になった。
終局。
わずかな差で、祐兵が勝った。
「勝ったぞ!」
「祐兵殿、本当に上達が早い。恐ろしいほどだ」
「豊久殿が良い師だったからだ」
豊久は嬉しそうに笑った。
「では、次は互角の勝負ができそうですな」
「ああ。楽しみだ」
雨音を聞きながら、二人は何局も打ち続けた。
時には祐兵が勝ち、時には豊久が勝つ。
「良い勝負でした」
「ああ。また雨の日が楽しみになった」
窓の外では雨が降り続けていたが
館の中は熱気に包まれていた。




