第二章 波乱のギルド研修 第四話
翌朝、指定された時間より少し早めにギルド前に来ると、俺より先に誰か来ている人がいる。
「あの子は昨日の……」
集合場所には昨日ギルドの二階の部屋で見たフード付きローブを着た女の子がいる。相変わらずフードは深く被っていた。
ここに居るってことはあの子も研修かな……。
確か魔力がS寄りのAランクだったな。一方俺はゼロ寄りのEランク……。比べるまでもない向こうはスーパールーキーってやつだ。
集合時間になると4人組の冒険者がやって来た。
「よ〜し、二人共来ているな」
4人の中のリーダーらしき男が俺達に声をかけてきた。男は髪をオールバックにして、口のまわりにひげを生やし最低限の装備をした剣士風の冒険者。
「今日の研修は俺たちのパーティに同行してもらう。俺はリーダーのレオネスだ。よろしくな」
雑な話し方だが、さすがはリーダーだけあって強そうな男だ。
今度は横に並んでいる三人を紹介しだした。
「こっちから魔術師のミランダ、次は僧侶のゲイル、最後がボットだ」
「ホント、いつも紹介が雑ね」
ムッとしているのはミランダでトンガリ帽子を被りローブを着た長髪の女性。
「仕方ありませんよ、それが彼の良くも悪くも長所ですから、ねぇ、ボット?」
そう言ったのは真面目そうな人で頭頂部が平らになった帽子と法衣を纏っている、確かゲイルと言っていたな。
同意を求められたボットは太ってはいるが分厚い兜と鎧を装備し背中に斧を背負っている。普段、無口なのか言葉少なく答える。
「いい所、ない」
4人全員30代くらいに見える。ベテランだけあってみんな場馴れしてる感じが見える。
だがゲーム好きの俺がニヤつきそうになったのは、レオネスを勇者とするならば、戦士に僧侶、魔法使いといったまさに基本パーティであることだ。しかも服装もそのまんまである。
「そっちは?」
レオネスが俺たちに振る。
「俺はイロハ、よろしくお願いします」
冒険者ネームはイロハにすることにした。名字で呼ばれるより名前で呼んで欲しいから。
「私はメノです」
俺に続いて必要最低限の言葉でフードの女の子が返す。
「イロハにメノよろしくね。一応私たちはこのギルドじゃ一番長くやってるパーティだから今日の研修は安心してね」
ミランダが一歩前に進み代表するように言う。
その後にレオネス続いた。
「じゃあ、そろそろ出発するぞ。今日の研修はゴブリン討伐だ!」
俺は少し動揺した。研修なんてものは薬草採取のような簡単な任務だと決めつけていた。
まさか討伐任務とは……。
ベテランチームと一緒だから大丈夫だとは思うけど。
俺たち六人は、ゴブリンが出没したという岩山の麓にある岩石地帯を目指していた。
平原の中腹ぐらいに来たところでレオネスがみんなに言う。
「もう少し行くと目的地の岩石地帯に出る。ここでひとまず休憩にするぞ」
その場所は冒険者がよく使うのか、丸太が横になったり、たき火の跡がある。
そこで俺達はそれぞれ水を飲んだり、食べ物を口にしたり休憩した。
芝生に腰を降ろしている俺とメノの間にミランダがやって来た。そしてメノに話しかける。
「あなたSランクに近い魔力を持ってるんだってね。昨日ギルドで噂になってたわよ」
「……でもAランクです。別にたいしたものではありません」
「Aランクでも凄いことよ、私なんてCランクよ。羨ましいわ」
横で聞いてる俺はEランク。Cランクでも羨ましい……。
「火と風属性だって聞いたけど、どんな魔法が使えるの?」
ミランダの問いにメノは下をうつむいてから呟やいた。
「……使えません」
「えっ?使えないって……どういうこと?」
「魔法の出し方を知りません……」
ミランダも俺も驚く。Sランク級だから当然使えるものだと思っていた。昨日の検査もランクが知らないだけで魔法熟練者だと思っていた。
「……そう、ごめんね。私が勝手に期待しちゃって……でもこれから覚えれば一流の魔法使いになれるわ」
ミランダは優しく慰める。
「あの、俺も教えて欲しいんですが、どうすれば魔法を出せるんですか?」
これは俺も知りたいことなので、聞くには絶好のタイミングだと思い割り込んだ。
するとミランダは俺の顔を見て。
「う〜ん、そうねぇ。魔法は理論や理屈よりも感性が一番重要なの。自分の中に宿る魔素を感じて、体外に魔素を流すイメージね」
「魔素?」
「魔力は質や量といった総合的な意味で、魔素はもっと根源的な部分ね。その魔素を使って火属性なら火のイメージをより強く描き具現化する」
要するに具体的なイメージを持つことか。
ミランダの言葉を聞いてメノがすぐさま手袋をつけた右手を前に出し、集中する。
しかし、一分ぐらい経つと右手を降ろした。
「ハァッハァッ」
たぶん魔法を出そうとして失敗したようだ。
「大丈夫よ、どんな魔法使いでも魔法の発現には時間がかかることなの」
ミランダがまたもメノを慰める。
俺も試したくなり同じように右手を前に出し、人差し指だけ立て、集中する。
俺の行動を見てミランダが何かを言いかけようとした時――。
「ボッ!」
なんと俺の指先からマッチ棒を使う時ぐらいの火が現れたのだ――。




