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第3話 パートナー結成

プロローグ的な話がやっと終わりました。

殺されかけた深雪の前に現れたのは、一人の男であった。

「あ、あなたは!?」

深雪は、一瞬困惑した表情を見せる。

しかし、彼女は急いで記憶の片隅から男の顔を引っ張りだす。

彼女自身、彼に会ったことがある気がすると思ったからである。

「え、えと……」

深雪が男に話しかける。

「話はあとだ」

男は、目の前の魔獣を見つめる。

しかし、深雪はすぐにハッとする。

「あ、あの魔獣はとても危険よ! 戦っちゃダメですよ!」

「……よく見ておくんだ」

しかし、男は深雪の言葉を無視して、何かをポケットから取り出した。

「そ、それは……」

深雪は、男が取り出した銃を見つめる。

その銃は明らかに普通ではない。

「魔力が……」

「これは魔力を弾丸として撃つ銃。マジックスナイパーだ」

そんなとき、魔獣が男に突撃をしかけてきた。

どうやら、魔獣も突然の乱入者の出現に混乱していたようで、反応が遅れていた。

「ほらよ!!」

男が銃を撃つ。

パンパン、という大きな音に、深雪は耳をふさいだ。

「よく魔獣を見てみろ」

「え?」

しかし、男に片手を掴まれ、深雪は片耳だけしか塞げなかった。

深雪は仕方なく、男の言われたとおり前を見る。

「何かおかしいところがないか?」

深雪はじっくりと、魔力の銃弾を浴びせられている魔獣を見る。

それを見て、深雪がハッとする。

「気がついたようだな」

「全然効いてない……」

「え!? い、いや確かにそうなんだが……」

男は、予想していなかった回答に少したじろいだ。

「正確には効いていないんじゃない。あいつの体の周りを見てみろ」

「体の周り……?」

深雪は魔銃を注意深く観察した。

すると、面白いことが分かった。

「銃弾が効いていないんじゃない……届いていない!!」

「そうだ」

魔獣は、銃弾が当たる前に、その部分に魔力で作った鱗が露わになるのだ。

そして、銃弾が当たるのは鱗であるので、魔獣にダメージはないのだ。

「でもどうして……」

「簡単さ」

男は銃撃を止め、銃をポケットにしまう。

「あいつは魔力に反応してうろこを作っているんだ。つまり、魔法ではあいつを倒せない」

それを言い終わると同時に、男はその場から消えた。

いや、消えたのではない。

凄いスピードで魔獣に向かっていったのだ。

「おらよ!!」

そして、勢いのまま、魔獣に拳を浴びせた。

すると魔獣は、うめき声を上げながら後方へと飛んでいった。

「こう言う敵には、魔法なんか使わなくていい。もっとも、身体を鍛えていること前提だがな」

魔獣は後方の木に当たり、気絶した。

男は、息一つ乱さずに深雪に近づいた。

「ほら」

男が深雪に手を差し出した。

「え!?」

深雪は、ついドキッとしてしまう。

何故だか、妙に胸が高鳴ったのだ。

「(な、何これ……この人の顔をまともに見れないよ……何だか恥ずかしいよ……)」

深雪は、顔を赤くしながら俯いた。

まあそれは所謂……なのだが、彼女はそれに気が付いていない。

「どうした?」

「あ、ありがとうございます……」

深雪は、最後の方は尻すぼみになりながら、恐る恐る男の手を取る。

「よっと」

男は彼女の手を引っ張って、立ちあがらせた。

そこまでは良かったのだ、そこまでは。

「小さいな……」

男がぼそっとそう呟いたのを、深雪は聞き逃さなかった。

これが、悪夢の始まりでもある。

「小さい……? それは一体何のことですか?」

深雪は、ニッコリと笑って相手の返答を待った。

当然、彼女の両こぶしは握られていた。

「ああいやその手も小さいな、と」

「手“も”?」

「あ、いや、その……」

男は急にしどろもどろになる。

彼女の微笑みに込められた意味を汲み取ったようだ。

「バカァ!!」

「ぐおっ!!」

男は、深雪に思いっきり殴られた。

そして、彼女にまだこんな体力が残っていたことに驚いていた。

「変態! 男ってやっぱり胸が全てなのね! 最低!」

「あ、いや……」

「ちょ、ちょっとはカッコイイと思ってたのに……」

「え?」

「何でもない! もう知らない!」

深雪は男を置いて歩き出した。

かなりお冠のようだ。

男は、深雪に殴られた方の頬をさすりながら、チラリと横を見る。

