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軽装歩兵アランシリーズ

新訳 軽装歩兵アランワールド 終わりなき旅

作者: ideafactory

 『ナチュレ』

 1000年以上前、人類に迫害された獣人族・人魚族がいた。

 彼ら彼女らは地下や無人の地域にコミュニティを作り、地下経済を営んでいた。

 産業革命最初期、貴族のブルムバッハは貴族主導の地下統制経済プラン『貴族主義型管理経済』を導入、貨幣の排除や当時西欧の主流であった自由経済思想を排除し、現物取引・自給自足を推奨する前時代的なシステムに基づく平民の搾取を強めた。

 ブルムバッハは人類へのテロ行為や地下社会での恐怖政治によって支配力を増して、『ナチュレ』貴族主義を完成させた。

 1816年、ブルムバッハは愛人ドミニクに殺害され、死去。

 この時、フランス・英国・米国の『ナチュレ』平民コミュニティでは独立の機運が高まり、貴族コミュニティからの離脱が加速した。

 後に平民のコミュニティ郡は『自由経済同盟』を発足させ、人類社会・自由市場経済統合を目指す革新勢力と『貴族主義型管理経済』を維持する『貴族連合』との対立に至る。

 『自由経済同盟』

 かつて、『ナチュレ』地下経済廃止と地上経済・地上社会への統合を目指した自由主義者の思想を受け継ぐべく立ち上がった新興のレジスタンス組織で、より開かれた自由なコミュニティを作ることを目的に200以上のコミュニティが最盛期に加盟していた。

 その中でも最大のコミュニティである米国・テキサス州『ローゼンブルグ』は300万人の自由主義者や亡命者、元魔法少女、元貴族などが自由を求めて身を寄せていた。

 『貴族連合』は人類との関係を断絶し、交易さえも固く禁じられたが、『自由経済同盟』は文字通り自由経済思想の理念に則った国家運営が施され、議会制民主主義の導入とアダム・スミスの自由放任主義レッセフェール思想をスタンダードにした自由市場経済が導入され、人類との交易も部分的ではあるが認められているのが特徴。

 1817年から18年にかけて、地方コミュニティを巡ってフランス・英国・米国の一部地方で『ナチュレ自由紛争』が勃発、『貴族連合』と『自由経済同盟』の初めての軍事衝突となる。

 最終的にこの紛争の結果は『貴族連合』の勝利で終結、『自由経済同盟』はこれ以降は表立った戦闘を回避し、ゲリラ戦を余儀なくされた。

 この時、『貴族連合』は人類への交易に対して武力攻撃を実施して徹底した物流の破壊・強奪を実施したことや軍事・軍人・魔法使いへの積極的な待遇改善を実施したこと、人類側が報復を恐れて『自由経済同盟』への表立った援助を取りやめ、続けても縮小を余儀なくされるなど、容赦のない『貴族連合』の報復が勝利をもぎ取る要因になった。

 さらに『貴族連合』は圧倒的な軍事力に物を言わせ、地方コミュニティの軍事侵攻を強め、勝利を収める。

 これは『自由経済同盟』にとって、枝を切られるに等しい策略で、多くの地方コミュニティが『貴族連合』に接収されるまたは、降伏を余儀なくされた。

 『ナチュレ自由紛争』の大敗によって、『自由経済同盟』と『貴族連合』のにらみ合いは長期間に渡って続いた。

 1849年、『ナチュレ』の長がグレゴール体制に移行、グレゴールは英国の『自由経済同盟』主要コミュニティを早期に掌握、フランスでは地方拠点の半数を掌握し、フランス国内の主要な平民コミュニティは孤立を余儀なくされた。

 一方、『貴族連合』辺境軍と『自由経済同盟』がひしめき合う米国では、長期に渡ってにらみ合いが続いた。

 1861年、『ナチュレ』の長がキュンメル公爵就任によりキュンメル体制へ移行、キュンメル公爵はこの時積極的に最新の蒸気機関兵器を積極投入した。

 『自走蒸気機関』

 ブルムバッハ体制でも開発が進められ、ほそぼそと運用されていた車両兵器だったが、フランスの『ナチュレ』主要コミュニティ攻略の際、積極的に運用し、『自由経済同盟』を苦しめた。

 1886年、フランスの『自由経済同盟』主要コミュニティが陥落し、貴族支配はより強力なものへとなっていった。

 1880年代になると米国の『自由経済同盟』コミュニティ200のうち7割が『自由経済同盟』から離脱するか『貴族連合』の傀儡コミュニティに下る形で縮小し、『ローゼンブルグ』も腐敗・賄賂・格差の拡大による不満からレジスタンスの離反が加速する。

 1889年、『貴族連合』はオートモービルに加え、『機械人形マシンドール』を本格導入、この時『ナチュレ』最高傑作と言える竜型機械人形『プロトワイバーン』を積極的に導入し、『ローゼンブルグ』攻略に投入される。

 その後、『貴族連合』の大規模反抗作戦と『ローゼンブルグ』に潜入した『貴族連合』諜報員が内乱の誘発に成功し、『自由経済同盟』は戦闘継続を断念し、『貴族連合』に無条件降伏を余儀なくされた。

 『ナチュレ』の自由は貴族の覇道の前に終焉を迎える結果になった。

 『自由経済同盟』敗北には諸説あるが、『貴族連合』の徹底した交易破壊が痛手になったこと、『ナチュレ自由紛争』以降に『ローゼンブルグ』などの主要コミュニティが地方拠点の防衛に消極的になってしまったこと、当時の『自由経済同盟』が財政規律にこだわるあまり、武器の刷新などに必要な予算計画を建てられなかったことなど多岐に渡る。

 貴族で詩人のアルフは「自由主義者の自由主義型の経済運営は独創的であったが、後年に議会が揚げ足取りの衆愚政治に偏り、本来市場の恩恵を受けるべき平民の中で格差が拡大し、格差を修正できなかったことが敗因だ」と書物に記録している。

 『ナチュレ』の自由の戦いは、決して公式には明らかにはならない戦いだった。

 しかし主に仕える『貴族連合』、自由を求める『自由経済同盟』、それぞれがそれぞれの大義のために銃を手にした時代であった。

 この後、『ナチュレ』は再び貴族支配体制に移行し、野心は人類侵攻へ向けられることになる。


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