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第二章 波乱のギルド研修                第三話

 眼鏡の係員が分厚い本を開いて水晶玉と本を何度も見比べて言う。


「あ〜、惜しい。Sランクと言いたいのですが、火属性と風属性のAランクですね。でもSランクの人なんてほとんどいませんから大変すごいことです…………んっ?」


 限りなくSに近いAランクってことか。

 係員がやっと俺に気づいた。


「あの〜、あなたは?」


「俺も判定を受けに来ました」


「あなたもですか!?」


 カウンターのお姉さんと同じ反応をされた。やはりこの世界では俺らの年齢で判定を受けていないのは珍しいらしい。


「私はもう行きます」


 そう言い残してフードの女性は俺に見向きもせずに部屋を出ていった。



 水晶玉に染まった色が消えるまで待つこと五分、係員が確認する。


「完全に消えましたね。それではあなたの番です。水晶玉に両手を触れて下さい」


「よ〜し」

 

 バシッバシッ!


 両手で両頬を叩き気合いをいれる。

 魔法が無くても冒険者にはなれるらしいが、俺にとっては、魔法を使えるかどうか決まる大事な瞬間だ。可能性が低いと聞かされても、どうしても期待してしまう。

 深呼吸してから水晶玉の前に進み、両手で触る……


「ぐぐぐぐぐっ!」


 歯を食いしばり力を込める。

 

「ぐゔゔゔゔゔゔっ!」


「……あの〜、頑張ってる所、非常に言いにくいんですが、そんなに力を入れなくても大丈夫ですよ」


「……ゔっ?」


「水晶に触れるだけで、手のひらから少し魔力を吸い取るだけですから……」


 眼鏡の係員に俺の無駄な頑張りをあっさり否定された。


「ふぅ〜、やっぱり変わらないか……」


 水晶玉は薄っすらと赤くなったように見えたが、力を入れて身体が熱くなったせいか、はたまた願望がそう見せたのか、水晶は透明のままである。


「んーー!?」


 眼鏡の係員が何かに気づき声を出した。

 水晶玉に顔を近づけ、じっと中を覗き込む。


「これは……ものすご〜く薄くではありますが赤くなってますね」


「…………えっ?」


「火属性のEランクですね……」


「Eランク?……Eランクってことは……俺、魔法を使えるの?」

 

 半分諦めていたので焦って確認する。


「はい、一応……」


 その言葉を聞いて、気がつけば両手を大きく振り上げていた。


「や……やったーーー!!」 

 

 魔法を使えると思うと嬉しくてたまらない。


「……良かったですね……最低ランクの判定でそこまで喜んだ人、私初めて見ました」


 誉められたのか、けなされたのか、わからないが今は嬉しいから深く考えないでおくことにした。



 しばらく余韻に浸ってから、一階のカウンターに戻った。

 冒険者登録用紙に火属性とEランクを書き込み、受付のお姉さんに渡す。


「はい、これで登録の手続きは終わりです」


 これでようやく冒険者ってわけか……


「それでは最後に研修を受けてもらいます」


「えっ……研修?」


「はい、ベテラン冒険者のパーティに加わり、一日任務に同行してもらいます。同行と言っても見学してもらうだけなので試験とかではありません」


「はぁ……」


「丁度、明日研修の予定が入ってますが、どうなされますか?」


「じゃあ、お願いします」


「了解しました。それでは明日の朝十時にギルド前に集まって下さい」


 頷いてからギルドを後にした。


――――――――――――――――――――――――――――


「いろは君、それは本当かね?」


 家に帰宅してから近藤先生に今日のことを話すと驚いていた。


「最低ランクですが、魔力は少しあるみたいです」


「……これは驚いたな。我々異界人は魔力はないものだと勝手に決め込んでいた。異界人の中では君が初めてなのでね」

 

「俺もびっくりです。元の世界では魔法なんて使えなかったのに……」


「ふむ……私達元の世界とこちらでは、そもそも世界の仕組み自体が違うのかもね……まったく君という男は実に興味深いよ」


 先生は研究者魂に火がついたのか目を輝かせていた。


「でも魔力があっても、どうやって魔法を使うのかわからないんです……」


「それなら明日、研修に行くのなら先輩方に聞いてみたらどうだい?」


「あっ、確かに……そうですね」


 言われてみれば明日の研修はベテラン冒険者に色々聞けるいい機会だ。見学だと言われ受け身になっていたが、冒険に役立つことを吸収するチャンスでもある。

 特に俺は知らないことが多すぎるのだから……。

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