「おい待て。後片付けしてくれよ?」

「分かってるわよ!! というかアンタ部外者じゃない!!」

「そういえば」

男は、今気がついたかのようにポンと手を叩いた。

「学校の奴にばれる前にずらかるとするか」

男はそういうと、一瞬で木の上に登った。

「って待ちなさい!!」

「またすぐに会えるさ」

男はそのまま消えた。

消えたというか、一瞬で移動しただけだろうが。

「くっ……」

「誰かいるの!?」

そんなとき、深雪の後ろから声が聞こえた。

教師や生徒会が、この騒ぎに気がついたようだ。

結界が壊されれば、それは大問題だ。

「あ」

深雪は一つ思い出した。

「(結界壊した犯人って誰だろう?)」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ただいま~」

私は家に帰ってくるなり、速攻で自室に向かい、休もうとする。

あの後、大変だったのだ。

教師や生徒会に事情聴取をされ、心もクタクタにされた。

ただでさえ魔力切れを起こしているので、勘弁して欲しかった。

『結界を壊す人間? 森全部を覆っている結界でしょ?』

『そんな人間が学校にいるかもしれないって?』

教師たちが私の言葉に困惑する。

『この学校で一番魔力があるのは、学院長先生だし、先生なら普通に解除するはずです』

『そうですよね~。そもそも、おとといから学院長は出張ですし』

教師たちは心当たりがないようだった。

結界を壊せる人間……まさか、ね。

私は一人の男の顔を思い浮かべるが、すぐにその考えを消す。

もしそうなら、そいつが学院長を超える魔力の持ち主になってしまう。

さすがにそれはないだろう。

『とりあえず、このことは他言無用ですよ?』

最後に、生徒会副会長の梅花園先輩にそうくぎを刺されて、解放させられた。

彼女はすでに教師たちと専門的な話をし始めた。

本当に優秀な先輩だ。

そんなことがあり、私はもう動きたくないのだ。

そもそも、この家に帰ることで精いっぱいだった。

「みゆみゆ~」

「姉さん?」

そんなぐったりした私の部屋に姉さんが無断で入って来た。

この姉は絶対にノックをしない。

「姉さん、人の部屋に入るときは、ちゃんとノックしなきゃダメでしょ」

「何言ってるの? 私とみゆみゆの仲じゃない」

この姉は、とてもずぼらな人だ。

そして軽い。

でも、魔法使いとしてとても優秀なのだ。

「親しき仲にも礼儀ありって言うでしょう?」

「あーそんなことより」

姉さんは話を逸らした。

都合が悪くなるとこうなる。

「お父様がお呼びよ」

「パ……お父さんが?」

私が呼び出しを受けるなんて珍しい。

大抵は、姉を呼び出して仕事の話をしたりする。

まさか今日の結界のことだったり……

「私、魔力切れ起こしてるからチャージしないといけないのに……」

チャージの一番の方法は寝ることである。

体力を消費して、そこら中のマナをかき集めることもできるが、前述の通り、私は疲れている。

つまり、何を言いたいのかと言うと、私は寝たい。

「何か緊急の用事らしいから、とりあえず言っといた方がいいんじゃない? 代わりに私が寝るわ」

「それじゃ意味ないじゃない!」

私は、溜息を吐きながら部屋を出た。

出来れば、手早くすませてほしいものだ。

私は、気が乗らないまま、お父さんの部屋に入った。

「失礼します」

「疲れているところ悪いな」

お父さんが私を見ながら、ソファーに腰を掛けていた。

「いえ、何の用ですか?」

私は、父の向かいに座る。

そういえば、こうして父と話すのは久しぶりかもしれない。

「うむ、お前にも話しておかねばいけないと思ってな」

「はい? 何の話ですか?」

何だかとても嫌な予感がするのだが、無視することにする。

「実は、お前にボディーガード兼戦闘訓練の家庭教師を付けることにした」

「はい!?」

私は素っ頓狂な声を上げる。

何が何だか訳が分からなくなったのだ。

「安心しなさい。君も会った人だ。腕はもちろんいい」

「え? え?」

「では在原殿、入って来てください」

私が混乱している間に、執事に言われて一人の男が部屋に入室した。

「あ、あ、あ、アンタ~~~~~~~~!!」

「ほう、自己紹介はもう済んでいたかな?」

その男は、先ほど森で出会った変な男だった。

この男のことを隠すために、今日は大変だったのだ。

……あれ?

隠す必要あったのかな?

