第一章 迷い込んだ洗礼 第四話
女性騎士が入った後、門は閉じられておらず、俺は門の中へ走り込んた。
街の中の大通りらしき所を走る。
門の内にも兵士が一人いたが、俺のことを怪しく見るだけで追っては来ない。
街の建物や通り行く人を見てる余裕はなく、大通りを曲がり、その後何度か曲がって小さな路地に入り物陰に身を隠した。
荒い息を整えるのを苦労しつつ、額の汗を制服の袖で拭う。
これからどうするか……。
故意ではないとは言え、あの門番に怪我を負わせてしまった。
――これで牢屋入りは確定だな……
捕まる危険性が高くなるのに街に入ったのは、少しでも情報が欲しかったからだ。
走ってる時にも街の人が見えたが、やはり近代の物とは違う昔の中世風の服装だった。
やはり俺は違う世界に来たんだ……
ここは異世界――
異世界だとすれば今までのことの全てに説明がつく。
「フッ……フフフッ」
漫画ではよくあるが、まさか自分が異世界に来たと思うと、つい笑ってしまった。
死んでなんかいなかった……
言葉なんてものは、頭の中で勝手に変換されて通じるものだと思ってた。能力で勝手に話せるようになれるものだと思ってた。物語の主人公なら獣に襲われた時だって能力発動してたはずだ。
あまいな、これが現実だ……
異世界に来ても現実だ……
これは現実なんだ――
だったら今の状況にしっかり目を向けないと
他の力に頼らず自分でなんとかしないと
やっと冷静さを取り戻し、今までのことを思い出す。
言葉が通じないからと言って何も通じないわけじゃない。実際、獣に襲われていた俺を助けてくれたあの女性騎士の行動には善意があった……。
門番の兵士にしてもそうだ。確かに縛られそうになったが、そこに敵意や悪意は感じなかった……。
「よし、決めた!」
謝ろう――
どんな理由があろうと、人を傷つけたことに変わりはない。俺が今すべきことは謝ることだ。
その結果、この世界の法律でどのように裁かれても構わない――。
路地から出て戻ることにした。
門に通じる大通りに出ると、前方に見たことがない三人の兵士が俺の姿を確認すると、この服装が目立つせいか足早に向かって来た。
三人の兵士は剣と盾を構え警戒しつつ、俺を囲む。
俺は両手を上げ抵抗の意志がないことを示す。
すると後ろにいた兵士が俺の両手を後ろに持ち上げ、地面に倒した。
横にいた兵士がロープで俺の両手を巻きつける。
「ぐっっっ……」
これじゃあ、謝ることさえ出来ない。
捕まる前にせめて謝りたかった……。
「せめて……あの兵士に……会わせてくれ……」
言葉が通じないことはわかっていたが言わずにはいられなかった……。
地面にうつぶせで倒れている上から言葉が聞こえた。
「ふむ、その言葉、その服装はどうやらあちらの世界から来た人のようだね……」




