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第二章 波乱のギルド研修                第六話

「と、当然です。命の危険を伴う冒険者という職業は、訓練を重ねて入る人がほとんどです。その過程で能力無き者は諦めていきます」


 珍しくメノから話し出した。

 彼女をよく見ると手足が震えている。毅然(きぜん)と振る舞ってはいるが、実戦は初めてなのか、話すことで気を紛らわせたいように感じた。

 

 メノの言う通り昨日今日冒険者を目指したわけじゃない。小さい頃から鍛えたり、技を磨いたりして身体能力に自信のあるものが冒険者という職業を選ぶ。言わばアスリートのプロ集団である。

 魔物が存在する世界で弱い者、自信のない者が冒険者を目指すなんてほとんどいないわけか。

 俺自身も冒険者を選んだ理由の一つに身体能力に多少は自信があったからだ。

 

 ……つくづく動機が甘いな。


「魔法職の人も近接戦に自信がある、もしくは何らかの対策はしてるってことか……」


 話しかけたというより自分に呟いた。

 メノは俺を少し見た後で言葉を返した。


「ええ、その通りです。私もあなたも冒険者というには準備不足ということです…………でも、それでも私は強くならなければならない」


 最後の方は声が小さくて聞きとれなかったが、彼女には何か冒険者になりたい強い理由があるのだろう。


「よし、片付いたな。これで研修は十分だろう」


 残りのゴブリンを倒して戻ってきたレオネスがみんなに言った。

 

 どうやら何事なく終わった。ゴブリンは人型であり、あのブラックウルフ(のちに知った二本角の獣)よりも知能が高いだけに正直恐ろしかった。でもそのゴブリンを余裕で倒したレオネスさん達はさすがはベテランパーティだけある。これで無事研修は終了だ。


 帰ってきたボットが何やら深刻な顔をしている。


「……気配する」


 ボットの言葉にレオネスが気づいた。


「まだいやがったのか!」


 俺達の前方と後方にゴブリンがゾロゾロと出てくる。全部で15匹ぐらい。


「こんな数報告にはなかったわ」


「まさか、最近噂になってる魔物の凶暴化や活発化しているというあれですか」


「みんな、慌てるな!!数が多いとは言え、所詮ゴブリンだ。冷静になれば対処出来る」


 レオネス達の会話から、これは彼らにとっても想定外のことであることが理解出来た。


「あなたたちは絶対に私たちの間にいるのよ。でも戦う覚悟はしといて。これはもう研修ではないから」


「……はい」

 

「…………」


 俺はなんとか返事を絞り出したがメノは……。


「行くぞ!」


 レオネスの号令とともに、先程の布陣とは違い、前衛にレオネスでミランダ。後衛にボットとゲイルに変わる。

 前衛も後衛も八名ぐらいのゴブリンが立ち塞がっている。

 でもさすがはレオネスたちだ。レオネスが斬り込み、ミランダが後方から魔法を放つ。後衛も同じくゲイルの風魔法の刃でボットを支援する見事な連携だ。

 少しずつゴブリンを片付けて行くが、ただ数が多い……。


「あっ、一匹入れてしまったわ!」


 ミランダが叫んだのは、前衛の攻撃をかいくぐり一匹のゴブリンが俺達の方へ襲いかかってきたのだ!


 俺は剣を構えた。

 メノもレイピアを装備して構えるが明らかに手が震えている。


「二ギィィィィィーー!」


 走って来たゴブリンはジャンプしてメノに棍棒を打ち下ろしてきたーー。

 

 ビィィィン!という音が――


「きゃっ!」


 振り下ろされた棍棒を、メノはとっさにレイピアで受け止めた。だが、細身の刃に伝わる衝撃は重い。ゴブリンに押し負けた彼女の体は無様に後ろへと崩れた。背中が地面に叩きつけられる衝撃と同時に、深く被っていたフードが跳ね上がり、髪が解き放たれる。握っていたレイピアも手を離れ、乾いた音を立てて地面に転がった。


「うっ……うっ……」


「ヒヒィー」


 メノの怯えた声がゴブリンの感情を刺激し、気持ち悪い愉悦の笑みと声を発して二撃目を叩き込もうとした。


「はぁっ!」


 低い金属音を鳴らして俺はメノの前に立ちゴブリンの攻撃を剣で防いだ。


 俺も震えている……

 ゴブリンはめちゃくちゃ怖い……

 

 恐ろしい……


 だけど……体は何とか動く

 

 ブラックウルフに殺されかけた経験が活きた

 あそこで立ち向かった経験が……

 

 しかし、メノは倒れたままだ。意識はあるが怯えて動けない。

 俺がゴブリンを倒さないと……

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