「先ほど、森で会いました」

「会ったって……こんなところまで来て何の用よ!!」

飄々と回答する男を、私は睨みつける。

「何の用って……さっき言った通り」

「さっき……? ってまさかアンタがボディガード兼何ちゃらかんちゃら!?」

「ま、そういうことだ」

男は相変わらず飄々と答える。

「嫌です! 絶対に嫌!! 何で急にそんなものを私に付けるのか、意味分からないし! それに、こんな男は絶対に嫌!!」

私は噛みつくだけ噛みついてみる。

無駄な抵抗だと知りつつも。

「在原君と何かあったのかね?」

父が、私の異常な態度を不審に思う。

「こ、こいつ……私の身体的特徴を……バ、バカにして……!!」

「身体的特徴?」

私のセリフに父は訊き返す。

だがしかし。

「まあそんなものはどうでもよい」

「流しちゃうんですか!?」

父は、私の発言をスルーする。

言っておくが、シャレではない。

「とにかく! これは決定事項だ! 問題解決は、当人同士でやりなさい」

父はそう言って部屋から出ようとする。

「ま、待って下さい! お父様! まだ話は!」

「私は少し横になる。あー眠い眠い」

「全然眠そうじゃない……」

あくびする真似をして父は本当に部屋から出る。

そして、執事もいなくなり、部屋には二人だけになる。

私は攻撃の矛先を変えることにする。

「アンタ、どういうつもりよ?」

「どういうつもりも、俺は仕事を貰ったからやるだけだ」

「じゃあ言うわ。父の手前、言えなかったけど。アンタ、仕事するふりだけしてなさい」

私は男に言いきった。

「あなたも生活かかってるなら、お金は出すわ。でも、私のボディーガードとかしなくていいわ!」

私は部屋から出ようとする。

「うーん……ま、お金貰えるならそれでもいいかな?」

……こいつ、根は最低の男だ。

私は心の中で毒づく。

「あ、そう。じゃあ……」

「でもな」

しかし、男は突然私を真剣な目で見つめる。

「一度引き受けたんだ。仕事に手なんか抜けるかよ。随分俺も見くびられたものだな」

男は私を軽く睨む。

それに少し罪悪感を感じてしまった。

つい言ったセリフは、男をバカにするにふさわしい言葉だった。

「あ、えーと……」

その迫力に私は少し気押されてしまう。

「ま、最初が最初だけにしょうがないな」

だが男はすぐにヤレヤレと肩をすくめる。

しかし、その態度は癇に障った。

「やっぱりアンタ……むかつくわ」

「おっと自己紹介して無かったな」

「アンタもスルー!?」

男には私の発言は通用しなかった。

というか、全然手ごたえが無い水を相手にしているようだった。

「俺の名前は在原晴樹。特活傭兵部隊SAMO所属だ」

「ええ!? アンタ、SAMOなの!?」

SAMOと言えば、腕利きの者しかいない凄い組織である。

しかし、元々どこにも所属していない独立組織なので、邪魔だと思っている人間も多い。

それでもSAMOというのはいろんなところに雇われ、仕事を最後まできちんとこなす人たちの集まりだ。

私にとっては憧れの対象でもあった。

「最悪よ……SAMOのイメージが壊れた……」

「失礼な奴だな」

私が頭を抱えると、男は少しだけ私を睨む。

「で、お嬢さんの名前は?」

「え?」

「自己紹介を互いにするのは、当然のことだよな?」

「あー私は桜花園深雪。よろしくって言わないけど」

「随分と投げやりな自己紹介だな……」

ほっときなさい。

何で私がこの男を先生として、鍛錬しなきゃいけないのよ!?

あ、でもこの男ってSAMOだから腕はかなり立つんじゃ……い、いや!

こんな仕事を引き受けるような奴だ。

SAMOの中で落ちこぼれに決まってるわ!

私はそう決めつけると席を立つ。

「しょうがないな……本当は黙っておくべきなんだけどな……」

「は?」

しかし、その男の意味深なセリフに私は振り返る。

「一ヶ月後の、四大貴族の対抗戦って知ってるよな?」

「当然でしょ。桜花園、梅花園、桃花園、春花園の四家の代表が戦う、伝統的なイベントよ」

男は軽くうなづいて言葉を続ける。

「お前を桜花園の代表にしたいんだとさ、お前の親父さんは」

「はぁ!?」

私はその言葉に、驚いたでは済まない反応をした。

何せ、言っていることを最初、理解できなかった。

「どういうことよ!!」

私は男に詰め寄る。

「さあな。俺は依頼主からお前を鍛えてくれ、って言われただけだ」

男は平然と言い放った。

「ど、どうしよう……私、そんなの全然自信ないし……」

「そのための俺だよ。契約期間は1カ月。1ヶ月後はおさらばだ、文句ないだろう?」

「う……」

迷う。

1ヶ月後に醜態をさらすよりは、この男に鍛えられた方がいい気がする……

それに、それっきりもう会うこともないならば、1か月なんて……

「分かったわ。けれど忘れないでよ!? 仕方なくよ、仕方なく!!」

「分かったよ。んじゃまぁ、これから1か月はよろしく頼むわ」

こうして、私とこの男、在原晴樹の奇妙な関係がスタートした。

このときはまだ、まさかあんなことになろうとは予想していなかったのだ。





結構長い…


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